小田眼科ニュース医心伝信 2007年5月号/「なぜ、今、医師不足なのか」の話 | 仙台市青葉区八幡2丁目・小田眼科ニュース

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小田眼科ニュース医心伝信
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第208号 2007年5月号


 最近、医師不足が深刻な社会問題になっています。その理由の一つに医療が高度になり専門性が進んだことがあります。昔は内科医が子どもの病気を診るのは当たり前でした。また、かかりつけ医がいて風邪を引いても、お腹が痛くても、怪我をしても、一家中が一人の医師の治療で事足りたのですが、最近は、そうはいきません。高齢になるといろいろな臓器に不調が出るために、必然的に複数の病院通いをすることになります。これが病院の混雑、待ち時間の長さ、勤務医多忙の原因になり「健康でなければ病院にかかれない」という矛盾した状況を作っています。

 今月は「なぜ、今、医師不足なのか」の話です。

 戦後間もない昭和22年に医師インターン制度が始まりました。それまでは医学系の学校を卒業するとすぐ医師になったのですが、インターン制度が始まってからは卒業後1年間、いろいろな科を回って実地に勉強し、その後、国家試験を受け、それに合格して初めて医師免許を得ることになりました。インターン生は実地訓練生であって、学生ではなく医師でもないと身分が不安定であったばかりでなく、無報酬でした。このような状態に医学生やインターン生が大規模な反対運動を起こし、昭和53年にインターン制度は廃止されました。

 この結果、医学部卒業後すぐ医師にはなれましたが、学校を卒業しただけでは医師としてはまだ半人前です。経験を積んで、徐々に一人前の医師として育つのです。それで、多くの新卒医師は大学医局などに所属して勉強し、そこから先輩がいる地方の病院などに派遣され、実地に修業をして一人前の医師として成長しました。

 また、インターン制度がなくなってからは、卒業してすぐ専門科の勉強に入るため専門科の知識は豊富で深くなり、専門医としては優秀な医師に育つのですが、他科の臨床経験に乏しいことが問題点として指摘されるようになりました。インターン制度の良さが見直されるようになったのです。

 これを改善するために、平成16年に「新・医師臨床研修」制度が始まりました。幅広い診療能力を身につけたプライマリケア医養成を目的とした制度です。インターン制度と違い研修生にはある程度の給与が支給されますが、それと引き替えに、研修期間中にアルバイトをすることが禁止されました。

 それまで、卒業したばかりの若い医師は大学病院などで当直や宿直、休日出勤、救急医療、それに地方病院での診療などを行い、医療のかなりの部分を担っていましたが、そのような下働きがすることが禁止されたのです。このために大学病院でも医師が不足し、やむなく大学病院に医師を呼び戻しました。これが、地方の医師不足につながりました。

 また、最近は、医療が高度になり専門的知識が要求されるようになりました。以前には内科・小児科を標榜する医師は珍しくなかったのですが、今は少なくなりました。昔は胃、心臓、肺、肝臓、腎臓、糖尿病などの病気を、一人の内科医が診療をするのは当たり前でしたが、今はそれぞれの専門医が診療をするようになりました。

 さらに、外科の分野では以前にはできなかった難度の高い手術が日常的に手がけられるようになり、これで多くの命が救われています。しかし、一つの手術に長い時間がかかるようになり、麻酔科医や複数の外科医など多くの人手を要するようになりました。医師の需要は増えるばかりです。

 最近は、女性医師が増えています。子育てなどで、中途で退職する女性医師の存在も医師不足の要因となっています。

小田眼科医院

理事長 小田泰子