「あらまぁ、何なの・・そのやつれた顔は貴子さん。正夫ちゃんの食事の支度は

   大丈夫なの?私も佐久子ちゃんも妊娠で寝込むとか具合が悪いなんてありませ

   んでしたよ。

   だらしのないこと・・・」

 

ツネは顔を見る度に言い放った。

亜子、麻子を預かることは、只の一度もなかった。どの口が言うである。

亜子の幼稚園のママ友に助けられたことだろうか。

 

そんなある夜のことだ。

正夫が言いにくそうに口を開く。

 

   「おふくろがね、病院に頼んで性別を診てもらえないか?って言ってるんだ

    その・・・あれだよ、親父もおふくろも女の子ならばもういいんじゃないか

    ??その方が・・・小野寺家の将来を考えた時にはさぁ。」

 

奈落の底に落ちていく感覚に支配される貴子だった。

 

貴子  28歳  夏の終わり

 

院長は言った。

 

    「小野寺さん、羊水検査をすれば性別は判りますよ、しかし流産の危険もあ

     るし出来ません。ご主人の両親をお連れになられませんか?私が話しまし

     ょう。」

沈黙が続いた。

 

    「仕方ありませんね。ご主人の要望があるからでなく、私は奥様を半年以上

     診察してきました。それだけに、これ以上精神的にも身体的にも負担をか

     けるのは危険と判断しました。経腟プローブをしましょう!」