久しぶりに布団を干す為に2階のベランダに出た。
そこに一匹の蝉の亡骸が落ちていた。夏が過ぎて秋になっているので、ずいぶん長い間、風雨に晒されているのだろう。
魂の抜けた抜け殻は四肢を天に向け、軽くなっている。
さて、蝉の死と人間の死とは何が違うのだろうか。
人間の死について一遍上人は次のように言っておられる。
「生ぜしもひとりなり、死するも独りなり、されば、人と共に住するも独りなり、そひはつべき人なき故なり」
結局は蝉も人間も一人で生まれ、一人で死んで行かなければならないのだろう。
蝉の亡骸を見てそう思った。

