X-MEN アポカリプス | 冷やしえいがゾンビ

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めっきりノータッチですが、メインは映画に関する垂れ流し。

X-MEN アポカリプス

見ました。

前売り券を買い、公開初日(祝日)に仕事を終えてからの観賞。好きな俳優も沢山出てるし、予告編もカッコ良い。面白い映画が見られるのではないか?という当たり前な期待感を抱いた状態で見ました。


その期待は裏切られました。残念!

今作のラスボスは「地球上で最初のミュータント」という設定のアポカリプス。いかにも古代エジプト文明の権力者な風貌。

こいつを演じてるのは『DRIVE』のムショ帰り旦那役でお馴染み、オスカー・アイザック。(スター・ウォーズ:フォースの覚醒にも出てますって!)

なんですけど、役者の原型がほとんど残ってないゴテゴテのメイクに大袈裟なコスチューム、真っ青な顔色。表情はほとんど動かず、ジジイ然としたたたずまい。

そもそもミスキャストだし、やってる役者の身長が低いからカッコ良さも威圧感も無い。セリフなどの芝居も旧態依然とした大王様テイスト。

その上撮り方も雑で下手くそ。街中や大自然の中で日光を浴びて立っているアポカリプスを見るたびに違和感が生じるのです。画面の中で浮いてる。異物感。おまけに配下のミュータントと並ぶと身長で負けてるからすごくカッコ悪い。

タイトルにもなっている強大な敵をいかに演出するのか?というハードルに対して製作陣がどのような工夫を凝らしたのかがほとんど感じられないです。

アポカリプスがなぜ強いのかというと、超常的な儀式によって1000人以上のミュータントの体と能力を乗っ取ってきたから。設定上ではそうなってますが、実際にどのような能力を使えるのかがよくわからない。

前半で簡潔に説明すればいいんですけど、特に掘り下げないし掘り下げたくないからお茶をにごすばかり。

古代からの眠りから目覚めたアポカリプスが復権を目指して最初にとった行動は「街でミュータントを直接スカウト」。エジプト・カイロの街中を青い顔の老人が徘徊する姿はギャグにしか見えません。

最初に出会うミュータントは、派手な能力を使って露店商の売り上げを盗むチンケなこそ泥として登場するストーム。エジプトのストリートチルドレンにミュータントがいるのは別にいいけど、落とし所のために出発点や過程があっけなく犠牲にされてるんですよ。

目の前で人間が砂と化したのを見て、さらには人間を土壁に一体化させるという恐るべき能力を見たストームはすぐさまアポカリプスの手下になる。戦いを仕掛けて歯がたたないとかなら分かるけど端折ってるわけです。

「他に強いミュータントは知らないか?」「一人思い当たるわ」と、ミュータントによる地下格闘大会で勝ち抜いていた(ショボいなあ)エンジェルを紹介。背中に翼が生えていて飛ぶ事ができるというだけのキャラ。登場シーンの格闘大会も見どころが無いグダグダっぷり。

アポカリプスが現代のミュータント4人をスカウトして「新・フォー・ホースメン」を配下に得るくだりがことごとく雑だったと思います。

もっと根本的な問題を突けば「飛べる」「天気を操る」「なんでもぶった切る」「金属を操る」という能力の悪者によって作られるドラマには限界があるんじゃないか?と思ったりします。それらの能力を活かしたフレッシュなアイディアなどはほとんど見られなかったですよ。

それでも、似たような能力者で超面白い作品にしてみせたシビルウォー:キャプテンアメリカという例があるので、製作者のセンスと情熱次第だとは思うんですが。

プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアを中心とした「いいもん」ミュータントチーム、いわゆるX-MEN側の物語も平行して描かれていくわけですが。特にドラマらしいドラマが無い。

新キャラとして登場する新たなミュータントがチャールズの元に集まってくるのを描くわけですが、「ミュータントだらけの学校に転校生がやってくる」みたいな構造を改めて見つめ直すと…幼稚で面白くないなーと。

目から強力なビームを出すサイクロップスなんて個性的なキャラクターなのに、登場・導入がすごく平凡でガッカリ。しかも演じてる役者のルックスもカッコ悪いしなあ…

X-MENが行動を起こす動機が特に無いから、ジーン・グレイ(フェニックス)というテレパス能力者(新キャラ)に世界崩壊の予知夢を見せたり、旧作の人間キャラに偶然ラスボスを目撃させていたり、レイヴン(ミスティーク)があっさりマグニートーの情報をつかんでいたりして、何かが起きそうだぞ怖いぞ感を盛り上げていくんですが。基本的に受け身で、危機感が薄いまま展開していくのが全然ノレない。

情報を統合して「なんかヤバいのが目覚めたらしい」と確信したチャールズは、全世界の人間の意思を見通す超テクノロジー「セレブロ」を使って情報収集するも、アポカリプスにハッキングされてしまい自由を奪われ、なんだかんだで拉致される。

よくわからないけど学校で大爆発が起きるのですが、その爆発からミュータントたちを救ったのが、たまたまそのタイミングで学校を訪れたクイックシルバー。「ものすごーーーーく速く動ける」という能力を持ったミュータントである彼はミュータントを1人1人安全に避難させる。

このクイックシルバー。彼が本気になると周りの存在は超低速になります。彼の活躍するシーンは見ていて楽しい。もはや能力自体がギャグのようなものなんですけど、ここまで行くと反則でしょう。チートでしょう。時間を止めているに等しいんだもん。見てて楽しいんだけど、作品全体のトーンや世界観からは浮いてるように思います。

爆発の後で政府機関が学校を襲撃してミュータントたちを拉致していきます。この展開になって「やっと話が転がってきたか…」と感じたのですが、このくだりがまたしょうもない。

連れ去られた先(ミュータント研究施設)でウェポンXと呼ばれている時期の若きウルヴァリンが登場するんですが、ゲスト出演でちょっと暴れさせるためだけに主要キャラたちを移動させたとしか思えない強引さ。また続編の伏線になるかもしれませんけど、ストーリーラインを止めてまで描く必要ないでしょ。

ウルヴァリンのアクションも描き方が下手でアイディアも無いし分かりにくいしカット早すぎるし…

X-MEN側の展開と同時に、「どこかの山岳地帯でアポカリプス軍団に囲まれた状態のチャールズ」を並行して描いているんですけど、同じ構図のシーンを3~4回に分けて描いてるのが本当にバカバカしい。「いい加減そこから移動しろよ」「チャールズいつまで寝そべってるんだよ」とかつまらないツッコミを入れざるを得ませんでした。

この辺が疲労感のピークで、「間抜け…」「締まりがない…」「キマってない…」こういう罵倒が頭の中をグルグル駆け巡ってました。

この映画のクライマックスが盛り上がらないのは、ラスボスのアポカリプスの設定がズレまくってるからなんですよ。1000人のミュータントの能力をコピーし、肉体を乗っ取る事で転生し続けてきたというキャラクター。クライマックスでもチャールズのテレパス能力をコピーするために転生儀式を行おうとします。X-MENたちはそれを阻止しようとし、フォー・ホースメンは儀式を守ろうとする。

つまりクライマックスが大規模バトルになっていくにも関わらずアポカリプスの強さがほとんど描かれてないんですよ。冷めるわ!

眠れるじじいは置いておいて。X-MEN対フォーホースメンという、本来戦う必要の無い者同士の争いって燃えるシチュエーションのはずなんですけど、これもブライアン・シンガーの実力不足が否めず。ミュータントそれぞれの能力をどう引き出し、どれだけフレッシュな描写を生み出すかってところがダメダメ。シビルウォーとは雲泥の差。

一番ひどかったのはストームが風で飛ばした車をビーストがキャッチし、それを投げ返したらストームの元へ飛んでいき、その車をサイロックがスパッと真っ二つに切るところ。

サイロックのカッコ良さを表現したいのは分かりますが、だからといって車を投げ返されたストームが飛んできた車を見て「ヒィッ!」と萎縮する演出を挿しこむのが全く理解できない。かつてはハル・ベリーが演じたほどの人気キャラ・ストームが、ちょっと反撃されただけでビビってしまう、その演出手法には激しく落胆しました。

マグニートーがアポカリプスに従い、裏切る展開もロジックが薄すぎてドラマ性がまったく感じられない。また次の作品でも悪そうな奴と仲間になって、ちょっと反省して改心…そんな展開を見せられるのかと思うと、マグニートーのカリスマ性も地に落ちたなと感じました。演じてるマイケル・ファスベンダーの演技はものすごい迫力なんですけどね。

マグニートー改心、サイロック改心、乗っ取られそうだったチャールズも発想の転換で反撃、X-MENたちは能力覚醒。その流れでアポカリプスを倒してバンザーイ!

怒涛のクライマックス!にしたつもりかもしれませんが、個人的には「ひどいものを見た…」としか思えなかったです。窮地に陥ったチャールズが「HELP ME... HELP ME!!」とどストレートに懇願してる姿とか「なんじゃそりゃ」とドン引きでした。過去作のセリフを伏線として引っ張り出してくるのもくだらない。

とどのつまりこの映画は、シリーズのファンとかX-MENのファンを喜ばせるための小細工ばかりが目立って、1本の映画としての完成度を二の次三の次にした脚本になってるように思います。

突然変異のミュータントが世界に現れる、それによって生まれるドラマ。という設定自体が限界に来ているように思うのですが、それなりに興収は稼いでいるみたいなのでシリーズとしては続くのかなあ? ただし前作から比べると世界興収で300億円ほどダウンしてます。コケてはいないけども…

変身できるだけでやたらと持ち上げられているミスティークも、中の人であるジェニファー・ローレンスが「もうこの役は演じない」と宣言したらしいし、ウルヴァリンのヒュー・ジャックマンも同じく勇退。主要キャスト陣にも見限られてるんじゃないですか?

ルッソ兄弟が生み出したシビルウォー:キャプテンアメリカの圧倒的な完成度と比べると、目も当てられないような出来だった今作。これはどう考えてもオススメできません。同じMARVEL COMICS原作とはいえ、アベンジャーズがディズニーで、X-MENは20世紀フォックス。そこでも差が付いてしまうんですかね。

もっと具体的にダメさを掘り下げたいところですが、こんなところで勘弁を。