■先天性眼瞼下垂の主な手術方法
先天性眼瞼下垂の治療では、まぶたの状態や筋肉の機能に応じて、主に以下の2つの術式を選択します。
眼瞼挙筋前転術(がんけんきょきんぜんてんじゅつ)
まぶたを持ち上げる筋肉である挙筋の機能が一定程度保たれている場合に適応となります。挙筋を短縮し、前方へ移動させることで、まぶたを引き上げる力を高める方法です。
前頭筋吊り上げ術(ぜんとうきんつりあげじゅつ)
挙筋機能が著しく低下している重症例に適応されます。太ももや側頭部の筋膜、あるいは人工素材などを用いて、額の筋肉である前頭筋の力をまぶたに伝え、開瞼を補助する方法です。
■当院での治療方針
成人の先天性眼瞼下垂症に対しても、基本的には上記2つの術式を適応しています。そのうち重症例では、ご自身の組織を用いる側頭筋膜移植術を選択しています。
側頭筋膜とは、耳の上方にある薄い筋膜組織のことで、移植材料として使用することが可能です。自己組織であるため、なじみやすいことが特徴です。
■今回の手術経過と結果
本症例では、右の先天性眼瞼下垂は右顔面の発育不全に伴うものと考えられました。実際に右下顎にも発育不全が認められたため、右側の側頭筋膜も十分に発達していない可能性が術前から想定されていました。そのため、移植に使用する筋膜は左側から採取しています。
また、側頭筋膜移植術を行うことで右眼に二重のラインが形成されるため、もともと一重であった左眼との左右差が目立つ可能性がありました。そこで、バランスを整える目的で、左眼には同時に切開式二重形成術を行いました。
■現在の状況
側頭筋膜移植術では、多くの症例で遅れ目現象がみられます。本症例でも軽度ではありますが、その所見が確認されています。
遅れ目現象とは、下を見たときに上まぶたが眼球の動きに十分追従せず、まぶただけがやや取り残されたように見える状態を指します。そのため、患者様には下方を見る際、目線だけを落とすのではなく、頭ごと軽く下げて視線を合わせるようご説明しています。
■今後についてと注意点
眼瞼下垂の手術は、重力に逆らってまぶたを持ち上げる必要があるため、非常に繊細で難易度の高い治療です。可能な限り左右差を少なくするよう丁寧に調整していますが、筋肉の機能差や組織の個体差により、わずかな左右差が残ることがあります。
その点については、あらかじめご理解いただけますと幸いです。

