元夫は 子供たちが面会を嫌がっていると言っても信じない。
 

信じないというか
「それは本心ではない。」
「本当は会いたいけれど、母親に遠慮している。」
「捨てられたと哀しいから、会いたくないと思い込もうとしている」
と、本気で考えているようだ。

 笑止千万。

 小さな子どもならいざ知らず、ものの通りの分かった14歳と20歳である。
「会いたくない」

「会いたくない」
なのだ。それ以外の何ものでもない。
 

 そう、
 「小さな子なら」
と思っていたのだが、たとえ小さくても

「会いたくない。」
という意思はしっかり持っているものだ、という話を母から聞いた。

 

 母には、娘さんであるYさんが離婚して実家に戻ってきている友人がいる。このYさんは6歳と4歳の男の子引き取り、一人で育てている。

 元の夫さんは再婚であり、上の子は前の奥さんとの子、下の子が二人の間の子どもだ。この娘さんは、血の繋がらない子も一緒に引き取り、育てていることになる。

 

 離婚の原因は暴力だったそうだ。

 暴力を振るい、二度としないと謝って戻ってしばらくすると、また同じことを繰り返す。

結局我慢しきれずに、別れたのだそうだ。

 

 この元の夫さん、まだYさんに未練があるようで、一緒に暮らしたいと言ってくるのを、拒否し続けているらしい。

 子どもたちのことも気に掛け、可愛いがっていて、お誕生日やクリスマスにはプレゼントを送ってきたり、学年が変わると洋服を送ってきたりするそうだ。

 また、

「定期的に会いたい」

と、面会は2ヶ月に一度で、毎回二人を遊びに連れて行っているという。

 

 これだけ聞くと、子どもにとってはいい父親と思えるかもしれない。

 

 ところが、そうでもない。

 上の男の子は

「お父さんは嫌い。」

「怖いから会いたくない。」

と、お母さんかおばあちゃんが一緒でない時は会わない。

 「お父さんはお母さんをいじめるから嫌い、ぶつから怖い。」

からだ。

 

 下の子はさすがに何も覚えていないから、会えば水族館や動物園に連れて行ってくれて、遊んでくれるお父さんのことが大好きで、会うのを楽しみにしているのだそうだ。

 お兄ちゃんが行かない時は、一人でもお父さんと遊んでくるらしい。

 

 

 「お父さんがお母さんをぶつ」

その場面を見ていた時、上の子は3歳くらいだという。

 

 小さかったから覚えているはずがない、などと言う人もいるがやはり違うのだ。

たとえ3歳でも、それが本人に向けられたものでなくても、暴力はその子を間違いなく傷付ける。

 

 たった6歳の子に

「ぶつから怖い」

などと言わせてしまう人が、どの面さげて父親などと言えるのだろう。

 

 今はYさんも、

「もう二度とよりは戻さない。養育費確保のために会わせているだけ。」

と言っているそうだが、母の友人は

「いつかほだされそうで心配。」

なのだそうだ。

 

 でも、上の子がいる以上、上の子が怖がっている以上、ほだされたりはしないはずだ。

血の繋がらない子を引き取った彼女は、女であるより前に、「お母さん」だと思うから。

 

 

この元夫さんの暴力は、子どもたちには当時は向かってはいなかったそうだ。

だが、この先は分からない。

 

 私の元夫も、子どもたちに明確な意思が芽生えるまでは、可愛がっていた。

彼なりに、ではあるが。

 だが、子どもはいつまでも赤ちゃんではない。

成長するのだ。

 もちろん、本当は生まれたその時から親のものなどではなく、本人は本人だけのものである。

その認識が欠けている彼は、子どもが「個」として目覚め、無条件に彼を受け入れなくなると、抑圧するようになった。

言葉で、態度で。

 自分に逆らわない、自分を全面的に肯定するから可愛いと思えていたということなのだろう。

 

 Yさんの元夫さんが、私の元夫と同じとは限らない。

たまにしか会わない子どもなら、何を言っても可愛いと思うかもしれない。

 でも暴力衝動のある人が、そんなに簡単に変わるとは思えないのだ。

 

 Yさんにこのまま穏やかな日が続けばいい。

 

 そして、Yさんの子どもたちがこれ以上傷付くことがないよう、元夫さんは、子どもたちとも適度な距離を保っていてほしい。

下の子が、お父さんを好きなままでいられたら、それは幸せなことなのだと思う。