友人は大の野球好きです。
子供の頃、お父さんに野球を教わった時に、
「小学校に入ったら絶対に野球少年団に入る!」
と言っていたそうです。
でも、その当時(今はどうなのかな?)女の子は少年団に入る事は出来ませんでした。
彼女のショックはとてつもないものだったそうです。
小学校で少年団、中学校で野球部、高校になったら甲子園、大人になったらプロ野球・・・と夢は果てしなく続いていたのに、自分は女の子だったばっかりに夢を断念するしかなかったと言う事です。
今、彼女の息子は中学校最後の大会まっ最中です。
特に彼女も自分の夢を息子に託そうと思った訳でもなかったみたいですが、血は争えず、息子も大の野球少年になりました。
小学校時代は少年団でピッチャーと時にはキャッチャーもやると言う器用さ(?)でした。
素人考えだと何でも出来て、器用で運動神経が良いのだと思いましたが、彼女曰く、ピッチャーとキャッチャーでは肩の使い方が違うので肩を痛める原因になるのだそうです。
中学校に入り、野球部に入団した彼は1年生の時からベンチ入りをして、時には投げる日もあったそうです。
何でも彼の投げる球はスピードがあるらしいのです♪
そして、現在3年生。
実は彼は肩を痛めています。
試合に出られないかもしれない位で毎日治療をしながら試合に臨んでいるそうです。
「中学生で痛めているって致命的じゃない?それって高校生になっても出来るの?将来プロとかなれる訳?」
と、私は疑問ですが、彼女は、
「それはそれで彼の人生だから。自分でちゃんと管理していなかったのも悪いんだし」
と言います。
そして、先日、彼の投げた試合で2-1で勝利。
でも、次の試合、彼は投げ切る事が出来ずにマウンドを降りました。
で、5-0で負け。
そして迎えたこれが最後かもしれないという試合。
何と、最終回ツーアウトから逆転サヨナラ勝ちを果たしたそうです。
そのツーアウトの場面、何と最終打者は彼でした。
友人は、
(あ~、うちの息子が最後の打者かよ~)
と、諦めモードで見守っていたそうです。
でも・・・。
何と、彼が打ち上げたボールは丁度真ん中で誰も取る事が出来なかった位置だったそうです。
そして、次に続く打者達は打ちまくったそうです。
親達は諦めモードだったけれど、監督も選手の誰一人もそんな場面でも諦めていなかった!と言う事がのちに分かった事でした。
5-0の試合の時には先生もさすがに諦めていて補欠の選手も出していたと言います。
でも、今回の試合、誰もが思っていた事は、
「自分が最後の打者にはなりたくない!」
だったそうです。
その次に繋ぐ気持ちが勝利へと導いたって事でしょうか。
そして、もう一つ、素敵な話を彼女がしてくれました。
息子が肩の調子が悪かった時に、チームの仲間達がメールを送って来てくれたのだそうです。
「俺が次に連れて行ってやるから心配するな!」
「俺はお前を信じている」
「俺は最後迄お前に投げてほしいと思っている」
・・・etc・・・。
こんなに熱いメールを交わし合っていたのだそうです。
今時の子供って何だか冷めているってイメージが一掃されました!!!
でも、みんな最初はこんなに熱いチームワークのある仲間ではなかったのだそうです。
一緒に戦って一緒に勝利を手にして、そうやって信頼関係を築いて仲間になって行ったんでしょうね。
素敵な事です。
そして、もう一つ。
小学校の少年団時代のママさんが試合を観に来てくれていたそうです。
(そのママさんの息子さんのチームは負けてしまったそうですが・・)
友人の息子がマウンドに立つとニコニコと笑っているのだそうです。
そして、気付けばチームの仲間もみんな笑っている・・・。
彼が笑って和んでいるからチームも安心して彼に任せていられるのでしょう。
そのママさん曰く、
「うちの息子のチームにはあれが無かった。このチームは凄い!!!」
と、その笑顔を大絶賛していたそうです。
笑顔が勝利に導くのだと、改めて笑顔の大切さに気付かされたお話です。
まだまだこのお話は続くのですが、
「このチームで一緒に高校に行っても野球やれたら素敵だね!」
と私が言うと、彼女は首を横に振りながらこう言いました。
「そう思うでしょ?でも、高校に行っても続けたいって言ったのはうちを含めてたった2名なんだよ。みんなそれぞれ長所があって足が早い子は陸上に誘われたりとかしてさ・・・」
う~ん、残念な話だ・・・。
「でも、この試合でみんなの意識変わったかもしれない。野球の醍醐味を知ってしまったからね」
と彼女は笑って言いました。
本当にそうだったら素敵なお話です。
そうして、また高校生になって、このメンバーで甲子園を目指すとしたら・・・。
一緒に泣いて一緒にドキドキして、過呼吸になりそうになったり、オロオロしたり、一緒に接骨院通いしたり・・・
きっと、その姿を追う彼女も青春真っ只中なのだと思います。
この話を聞いた後、自分はどうだったかなぁってふと思い返してみました。
私の最後の大会。
実は私は足を怪我していて最後の大会に出場出来ませんでした。
未だ青く、若かったあの頃、私は先生にこう言いました。
「自分の足がどうなってもいいから最後の試合に出たいです!」
と。
でも、先生はこう私に言いました。
「試合は高校に行ってもまたあるからこれが最後ではない。みんなを応援する事って参加している事になるんじゃないのか」
と。
今思えば、あの時無理をして試合に出ても良い結果にはならなかったと思います。
あの時、無理をしていたら、今の自分は居ないのですから。
仲間の中には3年間一度も勝った事が無い子がいました。
その子が初めて勝利した最後の試合、いつの間にかみんな集まっていて抱き合って泣いていました。
中学生なんて子供だと思っていたけれど、その時その時真剣に一生懸命だったなぁって自分の事ながら思いました。
そして、きっと同じ様に、彼女の息子達その時、その瞬間一生懸命真剣に生きているんだろうなぁって感じました。
誰にだってきっとそんながむしゃらで一生懸命で一途な時があるのだと思います。
そんな時間を過ごしてみんな大人になって行くのだと思います。
私のほろ苦い思い出迄も蘇らせてくれた友人の息子のお話。
きっと、素敵なお話はこうやって素敵な思い出を思い出させてくれる様に通じている幸せのお話なのだと思いました。