変身 読みました
「ある朝、グレーゴル・ザムザが何か気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。」
この一文から始まる小説である。
およそその一文にこの小説のほとんどが含まれていると思う。
その後の展開は、かなり現実的だと思った。ご都合主義な救済はない。
根本的な重要な謎については解説されないまま終わる。なぜ虫になったか、なんの虫か、といった「虫」に関わる謎である。
そこが抽象的だから、様々な事柄に置き換えて考えられる普遍性がこの小説にあるのではないか。
この物語から、ぼくは、人と人の関係性の危うさを感じた。
グレーゴルは、「別人」になったわけではない。「変身」したのである。
虫に変身し、家族から見れば、およそ自分たちとは同族と思えない外見になる。加えて、言葉による意思疎通ができなくなる。
ただ、読者から見ればグレーゴルであることには変わりないのだ。
だが、家族とグレーゴルの距離はどんどん離れていく。離れていってしまう。
現実では、「家族」とか「友人」「恋人」といった関係が確固たるものとしてあるとされている。
とくに、家族の繋がりは強いだろう。
だけど、それら人間同士の関係性は、条件が何か一つ違えばすぐ壊れてしまうものなのではないかと思い、若干の怖さを僕は味わった。
こんなところで。