ゴッホは色弱だったと言われることがある。
本当のところは分からないけれど。
私自身ゴッホの絵は結構好きなのだが、息子もそうらしい。取り立てて絵には興味のない子なのに『星月夜』のマウスパットを使っているくらいだ。迫力があって好きだと言う。
以前に『色弱の子を持つすべての人へ』という本を紹介したが、その中に「色覚異常の人には、ゴッホの絵がより美しく見えている」という記述があった。『夜のカフェテラス』のシミュレーション画像が載っていて、確かにそのシミュレーションは絵にさらに奥行きが感じられ、明暗もはっきりしていて驚いた。
そこで、息子の好きな『星月夜』や『糸杉と星の見える道』を『色のシミュレーション』アプリで見てみた。
息子は二色覚ではなく、正常色覚の人の半分くらい緑を感知しているようなので、息子の色覚に合わせてシミュレータのメモリは50%にした。
他の人がどう評価するかは分からない。
けれど、私には確かに息子の色覚(に近いと思われる色覚)で見たほうが繊細で美しく感じられたのだ。
そして何より
「同じ絵を見ているのだ」
ということが嬉しかった。
息子には
「ゴッホの絵がこんな風に見えるなんて羨ましいなあ」
「ゴッホに限らず他の絵も実際の風景も、他の人には見えない世界が見えているって凄いことだね」
そう話した覚えがある。
さて、『色のシミュレーション』アプリの開発者である浅田さんのブログに、「色覚体験ルーム」というイベントでゴッホの絵を見た時の記事がある。
「とても繊細で微妙な濃淡を持つ見事な絵になっていたのだ。これは不思議だった」「P型色覚(一型色覚のこと)でデザインをやっている友人が、『素晴らしいだろ?僕たち色弱者は皆ゴッホの本当の素晴らしさがわかっていて、彼は天才中の天才だと言っているんだが、一般型色覚の人にはそれが良くわからないらしいんだ。彼はきっと色弱者だった。だから色弱者にはわかる。』という話をしてくれた」
とあり、ゴッホの絵のシミュレーション画像が載っている。
要するに、色覚異常がある友人が
「自分たちの方がゴッホの素晴らしさを知っているんだ」
と言ったから、自分もそれが見たくてシミュレーションしてみたらこんなに素晴らしく思えたという内容である。
このブログには反論がかなりあったようだ。反論の中にはブログの論旨を読み違えていると思われるものもある。「ゴッホ色弱説」を唱える為にこのシミュレーションをしたと捉えてたりするから困ったものである。
私もゴッホの絵をいくつか息子の色覚(に近いと思われる色覚)でシミュレーションしたものを載せてみる。
息子に二つの絵を見せたところ
「全く同じじゃないの?」
と言っていたから、恐らく息子の見ている色にシミュレーションのものが近いのだと思う。
「どちらが素晴らしいか」
などというのはナンセンスだ。ゴッホはこんなにも評価されているのだから。
けれど、一型色覚の見え方をシミュレートしたゴッホの絵は私たち正常色覚の見える絵に比べて繊細でより光の美しさが感じられるような気がする。
上がそのままのもの(一般的な色覚)
下が一型三色覚のシミュレーション(息子の色覚バージョン)
星月夜
糸杉と星の見える道
夜のカフェテラス
オーヴェルの教会
ファン・ゴッホの椅子
種まく人
アイリスの咲くアルルの風景