「ここをチョッキンしてくれる?」

と言えば、大抵の日本人には何を要求しているのか、恐らく通じるだろう。

 そう「はさみでここを切ってくれる?」

という意味だ。

 

 はさみで切ることを、オノマトペ(英語ではonomatopoeiaだから、オノマトペはフランス語の発音から来たのかしら)ではどう表現するだろう?

 「チョッキン」

 「チョキン」

 「チョキチョキ」

 

 幼い子どもなんかははさみそれ自体のことも「チョッキン」と呼んだりするかもしれない。

 

 それくらい「チョキチョキ」と「はさみ」は密接に結びついている気がする。

 

 けれど、これって自然発生的なものだろうか?

 恐らく違う。

 日本語で犬は「ワンワン」と泣くように、はさみでは「チョキチョキ」「チョッキン」と切るというふうに、日本の文化の中で刷り込まれているだけなのかもしれない。

 英語圏では「チョキチョキ」って表さないもの。もっとも、オノマトペが日本語程豊かな言語は他にないのだけれど。

 

 独自の言語感覚を持つ我が息子、幼い頃ははさみで切ることを

 「きっちゅん(発音がひらがなという感じがするのでひらがな表記にしたい)」

と言っていた。

 

 「これきっちゅんする」

 「きっちゅんして」

というように動詞としても使えば、

 「きっちゅん、ちょうだい」

 「きっちゅん、とって」

とはさみ自体のこともそう呼んでいた。

 

 確かに紙をはさみで切る音って

 「チョキチョキ」「チョッキン」

とも聞こえるが

 「きっちゅん」

とも聞こえるのだ。

 

 間違いでもなんでもないし、可愛い発音だから、咎めたり訝しんだりしなかった。

 だから、息子はかなり大きくなるまで「きっちゅん」と言っていたはずだ。

 

 もちろん今では「はさみで切る」と言うけれど。

 

 きっちゅん。

 可愛かったなあ。

 

 子ども独自のオノマトペって可愛くて楽しくて発見がある。

 

 独自の言語感覚、日本語を習得していっても持ち続けていたいし、子どもたちにもそうであってほしいと思う。