昨日は、小橋さんの引退記念興行。




あまりにも激動の一日だったので、何から書いていいか戸惑いますが…昨日の出来事を順に思い出して書き綴ろうと思います。






家での雑用を終えて、家を出発したのは午後1時。


30分後、日本武道館へ到着。


新日本選手控室に入り、荷物を整理してすぐ、小橋さんの控室へ向かう。


小橋さんは、専用の控室になっていた。


全日本時代にお世話になった木原リングアナに案内してもらい、中へ入る。


満面の笑顔で出迎えてくれた小橋さん。


「今日はよろしくお願い致します」と、ご挨拶する。


「こちらこそ、どうもありがとう!」と、立ち上がって握手して頂いた。


緊張してガチガチになる自分を、木原リングアナがからかう。


そんな木原さんに対し、笑顔で「お前、やめろよ(笑)!」と言う小橋さん。


そして、なんと、このコジログを見ていると言って頂いた。


「自分の事を書いてくれてありがとう!」と言われ、恥ずかしながら、舞い上がって訳が分からなくなってしまった。




そして控室を後にして、自分の試合の準備を始める。


すると、第二試合終了後に行われた引退セレモニーが、モニターに映し出されていた。


たくさんの著名人の方から花束を贈呈される小橋さんを、すべて見させて頂いた。


このシーンを見てるだけで、涙腺が崩壊しそうになる。


これだけ多くの著名な方が、小橋さんを敬愛しているという現実。


嫉妬するのも烏滸(おこ)がましい位の、小橋さんの知名度。


本当に偉大な方だったんだと、痛感する。




その時間帯に、花束を渡す為に待機していたテリー伊藤さんと、控室付近で偶然遭遇。


「小島と申します」とご挨拶すると、「知ってます(^-^)」と言って頂いた。




それから時間が流れ、自分の試合の出番に…。


《棚橋・永田・小島vs杉浦・ヨネ・彰俊》というカード。


出番を待っていると、野田前内閣総理大臣と遭遇。笑顔で握手して頂いた。よく考えたら、前とはいえ、内閣総理大臣とご挨拶ができるなんて、サラリーマン時代には想像もできなかった事だ(苦笑)。




杉浦選手やヨネ選手とは、1月のノア遠征等で何回も戦っているけど、彰俊さんと戦うのは初………じゃなくて、実は若手時代に何回も戦っていた。


ただ、もう十五年以上も前に遡るけど。


これだけ久しぶりだと、感覚としては初対決と同じ。


うっすらと当時の記憶があったけど、今ではお互いに、全く違うタイプのレスラーになったと思う。




それにしても、あれだけ超満員の日本武道館で試合したのは、いつ以来だろう。


あの独特の、地鳴りのような歓声が懐かしかった。




そして、ケガする事なく試合終了。


シャワーを浴び終えると、出番を控えた小橋さんと再び遭遇した。


「お先に試合、失礼しました。ありがとうございました」とご挨拶すると、また満面の笑顔で「どうもありがとう」と言ってくれた小橋さん。


これが、引退試合を直前に控えた人の顔なのか…驚くほど、穏やかで優しい顔をされていた。




急いで着替え、小橋さんの引退試合を観る準備をする。


せっかく同じ会場にいるんだから、モニターではなく、直接会場内に入り観させて頂く事にした。


立ったまま、タナや永田サンと観戦。


入場からしっかりと観る。




小橋さんの動き全てに、目が釘付けとなる。


逆水平チョップの威力は健在。


懐かしの、ローリングクレイドル。


多種多様の袈裟斬りチョップが炸裂する。


しかし中盤、相手チームに掴まり、やられ続ける小橋さん。


変な持論だけど、一流のレスラーって、やられる姿が絵になる…と思う。




そして出た、コーナーに詰めてのマシンガンチョップ。


現在自分が使わせて頂いてるマシンガンチョップは、間違いなく小橋さんからインスパイアされたモノ。


歯を食い縛りながらチョップを打つ姿に、胸が熱くなる。




ハーフネルソンスープレックスも出た!剛腕ラリアットも出た!もう、ただただ感動する。




そして、クライマックスがやってきた。


武藤さんのムーンサルトプレスの後、小橋さんが、ゆっくりとコーナーポストによじ上ったのだ。


自分は、信じられなかった。


というか、心の中で「それは止めた方がいい」と叫んでいた。


なぜなら、一年三ヶ月前のオールトゥギャザーでの試合を観ているから。


あの日放ったムーンサルトは相手に届かず、小橋さんは両ヒザから落ちて、骨折してしまっているのだ。


あの光景を観ていれば、「もう封印するべき」と誰もが思ったはず。




それでも、コーナーに上ってしまった小橋さん。


そして一気に飛んだ。


見事に成功。その瞬間、ファンの方々と同時に、自分も「ウオォーッ!」と叫んでしまった。




なぜ、あれだけのケガをした原因となったムーンサルトができたのか、というかトライしたのか…本当に信じられなかった。


でも小橋さんなら、あれで再び骨折したとしても、笑顔で「また頑張ろう」って言うのかなと思った。






そして、感動のままエンディングへ。


「テンカウントの際にはリングサイドに集合して下さい」と言われていたので、リングサイドへ向かう。


すると、たくさんのファンの方から「小島、来てくれてありがとう!」と言われた。


なんか、これが、小橋建太を愛するファンの温かさなのかな…と感動した。




矢島アナウンサーとの掛け合いを、リングサイドから聞く。


涙を堪えるのに必死だった。


特に声を張り上げる訳でもなく、優しく、穏やかに話す小橋さん。




そして鳴った、テンカウントゴング。


多くの紙テープと、試合前、自分に見せてくれた笑顔が戻る。


リングに選手が続々と上がり、小橋さんと握手を交わして、全員で記念撮影。






こうして、小橋さんの引退記念大会が幕を閉じた。




ここ数年、男子のレスラーで、ここまで盛大な引退試合をした人を見た事がない。


それは、もしかしたら“引退してもすぐに復帰する”という風習があったからなのかも。


自分だって正直、もし引退しても、「二度とプロレスはしません!」と宣言はできない。


それだけ、プロレスには魅力が詰まっているから。




でも小橋さんは、ちゃんと引退試合をする事を選んだ。


あの…一番“引退”という言葉が似合わない?小橋さんが、決断した。


もちろん、それだけ肉体的に限界がきていたのもあると思うけど、もしかしたら「全力で試合をし続ければ、これだけ盛大な引退式ができる」という見本を示して下さったのかもしれない。






プロレスキャリア二十五年で引退された小橋さん。


ただ、2006年に腎臓癌を患ってからは、ずっと満身創痍だったはず。


それでも、そこから七年間、自分たちプロレス関係者やプロレスファンに、諦めないことの大切さを教えて下さった。






そして、これまでほとんど接点がなかったはずの自分に、多大な影響を与えて下さった小橋さん。


三沢さんと一度だけ対戦できた事も奇跡なら、小橋さんの引退に立ち会えた事も奇跡だと思う。




そういう意味でも、改めて、自分は素晴らしいレスラー人生を送らせてもらえてるな…と感じた次第です。






なんか、とりとめのない文章になってしまいましたが…


プロレス界に多大なる影響を与えてくれた小橋さん。


本当に本当に、お疲れ様でした。


同じ時代にプロレスラーでいられた事、現役時代に少しだけでも関われた事を誇りに、自分も頑張ります。






ありがとうございました。




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