4月14日、三國連太郎さんが亡くなられた。享年90歳…。天寿を全うされ、悔いなく旅立たれたのだろう、と思う。

1989年11月、私は、三國連太郎さん主演の『ドレッサー』を観劇した。サーの称号を持つほどの大物舞台俳優が、老齢のためか、台詞覚えもアヤシクなり、 奇声を挙げて徘徊したりする中、舞台に立つことになる。妻や舞台監督は舞台中止を進言するが、老優の付き人(ドレッサー)だけは、老優が舞台を務め上げることを信じて、あれこれ世話を焼く。

劇中劇「リア王」の扮装をした三國さん。
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私が観た舞台は、付き人ノーマンが柄本明さん、座長(老優)の妻が三田和代さんというキャスト。前年1988年は、座長・三國さん、座長夫人・渡辺えりさん(当時はえり子さん)、ノーマン・加藤健一さんだった。

柄本さんは、まさに裏方のヒトの風情で、甲斐甲斐しく座長に尽くす姿が、板についていた。後年、三國さんの降板により、映画『カンゾー先生』の主演を務めたのは、不思議な御縁だなあと思う。

三國さんは、ウィキペディアを見ても、舞台の経歴が載っていないので、舞台の経験は ほとんど無いのだろうが、まあ とにかく、ものすごい存在感(威圧感?)・迫力、そして色気(ナンなんだ、あのフェロモンは…)。テレビや映画で拝見している時には意識しなかったが、180cmの長身は、生で拝むと、おお~と感動する。

舞台役者さん独特の、腹式呼吸ができた 滑舌のよい発声ではなくて、モショモショゴニョゴニョと台詞を言っているのに、ちゃんと聞き取れた…何でかなあ。ブツブツと文句を言ったり、叱られてシュンとしたり、いわゆる格好いい場面は あまり無いにも関わらず、観終わっての感想は、「三國さんステキだったな~カッコよかったな~」であったのは…スターたる所以か。

このブログ記事を書くにあたって、『ドレッサー』について検索していたら…。久世星佳さんが、平幹二朗さん(座長)&西村雅彦さん(ノーマン)の時には 舞台監督マッジ、渡辺哲さん(座長)&小宮孝泰さん(ノーマン)の時には 座長夫人コーディリアを演っているのね~。観ていなくて残念。

6月末から、三谷幸喜さん演出の『ドレッサー』が、座長・橋爪功さん、ノーマン・大泉洋さんで上演される。座長夫人は秋山菜津子さん、マッジは銀粉蝶さん。三谷さんは ずっと、この作品を演りたかったそうだ。初日前の囲み取材では、三國さんの話題も出るのだろうな。

『ドレッサー』の終幕。「リア王」の舞台を何とか終えた(平穏無事ではなく、ハプニングは色々ある)座長は、楽屋で、リア王の衣装を着たまま、椅子に座った状態で、眠るように息を引き取る。佐藤浩市さんは、父の死に顔は凛として威厳があった、と語っていらした。凛とした90歳…最後まで格好いい三國さんだったんだ…。合掌。




 
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