今回は武蔵国一宮である大宮氷川神社を紹介する。
私は旧武蔵国に住んでいるので、地元の一宮ということになる。とは言っても、電車を乗り継いで1時間半くらいはかかるので、格別に近いというわけではない。
大宮氷川神社に参拝に行く場合、最も普通の行き方は、文字通り「大宮」駅で下車して徒歩。約20分くらいで到着する。もちろん、「大宮」という駅名は当社に由来している。
本当の意味での最寄駅は東武野田線の北大宮駅。徒歩7分くらいだが、表参道を通らずに、西側の境内社の辺りから神社に入ることになるので、この沿線に住んでいる方以外にはあまり適さない行き方である。
そして、日本一長いと言われる氷川参道を全て歩くには、京浜東北線で大宮の一つ手前(東京寄り)のさいたま新都心駅で下車。北北西に徒歩5分ほどの所からほぼ真北に向かって氷川参道が伸びている。
今回はこの日本一長いと言われる氷川参道を全て歩いて当社の参拝をしてみたいと思う。
ここが氷川参道のスタート地点の社号標と一の鳥居。ここから拝殿まで約2.2km。
過去記事「神社巡り 戸隠神社 奥社・九頭龍社」において、以下のように書いた。
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この戸隠奥社参道は約2kmある。片道約30分。
日本一長い神社の参道は武蔵国一宮である大宮氷川神社の参道と言われており、約2kmである。しかし、ここもほぼ同じ距離があるのである。誰かが正確に測定したわけでもないだろうから、もしかしたら、こちらが日本一の可能性もあるのである。
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なお、過去記事で紹介している山梨県山梨市にある大嶽山那賀都神社(だいたけさんながとじんじゃ)も参道が長い。社号標まで15分くらい歩き、さらにそこから社殿まで10分ほど歩いたと書いてあるから、こちらも2km前後ありそうな感じである。本当の日本一はどこの参道なのか。
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その後、グーグルマップで計測したところ、距離はやはり大宮氷川神社の参道が一番長かった。参道を歩いている時間では戸隠奥社の方が長いと思うのだが、氷川参道は全て平坦な道なので、グーグルマップが示す所要時間によれば徒歩26分ということになる。
氷川参道はそのほとんどが一般道で、最初の部分においては一方通行の車道と歩道が並走する形になっている。
ご覧の通り、非常に整備された参道である。
ここは大宮駅から最もわかりやすい経路を通った場合の道(氷川参道まで東に直進)との合流点。
ここで参道の約半分を歩いたことになる。
ここからは歩道と車道が分離する。
散歩やジョギングなどの人も多く、市民の憩いの場的な存在である。途中には休憩用のベンチなどもある。
途中でまた社号標。「官幣大社」とある。
当社は、武蔵国一宮、延喜式内の名神大社、官幣大社、別表神社である。
なお、一宮制度ができた最初の時点(平安時代)での武蔵国一宮は東京都多摩市一ノ宮にある小野神社である。
この事実から当社の一宮を否定する人もいるのだが、後の時代に小野神社に取って代わって当社が一宮になったのである。女神様たちにも確認は取れており、当社が武蔵国一宮で問題はない。
社号標のすぐそばに二の鳥居。
もうすぐ境内に到着。
境内入口となる三の鳥居。到着はだいたい午前10時30分くらいだった。
女神様たちに確認すると、当社参拝は28回目、氷川参道を全て歩くのは4回目。午前の参拝はなんと初めてだそうである。いつもの午後参拝と比較すると、さすがに人はやや少な目。いつもはもっと人が多いので、ここの鳥居ではなかなか写真を撮影することが難しい。当社は初詣の参拝者数ランキングで毎年7~10位くらいの参拝者数であり、通常時でも参拝者数の多い神社なのである。
なお、当然ながら、さすがに、これだけ参拝に来ていると自分で参拝回数を覚えているはずはない。しかし、女神様たちに確認すれば各神社の参拝回数は確実にわかるので、便利である。
境内風景。境内社の紹介は後回しにして、まずは一直線に拝殿に向かう。
神橋。
当社には神池があり、その上を参道が通る。
当社シンボルの楼門。ここから瑞垣内に入る。この手前左手には手水舎がある。
瑞垣内に入り、参道中央に舞殿。その奥が拝殿になる。
拝殿。入母屋造。破風が付かないシンプルな形式。
当社は本殿に近づく周回路は存在しないため、これ以上奥には入れない。
当社御祭神は須佐之男命(すさのおのみこと=スサノオ)、稲田姫命(いなだひめのみこと=クシナダヒメ)、大己貴命(おおなむちのみこと=大国主)。
氷川神社というのは旧武蔵国に広く分布しており、ウィキペディアによれば200社以上存在しているという。もちろん、当社はその総本社。
そして氷川(ひかわ)という名称は出雲系神話に出てくる簸川(ひのかわ)という名称の川に由来している。
当社は一般参拝者も、もちろん多いのだが、御祈祷の件数が非常に多い。相模国一宮の寒川神社と全国1、2を争う御祈祷件数の多さ。平日、休日を問わず、30分ごとに数十人同時の御祈祷である。
瑞垣内全景。
瑞垣を右手方向に出たところに2つの境内社。
過去の参拝における印象だと、境内で最も人が来ない場所という感じだったのだが、今回は参拝者がなかなか途切れずに驚いた。
左が摂社の門客人神社。
御祭神は足摩乳命(あしなづちのみこと=アシナヅチ)、手摩乳命(てなづちのみこと=テナヅチ)であり、スサノオの妻であるクシナダヒメの両親である。八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治の神話で登場する。
また、長野県の諏訪大社の境外末社として、手長神社、足長神社というのがあり、前者の御祭神はテナヅチ、後者の御祭神はアシナヅチとなっている。
ここでこの境内社の読みが問題である。一般的に「客神社」「客人神社」は「まろうどじんじゃ」と読む。
ネットの辞書によると、意味としては「神社の主神に対して、ほぼ対等か、やや低い地位にあり、しかしまだ完全に従属はしていないという、あいまいな関係にある神格」の神を祀る神社のことだという。女神様たちに確認すると、意味はこれで合っている。
そして、門客人神社となると「かどまろうどじんじゃ」と読むのが普通と思われる。
過去記事「神社巡り 厳島神社」には客神社(まろうどじんじゃ)、右門客神社(みぎかど まろうどじんじゃ)、左門客神社(ひだりかど まろうどじんじゃ)が出てくる。
一般の人が書いている大宮氷川神社についてのブログ記事なのにも「かどまろうどじんじゃ」が正しい読みと書いてあるものが複数見つかるのだが、本稿執筆時現在(2018年8月19日)、当社公式サイトにはなんと「もんきゃくじんじんじゃ」と読みが振られているのである。
女神様たちによれば、これはやはり間違いであり、本来は「かどまろうどじんじゃ」とのことである。
右は御嶽神社(みたけじんじゃ)。
御祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)、少彦名命(すくなひこなのみこと)。
公式サイトには特に説明はないが、女神様たちによれば、東京都青梅市の武蔵御嶽神社(むさしみたけじんじゃ)からの勧請。御祭神も一致している。
2社の近くの池。
ここはまだ当社境内のようだが、当社は大宮公園と隣接しており、歩いているといつの間にか大宮公園に入っている場合もあるかもしれない。
大宮公園は元々は当社境内地。かつては、現在よりも遥かに広大な境内地を持っていたのである。
楼門まで戻り、今度は神池方面へ。
松尾神社。御祭神は大山咋命(おおやまくいのみこと)。御存じ、お酒の神様である。
神池に浮かぶ島にある、摂社宗像神社。御祭神は、もちろん宗像三女神。
ここはパワースポットとして知られている人気の場所である。いつ行ってもたいてい人がいる。
大きな神社の中の特定の境内社が人気があるというのは、結構珍しいのではないだろうか。
この島からの神池と神橋。
宗像神社の向かいにある稲荷神社。
境内参道に戻ってあと2社。
六社。住吉神社、神明神社、山祇神社、愛宕神社、雷神社、石上神社。
摂社の天津神社(あまつじんじゃ)。
一般的に天津神社とは天津神を祀る神社。従って、御祭神はさまざまである。ここでは少彦名命(すくなひこなのみこと=スクナヒコナ)となっている。
そして、公式サイトにスクナヒコナの説明として「大己貴命と共に国土経営に携わった神。医学薬学の神。恵比須様。」とあるのだが、最後が間違いである。恵比須様は大国主の息子の一人である事代主(ことしろぬし)。スクナヒコナは全くの別人である。
また、そもそも当社の御祭神がスクナヒコナで正しいのかという問題もある。ここでは勧請元の神社もわからなくなってしまっている。もし、勧請元の神社がわかれば、そこの御祭神に合わせれば良い。
天津神社は全国にあって、御祭神もそれぞれではあるが、最も有名なのは越後国一宮とされる場合もある糸魚川市にある天津神社である。そこの御祭神は天孫ニニギ、アメノコヤネ、フトダマの三柱である。
そして、女神様たちによれば、当社境内社としての天津神社も糸魚川市の天津神社からの勧請である。それが長い年月を経てわからなくなってしまったようである。
以上で境内を一通り巡って40分程度。
地元の一宮であり、あまり悪いことは言いたくないのだが、初めて参拝した頃は非常に感動して評価4.5(5点満点)だったのであるが、現在では評価4.0~4.0+くらい。場のエネルギーは低下している。
理由は判っているが、諸般の事情で書けない。
ついでに、一般参拝者向けのトイレが、初めて参拝に訪れた時から現在に至るまで変わっていないのであるが、ひどいものである。この規模の、この参拝者数の神社においては最低ランクである。
全国有数の参拝者数の神社であり、最も多数の人口を抱える旧武蔵国の一宮である(武蔵国はほぼ現在の東京都+埼玉県+横浜市・川崎市)。いくらでもお金はあるだろうに、何年経っても全く一般参拝者向けのトイレが改善されない。
お隣の相模国一宮の寒川神社でも見習ってはいかがだろうか。
まあ、色々書いたけど、そうはいっても武蔵国一宮である。元々は非常に良い神社である。その名に恥じないような神社であって欲しいと心から願う。
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過去記事はこちらからどうぞ。