◆2009年に期待したいGPGPU
現在、グラフィック分野は、NVIDIA、AMD(ATI)、Intelの3社でシェアの大半を占める。
このうち、GPGPUに対応した製品をすでに持っているのはNVIDIAとAMDの2社だが、
それぞれのモデルに互換性がなく、アプリケーションは個別に対応するしかない。
3Dグラフィックにたとえると、GlideやS3dなど、各社が独自のAPIを提供していた。
GPGPUの標準的なAPIセットになりそうなのは、WindowsではDirectX 11、
その他のOS(Mac OS X、Linux等)ではOpenCLだと思われる。
が、次期WindowsであるWindows 7にビルトインで提供されるのはDirectX 10.1であり、
DirectX 11はWindows 7のリリース後の提供になる見込みだ(Vistaにも提供される予定)。
Windows 7のリリース時期は、どんなに早くても2009年末あたりだと考えると、
DirectX 11が2010年より前に提供される見込みはほとんどない。
言い替えれば、DirectX 11という標準に基づいたGPGPU対応アプリが登場するのは、
2010年以降になる。2009年にGPGPUが技術的に話題になるとしても、
製品としてブームを引き起こすことはないだろう。
一方、Macでは次のSnow Leopard(Mac OS 10.6)でOpenCLがサポートされる。
新MacBook/ProがすべてNVIDIAのGPUを搭載することになったのも、この前触れだろう。
OpenCL自体は、特定のハードウェアに依存しない規格だが、ドライバサポート、
あるいは対応アプリを提供する際に、ハードウェアを特定できた方が、
製品を提供する側、サポートする側としては効率が良い。
だが、Snow Leopardの提供時期について、Appleの公式なスケジュールは不明。
Windows Vistaをベースに開発を行なうWindows 7に対して、Snow Leopardは
カーネルレベルからの新規開発を含むメジャーチェンジになると見られる。
Snow Leopardのリリースは、Windows 7よりも後になるというのが筆者の予測だ。
つまり標準準拠のGPGPU対応アプリが登場するのは、Macでも2010年以降になるだろう。
「中略」
CPUが提供されてから、エンドユーザーが実際に使えるようになる(ソフトが対応する)まで
時間が必要なことが、 MMXやSSEをお金がとれない技術にしてしまっている。
人は今日から使える具体的なアプリにしか、お金を払わないものなのだ。
製品寿命の短い PCでは、なおさらその傾向は強い。
もしGPGPUに一般向けのキラーアプリケーションが登場しなければ、
GPGPUもCPUのSIMD命令がたどったのと同じ道を歩むかもしれない。
ほぼすべてのユーザーが、日常的に利用するアプリにGPGPUが活躍する場を
見つけられなければ、GPGPUに投資しようというユーザーは少数派にとどまる。
SIMD命令と同じ、便利なオマケになってしまうだろう。
PGPUが広く喧伝されるようになってから、すでに2年あまりの歳月が経過した。
にもかかわらず、それが一般にどれだけ役立つか、具体的に語られることは多くない。
10月末に開かれたPDCでも、GPGPUがWindowsをどう変えるのか、
Microsoftは語らなかった。何か秘めたプランがあるのなら良いのだが。
そういう意味で筆者が期待しているのはやはりAppleだ。
OpenCLを提唱するとともに、NVIDIAのグラフィックスをすべてのノートタイプの
Macに搭載するといった、目に見える形の「準備」を行なっている。
間もなく発表されるであろう新iMacも、NVIDIAのグラフィックスが採用されると思われる。
現時点ではGPGPUを活用した標準アプリケーションどころか、
Snow Leopardの概要すら明らかにしていないAppleだが、秘密主義の同社のこと、
「準備」の裏付けになるような何かで、アッと驚かせてくれるのではないかと期待している。
(元麻布春男の週刊PCホットライン「GPGPUの2009年を占う」から記事抜粋)