3つの視点
マネジメントサイクル、PDCAを早く回すことが管理者の仕事ですが、その前に、自分のチームや事業がどんな状況下にあるのかということを十分つかんでおかなければ、効果的とはいえません。
そこで、R-PDCA・・・PDCAサイクルを回す前に、状況をつかんでおくことが必要です。広い意味での「リサーチ」を先に行い仮説を立てます。
これが、いわゆるR-PDCAといわれている事です。
広い意味でのリサーチとは、市場調査分析に時間をかけるということではなく、視点が大事という意味あいを含んでいます。
その視点とは次の3つです。
(1)虫の目・・・細かなことを見落とさない。専門的な視点で深く視る。より現場に近い視点を持つ、などといったことで、「神は細部に宿る」といわれるように、真実が往々にして隠されています。
(2)複眼・・・一方向からだけでなく、様々な角度から多角的に視る。顧客の視点、上司部下の視点、他部署の視点、株主や顧客のその先の人の視点など、視方によって、多様に見え方が変わってきます。
(3)鳥の目・・・より離れた位置から見る、大局的視点です。川は近くで見るとどこからどこまで、どのようにうねっているのか分かりませんが、はるか上空より見ることができれば、川の流れ、トレンドはつかめます。
これら3つの視点を持ったうえで、改めてプランニングをしてみることで、マネジメントサイクルはより効果的に回すことができます。
この3つの視点を持つよって、これから何をしなければならないのか、何を優先すべきか、といった本質的な問が生まれ、結果、よりよい解が見いだすことができるでしょう。
視点を意識して自らが変えることで、客観的になり、いろんなことが観えてきます。
起業家・経営者・事業家・資本家
「起業家」はこれまでになかった新しい価値を提供して、社会を変えていく人。
「経営者」は全体最適を目指して人を含めて経営資源をマネジメントする人。
「事業家」は事業を興して産業や雇用を生んでいく人。
ちなみに、「資本家」は最も効率的な資産運用を考えていく人。
これら4つの役割を担う人たちが相まって、経済活動をしていくことによって、
結果的に社会をよりよくしていくことが可能になります。
これまでの権威や既成概念を壊したいという人は「起業家」向き。
人が好きで、人の可能性を引き出したいというひとは「経営者」向き。
ビジネスを多角的に捉えて最適な解を求められる人は「事業家」向き。
投資とリターンで、結果的にお金が増えることが好きなひとは「資本家」向き。
リスクを冒したくない人は「起業家」には向いていない。
人が嫌いな人は「経営者」に向いていない。
複数の利害関係の中で、ベストな解を求められない人は「事業家」には向いていない。
お金儲けだけが人生ではないと思う人やマネーゲームが嫌いな人は「資本家」には向いていない。
このような向き不向きがあります。
少なくとも「経営者」は人嫌いですと、居心地が悪いものです。
あなたは、どのタイプでしょうか。
失敗耐性
徳川家康が自らの失敗を忘れず、慢心を戒めること、後世にその戒めを伝えるよう、描かせたとされる「三方ヶ原戦役画像」
http://bunka.nii.ac.jp/heritages/heritagebig/18704/0/1
戦国時代ではありませんが、相手のある戦いでは、百戦全勝は難しく、むしろ戦わないで生き延びる方が優等な戦略であると言われています。
しかし、シェアを伸ばしてナンバーワンの地位を築くことを諦めてしまっては、生き延びられません。
やはり「常在戦場」のつもりで常に新しい次の新たな一手を打ち続けなければなりません。
10個の策を打ってもあたるのは1個程度のこと。新たな一手はほとんどの場合失敗します。
チャレンジと失敗はつきもの。イチロー選手だって、7割近くは失敗します。修正しながら、アベレージを維持します。
自転車乗りの練習もそうです。転びながら乗り方を身に付けていきます。
問題は、失敗から学びとることができるかどうか。
転んでも立ち上がり続ける「失敗耐性」を持ち合わせているかどうか。
失敗から学ぶことが日常となっている組織やリーダーは強いものです。
そういう組織は「失敗を許容する風土」「失敗を共有し失敗から学ぶ仕組み」があります。
そしてもう一つ大切なことは個々人の「失敗に気づく感性」。
今週1週間、あなたはいくつ失敗しましたか?その失敗から何を学びましたか?
もし、今週1つも失敗していない!ということであれば、それは気づいていないだけかもしれません。
成功は、失敗の積み重ねの上にある、試行錯誤の末に勝ち取るものなのです。
評論家は「もっとこうすればよかったのにこうしなかったから失敗した。」と失敗の要因を事後的に挙げたがりますが、実務者はそんなことは言っておられません。「この失敗から何を学ぶか」「次はどうしたらいいか」と常に前のめりで考えています。
け躓いても、常に次の足を前に踏み出す余力だけは持って進んでいきましょう。そうすれば、着実に前に進んでいきます。
接触効果
人は誰かと月に1回1時間面談するより、月に2回15分でもいいから面談したほうが、好感度は4倍になります。
面談は時間ではなく、接触回数がモノをいい、その効果は回数の二乗。
営業や販売の場面で、忙しい相手にアポを取り、1時間も売込みさせられたら、よほど情報の価値がない限り二回目は会ってくれません。
時間の価値が分かっているベンチャー企業は、「お金を生まない商談」は1分でも勿体ないと思うものです。
自分は何者であるか。
自分たちの商品が顧客にどのような価値を提供することができるのか。
端的に案内し、あとは顧客の創造性を引き出すような問いかけをする。
それができれば、最初のアポイントは十分です。
その後、「必要な時に」「思い出してもらえる」ようにするための『接触』をマネジメントしていくことが営業の仕事となります。
誰もが、知らない相手には警戒し、冷淡になります。
接触頻度が高まれば、高まるほど、二乗の法則で好感が増します。
モノや価値ある情報など、何かを提供することで、「お返し」がしたくなります。
これらの事をマネジメントし、最初のコンタクトから次回以降の接触をデザインできることがよい営業なのでしょう。
反応がない、商談につながらないから、ノンターゲットとして、接触をこちらから絶ってしまうことは、避けなければならないことです。
DM、メルマガなど、相手に時間的、精神的負担をかけないように、「忘れられないよう」仕組みを作ることが必要です。
「中(あ)てる」…対象との距離感覚
人の問題で悩んだり、商品開発が上手くいかなかったり、組織がまとまらなかったり・・・。
狙いと結果の違和感を克服し続けなければいけない日常の中で、
眼前の課題に対してどのような姿勢で臨むべきなのでしょうか。
ドイツ人哲学者オイゲン・ヘリゲルが大正13年から昭和4年まで、旧東北帝大で教鞭をとる傍ら、
弓術の師範阿波研三氏に5年間師事した経験を振り返り講演した講演録。
暗闇の中で、60メートル先の的(まと)に蚊取り線香を立て、的がほぼ見えない状態で、
1本目の矢を命中させ、2本目の矢も、1本目の矢の筈(弦をかけるくぼみ)に的中させた阿波先生に、ドイツ人らしい論理的探究心で迫ったとき、阿波先生がヘリゲル氏に伝えた次のくだりが心に残ります。
「私のやり方をよく視ていましたか。・・・・私が目をほとんど閉じていたのをあなたは見ていましたか。私は的が次第にぼやけて見えるほど目を閉じる。すると的は私の方へ近づいてくるように思われる。そうしてそれは私と一体になる。これは心を深く凝らさなければ達せられないことである。的が私と一体になるならば、・・・矢は有(う)と非有(ひう)の不動の中心に、したがってまた的の中心にある在ることになる。矢が中心にある・・・それゆえあなたは的を狙わずに自分自身を狙いなさい。・・・」(・・・省略)
課題を克服し、目的を達成する上で、必要な感覚--対象物との当事者の間隔意識、一体感、密着感の感覚を醒まさせるような表現です。
そのほか、不思議な表現がたくさん出てきますが、これを禅的というのでしょうか。
文庫本(岩波書店)のほうが読みやすいですが、単行本(福村出版)のほうは、より詳述で説明的です。
ちなみに、この本はスティーブ・ジョブスが愛読した本だとされています。
生存領域を究める
事業を成長させるためには、絞り込むことが最も効果的で、安易な拡張は、慎まなければなりません。
絞り込めば絞り込むほど、尖った強みになり、突破力も増幅していきます。
絞り込む視点は次の3つです。
(1)WHO 【顧客は誰か】
どのようなときに、どのような痛みを覚えている人なのか?解決したくても解決しきれない悩みや満たしえない欲求は何か?
など、ニーズやウォンツの具体的なシーンをより明確にします。
(2)WHAT 【何を提供するのか】
商品、サービス名ではなく「便益」こそが、代価を支払ってでも得たいものです。
ですから、それを得た時の感情までも表現できると良いでしょう。
(3)HOW 【どのように提供するのか】
その商品やサービスなどを知り、注文し、支払い、使用し、その後のことまで、一連の提供するプロセスのデザインです。
商品やサービスが同じレベルでも、ここでの差別化こそが、強いビジネスモデル作りにつながります。
インシュリン注射を痛がる子どものために、
蚊の刺すような程度しか感じない、極めて細い注射針を、
町工場であった岡野工業は培ってきたプレス技術により、完成させた。
大手医療機器メーカーと手を組み、
多くのお子さんと親御さんの痛みを解消することができた。
・・・このような事業こそが強い事業と言えるのでしょう。
小さな企業こそ、生息領域、事業領域を絞り込むことですね。
創造的に価値を生む
1トンのオレンジを売ろうとしている、Oさんがいました。
そのオレンジを買いたいという人が2人同時に現れました。
仮にJさんとMさんとしましょう。
Oさんは少しでも良い条件の人に売ろうとします。
Jさんか、Mさんか、二者択一です。
Jさんも、Mさんも何とか相手に取られないようと必死で金額等の条件を提示します。
しかし、Oさんは、はたと気が付きました。
「いったい何故この2人は私のオレンジを買いたいと思っているのだろう。」
よくよく尋ねてみると、二人の目的はこうです。
Jさんはそれで、オレンジジュースを作るつもりでした。
Mさんはそれで、マーマレードをつもりでした。
Oさんは、それならば・・ということで、二人に売ることにしました。
Jさんには中身を、Mさんには皮を。
結果、Oさんも(JさんもMさんもそこそこの値段で買ってくれたため、)より多くの代金を受けとることができました。
そればかりではなく、JさんもMさんも想定より安く原料を仕入れることができました。
交渉は1対1の2者間で行うと、どちらかが負けてどちらかが勝つような結果に陥りがちで、後々問題を引きずったりしますが。
3者間で相互に求め合うものを分かち合うことができると、それまでになかった新たな価値が生まれる場合もあります。
創造的交渉とはこのようなことかもしれません。
アイデアや交渉に煮詰まってきたら、3人目の当事者を引き込むことで、創造的な結果、価値を生むことができるかも知れません。
季節は春。三人の日と書きますという歌もありますが。三人ともに陽が当たるような解決策で、乗り越えられる課題がクリアになったりします。
三人寄れば文殊の知恵、三方よし、とはよく言ったものです。
交渉術とか、ディベートとかもスキルとしては大切なのかもしれませんが、日本の先人の知恵には頭が下がる思いがします。
ブランドとコミュニケーション
何で道を拓くか
「僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る・・」高村光太郎「道程」の詩にあるように、
世の中に起業家や起業家的視点で新しい価値を提供できる人が一人でも多く生まれるといいと常に念願しつつ活動しています。
新しいことに意欲的に取り組むためには、使命感や情熱が求められますが、時には意義や使命を見失い、スランプに陥ることもあります。
そんなとき、今一度自ら次の4つの問いをしてみるのもいいでしょう。
(1)自分たちがしたいことは何か(ワクワクすることは何か)
(2)自分たちができそうなことは何か(何らかの力を得ればできそうなことは何か)
(3)それは人のためになることか(誰かの痛みを解決したり、笑顔にできることか)
(4)それは、自分たちにしかできないことか(人と違うことか)
これらの問いを掛け合わせた先に、あなた独自の、新たな使命に気づくことができるかも知れません。