冷やしえいがゾンビ -2ページ目

冷やしえいがゾンビ

めっきりノータッチですが、メインは映画に関する垂れ流し。

TENET、日本公開初日にIMAXレーザー上映を見てきました。雑な感想イコール雑感を残しておきたいと思います。




前半はテンポの早さに軽く戸惑いつつも笑いました。ルール説明のためのセリフが多く、しかもそれを躊躇なく容赦なく畳みかけてくる。


他人の夢の中を冒険の舞台としていた『インセプション』と比較してみてください。あちらにあった「ルール説明をしながらワクワク感を増幅させる時間帯」が、今作ではかなり削られています。


主人公が把握しているこの作品内のルールは観客とほぼ同じ。主人公へのルール説明が観客へのルール説明にもなっています。主人公の仲間がほぼ全員プロフェッショナル集団だった『インセプション』でも、観客に近い立場のアリアドネというキャラクターが用意されていました。


TENETはルール説明だけでなく、シーンの移行もやけに早い。


Aで情報を得る、Bで情報を得る、Cで情報を得るこの辺のつなぎにマイケル・ケインが起用されていたのですが、1シーンのみで2度と出てこなかったりするのはドライすぎない?と思ったりしました。


今作の重要人物であるキャサリンと主人公が出会った辺りからドラマが急速に濃密になり、テンポも落ち着きます。情報の入手が一筋縄では行かなくなり、相手との駆け引きがちゃんと展開されていくので見応えがあります。


キャサリンの夫=セイターに会うためにこなすミッションが非常にインポッシブルで、そのインポッシブル度によってセイターに会う事がいかに難しいのかを、背景を説明した理屈以上に雄弁に語っているところが面白いですね。1人の人物にコンタクトを取るためだけのミッションを描くにしては、設定のややこしさと金のかけ方が異常すぎる!


褒めてますよ。


ここのミッションをクリアして主人公はセイターと対面するのですが、セイターの信頼を勝ち取るために主人公は、何故か高速ヨットの操縦をさせられる事になります。この流れ、セイターのキャラ造形と展開から納得できなくはないけど、結局は「ノーランがこの船を撮りたかっただけでは?」という疑問を抱いてしまう場面ではあります。


でもこんな風に、無駄に見応えのある映像をデカいスクリーンで堪能するのは映画ならではの醍醐味とも言えるので、我々はノーランの発想の飛躍/跳躍に感謝しない訳にはいかないのです。


ノーランが撮りたかったダイナミックなアクションシーンの数々。見応え十分で堪能させてくれるんですが、肝心のクライマックスがなんとも微妙なんですね。ハッキリ言って、イマイチ。


原因は割と明確なんですが、かなりの多人数による銃撃シーンが締まらない。50人とか100人単位の兵士が拠点を制圧するべく撃ち合っているものの、出来の悪い戦争映画みたいで緊張感に乏しい。銃撃も、攻撃を受ける姿も描写として雑で、間延びしている。


爆破や建築物の倒壊など、なんとなく派手に見えても主人公たちの動き以外はどうでもよく見える。モブ兵士に作戦のイメージを持たせて欲しかった。


作戦に参加する人数を限定しなかったのはリアリティの追求として正解ではあります。世界の危機に対して投入する戦力が少なすぎる事で冷めてしまう例も多々ありました。しかし大人数戦闘の描き方自体はあまり面白くなかったです。


大詰めのタイムサスペンスも、シチュエーションが若干わかりにくい。もう少し明快にしても良かったと思います。(ニール側の動きは良かったけど)


クライマックスがそれほどスカッとしなかったにも関わらず満足度が低くなかったのは、ラスト周辺にアツいセリフを連発してきたからです。


「誰に雇われたんだ?」「まだ分からないのか?」は、まあ置いといて、


「おまえはこれをなんて表現する?Fate(運命)か?」「いや、Reality(現実)だ」


とか、


「これがEnd of a beautiful friendshipだな」「いや、俺にとってはBeginningだ」


とか、


「起きたことは仕方がない。だが何もしない理由にはならない」


とかね! ノーランってこんなキザなセリフぶちこむ人だっけ?なんて思いました。


時間を順行する者と逆行する者のカーチェイスとか、同じ構造の格闘アクションとか、まさしく見た事のない映像を見せ付けてくれるという意味でも必見のノーラン最新作。彼の作品と作風を素直に受け入れられる程度にはアホな自分なので、今後も期待していきたいですね。

PMC:ザ・バンカーという韓国映画にとても感心させられたので久々のブログを書く気になりました。



ハ・ジョンウ主演のミリタリーアクション。予告編も見ず、監督も知らず、Twitterに散見していた高評価だけを頼りに観に行ったのですが、ビックリするくらい面白かった!(韓国映画のクオリティには毎作驚かされている気がしますが)


脚本・監督はキム・ビョンウ。2013年に『テロ、ライブ』で衝撃的なデビューを果たして以来5年ぶりの新作っぽいです。前作は放送局というシチュエーションだけで描かれるスリルと緊迫感が凄まじく、オチの重たさも非常にインパクトがある作品でした。





上記の予備知識が無いままに見始めた『PMC』なのですが、まずオープニングからして素晴らしい。描かれている時代設定が2023-2024年の近未来。北朝鮮が査察を受け入れて核廃棄宣言し、それによって中国が北朝鮮の実質的な支配を進め、世界におけるアメリカの影響力がさらに低下していく、そんな中で行われるアメリカ大統領選の行方に注目が集まりこういった流れ/背景をテンポ良く語っていく。


「こんなの日本映画じゃ絶対できないだろうな」と、どことなく悲しくなるほどのハイクオリティ。適度なリアリティも、また心地よい。


アメリカCIAは民間の傭兵部隊PMCに依頼し、南北朝鮮の国境線にある地下バンカーで会談中の北朝鮮高官を拉致する作戦に打って出る。チームのリーダーはハ・ジョンウ演じるエイハブ。「彼は6年間の任務で1度も失敗した事がない」なんて説明されるとそれだけで期待のハードルが上がりますがな!


司令室からモニタリングしながら高官の到着を待つエイハブだったが、会議室に現れたのはターゲットの高官ではなく、朝鮮民主主義人民共和国のトップ!総書記!世界では"キング"と呼ばれている人物の登場に動揺を隠せないエイハブだが、意を決してキングの拉致に目標を変更。ここから物語が一気に加速していく。


北の総書記サマを拉致(誘拐)しようとする話といえば、セス・ローゲン監督主演の『ジ・インタビュー』なんて馬鹿コメディもありましたが(観てない!)、今作の拉致作戦は超シリアス。そもそも総書記のビジュアルが"実在するあの人"とは程遠い。主人公のエイハブも、その上司も、常に変化する状況にいいリアクションで驚愕しつつ、その上で重大な決断を下していくところが強烈な見所になっているのです。


限定的なシチュエーション、離れた場所にいる人物とのコミュニケーション、常に緊張感が保たれるストーリー展開など、『テロ、ライブ』との共通点も多いのですが、自分は「『テロ、ライブ』の監督の作品である」という視点を持たないまま今作を見たので先入観にとらわれることもなく、没入感が凄まじかったです。


展開の説明は省略しますが、エイハブは足を負傷して歩行不可能になり、キング(総書記)は瀕死の重傷を負う事になります。この段階で今作は「主人公が兵士の一員として活躍するミリタリーアクション」というジャンルを完全に脱ぎ捨てます。


エイハブとPMCチームの目的は「とにかく生きて帰る」という最大限シンプルなものに変更されるのですが、ただ生還するために、「なんとしてでもキングを死なせてはならない」という重責を担う事になります。世界中を駆け巡るニュースによってエイハブはキング殺害の首謀者として犯人扱いされてしまう! それがフェイクニュースであると証明するためキングを証人として保護しなければならない!


このケレン味たっぷりな設定が最高ですね! ちょっぴり強引だけど、そこがいい! 


敵国トップの人物を守らなければならないという構図はそんなに珍しくないのですが(最近だと『ハンター・キラー』も近い)、今作のユニークな点はキングが常に死の淵を彷徨っているところ。ずっと死にそうだからキングとエイハブとの間にコミュニケーションも無い。


エイハブは死にそうになっているキングの命をなんとか保とうと、会談に同行していたキングの主治医の助手と交信しながら蘇生やら延命やらに奮闘する事になります。映画のジャンルが変わったと書きましたが、どう変わったかというと、つまりは医療サスペンスです。救命医療アクション!


この『キングを死なせるな!』パートがやたらとリアル! どういう理由で瀕死なのか、それを解消するために何をすべきか、新たな問題の発生とそれへの対処という感じで次から次へと山場が描かれていくので、途中から「またそんな面白い事やりやがって!」と、興奮と笑いが止まりませんでした。


ちなみにキングの主治医の助手を演じているのが、『パラサイト』でも印象を残したイ・ソンギュン。劇中セリフのほとんどを英語で話しているエイハブが、韓国語で会話する唯一の相手がこのキャラクター。今作でも最高のイケボを轟かせておられます。


そんな医療サスペンスとは別角度のドラマも並行して描かれるのが今作の真の凄さ。PMCとキングを抹殺するべく迫ってくる北朝鮮側の兵士(中国軍だったっけ?)との激しい銃撃戦もしっかり描いていきます。


主人公エイハブは負傷したためにバンカー内司令室で足止めを食らっており、その場所からチームメンバー(あるいは主治医の助手)に対して指示を出していくのですが、そんなシチュエーションそのものが斬新であるのと同時に、近未来を舞台にしたがゆえの画期的なガジェットを活用しているからこそ今作を最先端の作品にしているのです。


そのガジェットとは、野球用ボールくらいの大きさの自走式球体カメラ。壁や天井さえもコロコロ進んでいける上に自由な角度で動画撮影可能というスーパーカメラなのです。エイハブはこの球体カメラを自在に操りながら状況を把握しつつ指示を飛ばしていきます。


映画内の画として、地を這うようなカメラワークが見られるのはとても面白いし、そんなカメラだからエイハブは色んな指示/決断が可能になるというドラマ面でも有効であるという、二重に優れたアイテムかつアイディア。こんな事を思い付くだけならまだしも、実際に取り入れて超面白い映画にしてるんだから恐れ入りますよ!


医療的観点では主治医の助手に指示を仰いでいる立場のエイハブですが、敵部隊と激しく戦っている(時には隠れてやり過ごそうとしている)仲間たちに対しては指示を飛ばす側になる。指示されながら指示する、この構図がめちゃくちゃ面白い!!


そのシチュエーションをセッティングするために、主人公の足を負傷させたり、近未来という時代設定にしている事に気付けば、今作が緻密なデザインによって成り立っている事が身に染みて理解できるはず。リアリティとケレン味のバランスが素晴らしいのです。


球体カメラで情報収集しながら戦闘と防衛を離れた場所から指示するという、一種のシミュレーションゲームのような構図。これも単なるミリタリーアクションとは別のジャンルといえるのではないでしょうか。FPSシューティングゲームそのものみたいな視点のカメラワークもあるので、今作はゲーマーにもオススメしたいところです。


医療サスペンスも、限定シチュエーション防衛シミュレーションも、共に「これでもか!」とばかりに山場の数々が提示されるので飽きる隙間がまったくありません。盛り上げ方のアイディアの総量がとんでもない。製作期間5年はやっぱ半端ないって!


シチュエーションスリラーにありがちなタイムリミット設定は無いし、「いよいよこれで終わりだ」からの急なUターンがあったりで、後半は見ていて完全にハイにさせられまた。山場というか、主人公たちに新たな危機が迫る度に笑えて仕方がない。同じく韓国映画の『EXIT』も、山場の連続連続連続っぷりが圧倒的な映画でしたけど、今作も負けてません。


言及するのを忘れたくないのが、主人公エイハブのキャラクター。時には無慈悲な決断を下してチームメイトから反発を食らう場面もあるのですが、苦境に立たされるたびに大いなる葛藤を経ている事がよーく分かるのです。ハ・ジョンウが最もハ・ジョンウらしくなるのはこういう芝居を見せている瞬間なのかもしれない


クライマックスに至ってのエイハブの行動ひとつひとつが感動的なんですよ! ハ・ジョンウが演じてきたキャラクターの中でも一番カッコいいんじゃないか?とさえ思いました。こんな器のでっかい男と仕事してえよ


終盤は「そこまでやる!?」と言いたくなる超絶展開が繰り広げられ、数々の伏線を回収しつつ、たまらなくエモすぎるラストシーンに到達。とんでもない映画を見たなという感触と戯れながら、エンドロールを眺めました。


まだ30代の若手監督が、デビュー2作目でハリウッドを超越する程のサスペンス/スリラー/アクション映画を撮ってしまった。面白さへのアプローチはハリウッドを遥かに凌駕していますし、スケール感や撮影全般の技術力も圧倒的。ジャンルも好きだしジャンルを飛び越えていくところも好きだし。韓国映画の凄みをまたも実感させられる一作。またも、というか…歴史を塗り替えたくらいの大傑作であるとさえ思います。


ゲームクリエイターの小島秀夫監督はキム・ビョンウ監督のデビュー作を見た時点で「この人はいずれハリウッドへ行くでしょうね」と語っておられましたが、自分は今作を見て初めて実感しました。キム・ビョンウは近い将来ハリウッド進出してくれます!進出しなくても今作のような傑作を生み出してくれたら文句なし!


今年公開の韓国映画、『パラサイト』を見るだけで終わっちゃ勿体ないですよ。"2本目"に『PMC:ザ・バンカー』を選んでくれる方がいたら私はとても嬉しいです。超オススメ!!

BBC製作ドラマ『ボディガード -守るべきもの-』が傑作だったので、この作品の素晴らしさを語らせてもらいたいのです。私はNetflixで見ました。


2018年に放送され、ここ10年のドラマで最も視聴率が高かったそうです。BBCといえば『シャーロック』も大人気でしたが、それよりも高かったと聞くと素直に凄いな、と。


そんな『Bodyguard』、主演はリチャード・マッデン。HBOの超ヒットドラマ『Game of Thrones』のロブ・スターク役で名を馳せた若手俳優。


正直ほかのキャスト陣は見覚えがありませんでした。つまり予算たっぷり、豪華キャストを揃えて高い勝算の上で製作されたシリーズではないと思われます。


しかし結果として高視聴率を獲得、さらにはゴールデングローブ賞にも作品賞と主演男優賞でノミネート。リチャード・マッデンは32歳の若さで主演男優賞を受賞しました。他にも様々な賞を受賞しているドラマです。


視聴率しかり、批評家受けしかり、『Bodyguard』は2018年放送のテレビドラマの中でも屈指の高評価を受けています。


個人的にもこのドラマは大好物であり、様々な点から見ても非常にレベルが高いので、直球勝負の絶賛投稿をこのブログに残しておきたくなりました。


まずはネタバレ抜きで、『Bodyguard』の優れた点を5つのポイントにしぼってみます。



ー第1話の冒頭からいきなり面白い


主人公はこういう職業に就き、こんな性格でそういった前置き/説明も無く、緊張感のあるシチュエーションがいきなりスタートします。最初のシーンだけで主人公のメンタリティやプロフェッショナリズムが理解できるのです。素晴らしい『つかみ』として、文字通り視聴者の心をしっかりと掴んだものと思われます。



ー閉塞感ただようリアルな現代劇


テロリストを警戒するボディガードの話なのでシリアスムードなのは予想できたのですが、実際にテロ被害も出ているイギリスの重苦しい空気を表すストーリーがとてもリアル。一口にテロ対策といっても、一面的な正義で片付かない根深い問題である事を改めて痛感させられる。



ー主人公をはじめとして各キャラクターがとても人間的


権謀術数渦巻く、政治性の強いドラマでありながら、登場人物の感情の揺れをしっかりと描こうとしています。理知的なストーリー展開の中に人間のゆらぎを組み込んでいる。そしてそれを見事に体現するキャスト。見応えある演技が満載。



ー1シリーズで完結。全6話。タイト。


面白い海外ドラマがあるよ!シーズン7まであるんだけどーーこんな話はよく耳にすると思います。見るのがしんどい。『Bodyguard』は1時間前後のエピソードが6話。続編を殊更に匂わせる事もなく完結しています。私は2日間で1周、さらに2日間で2周も見てしまいました。



ースリラー/ミステリー/政治劇/ノワール/etc...ジャンルを分別し難い見事なバランス。


テロの気配ただようスリラー、破滅の予感を感じさせるノワール、陰謀の真相を巡るミステリーなど、多面的なストーリー性が先行き/結末を予測させてくれない。主人公さえも信用できなくなるシナリオが故に、視聴率が伸びるのも当然といえる。


総括はこれくらいにして、ネタバレを含んだ感想を書いていきます。



第1話。子供2人と乗っている列車に乗り込んできた不審な男が気になる主人公デイビッド・バッド。トイレから出てきた男は爆弾を持っていなかったが、同じトイレに戻ってみるとそこには爆弾ジャケットを着たイスラム系女性ナディアが怯えていた。


偶然乗り合わせた主人公が爆弾テロをどう防ぐかというシチュエーション。冷静ではあるが、死の恐怖も垣間見せる主人公の芝居が光る。後から乗り込んできた武装警察に銃を向けられても信念を貫き、被害を出す事なく解決。


子供2人を妻ビッキーの家に送り届けるバッドだが、キスをしようとすると拒絶される。別居中で、なおかつ夫婦関係は芳しくないようだ。


功績を認められたバッドは内務長官ジュリア・モンタギューのボディガードに任命される。イギリスは治安維持のための通信傍受法案で国全体が揺れている状態。ジュリアは与党の中でも法案支持の急先鋒としてバッシングを浴びている。


このエピソードは主人公とジュリアの関係の緩やかな変化と、与党議員/警察/保安部の主要キャラクターを描きながら、何が起きるでもない凪状態のボディガード業務を見せていく。



第2話。政局が確実に変動していく中、学校を狙った爆弾テロが発生。その小学校にはバッドの子供2人が通っていたが、警察の対応で小学校への被害は最小限に抑えられた。


列車での爆弾テロを阻止した事への報復の可能性も考えられたため、バッドは内務大臣の警護を外されてしまう。内務大臣ジュリアは警察に不信感を抱き、列車テロ実行犯への尋問権限を保安部に移行。警察と保安部の対立が鮮明になっていく。


バッドは内務大臣の要望で警護に復帰。その日の夜には大臣の自宅でささやかなディナーを共にし、どことなく親密な関係が出来上がっていく。


余談ながら、警察官であるバッドが上司や内務大臣を呼ぶ際に使うMa'am(マム)という名称、この作品で初めて意識するようになりました。警察組織の中で女性の上司が当たり前の構図として成立している点も面白い。


翌日、内務大臣を乗せた車での移動中、銃による狙撃に遭遇。ドライバーが即死し、車が立ち往生した状態から機転を利かせて内務大臣を守るバッド。ビルの屋上で発見した犯人は、かつてアフガニスタンで共に戦った戦友だった。犯人は銃で自殺するが、バッドは犯人がかつての戦友である事を誰にも言わず秘密にする。


その日の夜、動揺が抑えきれないジュリアを慰めるうち、バッドは彼女と関係を持ってしまう。このシーンに雪崩れ込むきっかけとなるジュリアのセリフ「Im not the Queen, youre allowed to touch me.」にはドキドキしちゃいました。


ジュリアは暗殺未遂の件もあり、警察への不信感をますます募らせていく。結果として保安部との繋がりが強固に。保安部はジュリアに「警察から情報が漏れているのではないか」と伝え、疑心を深めていく。



第3話。ジュリアは保安部トップのハンターとの密談を重ねながら、バッドとの関係を深めていく。バッドの上司ロレインは警護対象とバッドの親密さを見抜き、ジュリアが保安部と重ねる密談を盗聴するよう命じる。


警察のテロ対策チームはジュリア銃撃犯と対峙したバッドから直接事情聴取を行うが、バッドは犯人の素性についてシラを切る。


ジュリアへの盗聴を進める中、バッドはジュリアの部屋を訪れた見慣れない人物を呼び止める。その男はリチャード・ロングクロスと名乗って去っていく。バッドはジュリアとの関係を続けながら周辺の怪しい動向を探っていく。


ジュリアはテロ対策通信傍受法案の推進によって失った支持率を高めるべく、大学での講演を企図する。講演の直前でちょっとしたミスリードを盛り込んでいるところがシナリオ的に憎たらしい。


ジュリアは保安部からタブレットに収まった資料を受け取り、その内容を確認後に首相と秘密裏に会談。その動きを察知した一部の閣僚に緊張が走る。


大学での講演当日、ジュリアから「あなたの子供達の学校がテロリストに狙われていた事は事前に知っていた。やっぱり私の警護から離れた方がいい。それでも、あなたにそばにいてほしい。仕事としてではなく、お互いの選択として」と、思いを告げられる。


ジュリアの講義が始まる。途中、秘書のタヒールが講堂の外を歩く姿を見つけたバッドは、彼の持っていたブリーフケースの中身を確認するが、中身は書類だった。講堂の中に戻ったバッドだったが、警護班のキムが舞台袖にタヒールを発見。バッドも舞台に向けて走り出す。


バッドの目の前で爆発が起き、ジュリアは意識不明に。



第4話。ジュリアへの2度目のテロが起こった事で、彼女を狙った人間の動機に注目が集まる。当初は舞台袖に現れた秘書のタヒールが第一容疑者とされるが、講演中に彼のブリーフケースを検査したバッドにも疑惑の目が向けられる。


長時間の手術の末にジュリアは死亡。責任を感じたバッドは自宅に隠し持っていた拳銃で自殺を図る。


別居中の妻ビッキーはバッドの自宅を訪れ、こめかみから血を流す彼と対面。バッドが撃った弾は空砲だった。彼は自分の知らない間に弾丸がすり替えられていた事に気付き、大きな陰謀の真っ只中にいる事を認識する。


ここからドラマはジュリアを殺した犯人を巡るミステリー要素が強くなっていきます。バッドは主人公として自分の無実を証明するため行動し始めるのですが、視聴者としてバッドの事を信用しきれないところが面白いのです。心情を説明するセリフもほとんど無く、捜査チームもバッドへの疑惑を少しずつ深めていく。この構成もドラマに引き込まれた理由の1つです。


列車爆破未遂事件の実行犯だったナディアへの聴取に立ち合う事になったバッドは、ジュリアを亡き者にした爆弾の製造者を聞き出そうとする。列車テロの際、説得に応じたナディアの事をバッドは信じていて、ナディアの供述もまた、バッドへの信頼を感じさせる。


バッドは事情聴取に同席したテロ対策チームのレイバーンに、自宅に何者かが侵入した形跡がある事やジュリアの部屋を訪ねてきたリチャード・ロングクロスなる謎の人物について打ち明ける。しかしテロ対策チームはバッドへの疑惑をますます強めていった



第5話。ジュリアを殺害した爆弾はブリーフケースの中ではなく舞台下に設置されていた事が判明。タヒール関与の可能性が薄れ、究明が遠のく。


バッドは、ジュリアが滞在していたホテルを訪れたロングクロスという男についての調査を始める。ホテル、大学ともに監視カメラ映像の一部が消去されており、テロ対策チームのレイバーンもロングクロスの関与を疑い始める。


バッドは再びナディアへの取調べを行い、爆弾製造者を突き止めるために容疑者の顔写真を見せていくが、ナディアの反応は鈍い。去り際、バッドの供述で書かれたロングクロスの似顔絵を見せると、ナディアはこの人物から爆弾を受け取った事を怯えながら認めた。


ナディアの証言も、証拠が似顔絵である事からテロ対策チームを動かす事ができない。バッドは苛立ち、さらに独自の捜査を進めていく。


ジュリアが保安部から受け取ったタブレットに収められた政界スキャンダル情報、バッドは寂れたネットカフェで、タブレットの閲覧時にメモした機密情報に関連づけて検索を始める。彼がネカフェを出て間もなく、そこに駆け付けたのはロングクロスと彼の手下たちだった。


テロ対策チームトップのアン・サンプソンに呼ばれたバッドは爆弾製造容疑のかけられたロングクロスが保安部の人間であると発言。検索キーワードで誘い出してロングクロスを見つけたと告げる。


バッドはジュリアの補佐官だったマクドナルドを締め上げ、講義当日に現場に行かずタヒールを電話で誘導してステージ袖に移動させた理由を吐かせる。しかし彼の行動はジュリアを爆死させるためだったとは考えにくく、犯人像は掴めない。


バッドはさらにリスキーな捜査を進めていくが、彼の足元には大きな闇が広がりつつあった。独自の捜査と精神面の不安に業を煮やしたロレインはバッドに休養を命じ、警察手帳と銃を取り上げる。


誰も信用できなくなったバッドは、ジュリアの私邸に侵入し、写真立てに隠されていたタブレット端末を発見する。


ーーここでなぜバッドがタブレットを入手できたのか? バッドがその場所に隠したのかとも思ったのですが、生前のジュリアによる「もし私が戻らない時はデス・スターに行ってね」というセリフの意味にバッドが気付いたというのが真相のようです。写真立てに収まっている写真について「それは私達がデス・スターを作っていた頃の写真よ」と冗談を飛ばしたのが伏線となっていた。それが真相のようです。



第6話。バッドは第1話でジュリアに解雇された補佐官のシャネルと会合。彼女が指定したバーで飲んでいるとルーク・エイキンズが現れ、バッドの隠し持っていた銃を取り上げた上で彼を拉致してしまう。


銃撃による暗殺に失敗した後で自殺したアプステッドの経歴を調べていたテロ対策チームは、アプステッドとバッドが同じ隊に所属していた事を突き止める。バッドが暗殺の手助けをするために警護の情報をリークしていたと結論付け、彼を指名手配する。


血まみれで目覚めたバッドは自分の体に爆弾が巻きつけられ、手にデッドマンズスイッチを握らされている事に気付く。スイッチから手を離せば爆発。真相を探ろうとしたバッドは罠に嵌められてしまった。


バッドはロンドンの街で通行人の携帯電話を使って通報。たちまち現場に武装警察や上司のロレイン、ビッキーを連れたレイバーンらが集まってくる。妻の姿を見たバッドは物陰から姿を現し、無抵抗の意思を示す。


ここからおよそ35分間、バッドと警察の駆け引きと爆弾処理シーンが続きます!


第1話で自爆テロ犯の逮捕に成功した主人公が、最終話で自爆テロ犯であると誤解されながら必死に無実を証明する。この構図だけでも面白すぎ。


さらにはバッドが無実の証明のため、絶体絶命の状況で切るカードの数々がスリリングで超面白い! 信用できる相手が居なかったがゆえに明かそうとしなかった様々な事実を、満を持して提示していく展開。たまらないですよ。


爆弾ジャケットは自分の意思で着たわけではなく、シャネルが手引きしたエイキンズによって着せられたものであり、エイキンズがアプステッドに狙撃用の銃を売った事、エイキンズがバッドの自宅の拳銃を空砲にすり替えた事など、決定的な情報を誘導尋問で聞き出したと主張。


バッドはタブレット端末の在処を告白するが、それは現場にいない保安部の裏をかく罠だった。保安部から指示を受けたロングクロスは、天井の照明に仕掛けられた催涙スプレーを浴び、後から駆けつけた警察に逮捕される。バッドは盗聴されていると勘付いて保安部をトラップに誘導。タブレットを確保するために保安部がロングクロスを動かした事の証明でもある。


現場に到着したテロ対策チームトップのアン・サンプソンによって総員の退避が命じられるが、ビッキーがバッドの元に駆け寄ったことによってバッドに対する射殺許可が取り消される。バッドは自宅まで移動すると宣言し、包囲する警察たちを連れて歩き始める。


バッドは自宅前の地面に埋めていたタブレットをビッキーに掘り起こさせ、警察に提出。爆弾を自分に解除させてくれと提案する。


この爆弾処理シーン、やたらとリアルで緊迫感が凄いのです。バッドがちゃんと爆死の恐怖を感じている様子が芝居から伝わってくる。爆弾処理担当がアジア系俳優なのも良かったですね。


爆弾処理に成功したバッドは、距離を取っていた警察の裏をかいて素早く逃走。決着を付けるべく、ある人物の元へ。


ーーこの先の展開は伏せておこうかと思うのですが、終盤で明らかになる、陰謀に加担したある人物の真意が語られる場面で強烈なインパクトを感じました。このドラマはある段階からミステリーになると書きましたが、最後のもうひとひねりには完全にやられました。どれくらいの衝撃かといえばカイザー・ソゼ級。


その事実が明らかになった瞬間に、自分の中に存在する色んな先入観や偏見について改めて考えさせられる、それくらい凄い仕掛けでした。この衝撃、是非とも皆さんに体感してほしい!


衝撃だけでなく、ラストシーンの余韻も素晴らしい。バッドが大臣と寝た事を妻に懺悔するところも何気に良かったし、それも含めてバッドがささやかな安心を手に入れる結末だったので、とても心地よい後味でした。


イギリス系のナイスな俳優も沢山知る事ができたし、特に主演のリチャード・マッデンはMARVEL映画『エターナルズ』の主演も務める事が発表されて大ブレイク間違いなし! 予習のためにもこのドラマはオススメです。


またも長々としたエントリになってしまいましたが、以上ですーー。