相変わらずふわふわゆるゆるしたお話。短めです。

以前に書いた『メギドラモンは町の住人達から愛されている』と同じ世界観のつもり。




デビルズカフェ。

街の一角に悪魔を意味する名を冠した喫茶店があった。


訪れる人々に癒しや安らぎの空間を提供する場所にしてはあまりにも不釣り合いで、入ることを躊躇ってしまうような店名である。

だがいざ中へ入ってみるとそこは想像していたような怪しげな雰囲気はなく、また恐ろしい場所でもない。

訪れるものを歓迎する癒しと安らぎの空間が待っているのだ。


中は木目調のテーブルや椅子にログハウス風の作りとなっていて、至る所に目にも優しい観葉植物達が並ぶ。

天井から吊るされた花の形の蛍光灯がオレンジ色の暖かい光を放ち、クラシックの音楽がBGMとして掛かる。

そして喫茶店のオーナーである二十代後半の男性は特別目を惹く外見的特徴がある訳でなく、特徴がないのが特徴というような、一度雑踏に紛れてしまえば見つけ出すのは困難と言える容姿だ。

目立たないが安心感と包容力があるオーナーの穏やかな笑みと共に発せられる安らぎのオーラは来る人達の心を和ませ、癒してくれる。

彼の得意料理であり看板メニューでもあるふわふわのパンケーキは絶妙な甘さであり、添えてある生クリームをつけて食べると最高に美味い。


──悪魔を連想させる店名からは予想も付かない穏やかで落ち着いた空間がそこには存在している。



では何故、悪魔の喫茶店などという店名を付けたのか。

その理由はカウンター席の端に寝そべる紫色の小さな生き物にあった。

頭から生えた2つの羽と小さな手足、つぶらな瞳が特徴的なその生き物はツカイモンという名で1年程前からこの喫茶店に住み着いている住人だ。

最初はこの不思議な生き物に多少面食らっていた客も1年も経てば慣れ、今では話し掛けたり触ったりする客が増えた。

常連が頼んだ料理を分けてやることもあり、ツカイモンはすっかり喫茶店に馴染んでいた。

その可愛らしいマスコットの地位を獲得したツカイモンがどうして悪魔と関係しているのかというと、姿を変えるからだ。


普段はマスコットとして客に可愛がられているツカイモンだが、どういう原理か店が忙しい時はボロボロの羽を背中から生やした悪魔の姿に変わってオーナーの手伝いをしているのである。

流石にこの姿には客も怯えるのではないかと思われたが、元がツカイモンであるとわかった客達の態度は寛容であった。


「おや、ツカちゃん。今日はお店のお手伝いしてるんだねぇ」


「偉いなぁ。よし、パンケーキをあげよう」


「ありがとう。美味いぞ」


忙しいオーナーの為に給仕を手伝うツカイモンに笑顔で声を掛け、注文したばかりのパンケーキを切り分けて食べさせてやる常連達の姿に他の客も続く。

幸せそうに貰ったパンケーキを頬張る表情は普段と変わらず、客に癒しを与えてくれるマスコットそのもので。


「ツカちゃんは可愛いねぇ」


「ああ、見た目なんて関係ねぇよ。ツカちゃんはツカちゃん、俺達の可愛いマスコットだ」


給仕を手伝うツカイモンを眺めながら、そう穏やかな顔をして言葉を交わす客達は心ゆくまでマスコットのツカイモンを愛でた後、満足しきった顔で喫茶店を後にするのであった。


悪魔の喫茶店。デビルズカフェ。

その店には名前の通り悪魔が住んでいる。

ただし……皆に恐れられるような怖い存在ではなくて、とびきり可愛い皆のマスコットとして親しまれている悪魔が。


そして今日も客はマスコットの悪魔に会う為に喫茶店の扉を潜る──






ツカちゃん

作中で表記された通りツカイモン。

悪魔の喫茶店ことデビルズカフェに住むマスコット。

普段はカウンターの端っこで寝そべり訪れる客に癒しを提供しつつ可愛がられているが、忙しい時間帯には進化してデビモンとなり手伝いをしている。

デビモンの姿でもマスコットとして可愛がられることに初めは困惑したが、今では慣れて受け入れた。


オーナーさん

1年前に現れたツカちゃんを喫茶店で保護し、住まわせている人。喫茶店のオーナー。

特徴がないのが特徴と言える平凡な容姿の二十代後半の男性。穏やかな笑顔と癒しオーラが客に人気。

得意料理はふわふわのパンケーキ。

デジモンのことはよく知らない。