駅に着くと、新幹線のホームへ続く階段を上った。

たくさんの人が行きかう中、彼の姿はすぐに分かった。

大きなカバンを肩からかけて、伏し目がちに壁の方を向いている。

時折思い出したように周りを見る。

 

すこし立ち止まって、彼をみつめた。

 

悪いことをしている子供みたいな彼を目の当たりにすると、

わたしよりよっぽど不安がっている気さえする。

 

ふぅ、と息を吐いて、足早に向かっていった。

 

 

おはよう!ごめんね~待たせちゃって。

 

 

努めて明るく言ってみる。

 

 

彼は驚いたように私を見つめて、

 

しばらく黙っていた。

 

おはよう。あそこまではやっぱり別々に行こうか。

 

 

思い出したようにあわてて切符を渡された。

 

あそこまでというのは新幹線の座席まで、という意味を指すのだろう。

 

うん、じゃああとでね。

 

 

私はさっと切符をうけとると、何事もなかったように足早に改札に向かった。

 

途中でなんどか振り返ったけど、

彼の姿はどこにも見えなかった。