ずっと以前にお願いしていたカレの入荷連絡をいただき、エルメスへ。

 緊急事態宣言でデパートが食品売り場以外に閉めることになったのは4月だったかしら。

 お願いしたのは多分それより前だったような。

 

 ちょっと今さらという気もしないでもない。

 けれど大好きな馬モチーフ。大胆で躍動感があって。

 しかもダブルフェイス、裏と面で色が違うのだ。いったいどうやって染めているのだろう?

 

 広げてみるとやっぱり素敵。

 巻くと馬なのかどうか分からないから、自己満足なのだけれど。 

 お願いしていた色以外にも2色あるとのことで全色試させてもらったが、結局予約した色に決めた。

 

 「やっぱり、こちらの色でお願いします」

と告げる。すると

 「あの、あれからバーキンの25って出会われましたか?ネイビー系がいいっておっしゃってましたよね?」

と、こそこそっと。

 

 え!

 まさかまさか。

 

 「残念ながら、まだなんです」

 

 「実はひとつ先ほど入ってきたんです。ご覧になりますか?」

 

 えええ!

 初めての言葉。

 

 「本当ですか?何色でしょう」

と聞くと

 「グリーン系なんですけれど、でもとっても素敵なお色ですよ。ゴールド金具ですし」

 

 「グリーン系…ううむ」

とは思ったが、手に取ったこともないバーキン 25、触ってみたい。

 

 「見せていただけますか」

とお願いすると

 「そちらでお待ちくださいね」

と秘密の小部屋に。

 

 わあ、初めて案内されてしまった。

 

 「お待たせしました。こちらです」

とテーブルの上に置かれたバッグ。手袋をして触らせてもらう。

 

 25ってなんて可愛いんだろう。

 思った以上に持ち手が小さく、でも思っていたよりは荷物は入りそう。

 本当に本当に綺麗で可愛かった。

 

 裏も表も中も見た。

 手に持って鏡にも映してみた。

 うん、可愛い、それは間違いない。

 でも。

 でもこの色、多分私は使わない。

 グリーン系でもトーンがもう少し違ったら、よかったのだけけれど。

 もっとこの色を気に入った人に買ってもらった方が、バッグも幸せだ。

 

 「ありがとうございました。可愛いんですけれど、今回は見合わせます」

そうお断りした。

 断りの言葉を口にしながらも、ほんの少し

 「もったいなかったかもしれない」

という思いがよぎる。

 

 でも、私には贅沢なバッグ。

 買うのなら、本当に気に入ったものがほしいもの。

 いつかきっと。


 馬のダンスのカレは素敵だし、バーキン25には出会えたし、幸せ。