さてさて、強制執行の申立てのために取り寄せなくてはならないいくつもの書類。

 その中でいちばん気軽に取れそうなものは、住民票と戸籍謄本だろう。

 だって区役所に行けばいいのだから。

 

 裁判所はもちろんだが、公証役場も法務局も滅多に足を踏み入れる場所ではない。

 それに比べて区役所はいちばん身近なお役所である。

 戸籍、住民票、税金、子育て支援、ひとり親支援、さまざまな場面で足を運ぶ。

 下の子が小学生の頃はPTAの仕事でも散々行ったし。

 

 という訳で、最初に区役所で取得出来る書類を取ることにした。

 普段は出張所で事足りるのだが、今回は少し足を伸ばして区役所まで行った。

 申請を却下されたときに、出張所ではらちが明かないと思ったからだ。

 

 まずは自分の戸籍謄本と住民票。

 もちろんこれらはなんの問題もなく取れた。

 

 ところがである。

 元夫の住民票、取らせてくれないのだ。

 

 もちろん、原則は知っている。

 同一の世帯でない人間には発行してくれない。

 

 でも、さまざまな離婚相談サイトには

「正当な理由があれば取れる」

とある。

 取れた例も色々と見た。

 相談した弁護士さんも

「強制執行の申し立てをすると言って、証拠を見せれば取れますよ。」

と言った。

 

 しかし、何をどう言ってもだめなのだ。

 弁護士さんとのLINEのやりとりも見せたが、どうしても首を縦に振らない。

「申し訳ないのですが、出来かねます。決まりですので。」

の一点張りである。さらに

「弁護士であれば、調査に必要だということで委任状がなくても申請出来るのですが。」

ときた。

 

 腹立たしくて聞いてみた。

「それじゃあ、自分で強制執行の申し立ては出来ないってことですよね?養育費を払ってもらえなくて暮らしに困っていたら、弁護士なんてお願いできないですよね?そういう人はどうしろって言うんですか?なんのための強制執行なんですか?」

 

 困った顔の職員さんたち、

 「同一世帯なら取れるんですが…」

 

 って馬鹿じゃないの?

 離婚していて、養育費の不払いで強制執行しようというのだ。

 同一世帯の訳がなかろう。

 

 「委任状があれば…」

 

 いやいやあり得ないでしょう。

 頭は正常に働いています?

 委任状を書いてくれるような人なら、養育費が不払いだったり、養育費を勝手に減額したりする訳がない。

 

 これだから、お役所ってやつは。

 これだけ養育費の不払いが問題になっていて、それをなんとかしようという動きが出ているというのに。

 やれやれである。

 

 これではいくら民事執行法が改正されたって仕方がない。

 相手の財産を把握しやすくなったところで、そもそもの申立てが出来ない。

 杓子定規にもほどがある。

 

 憤っていても埒が明かない。

 夫の本籍地に行って戸籍の附票を取ってこなくてはならない。