アメリカのエコシステム(特にシリコンバレー)の強みは、「間違った方向へ全力で走り、すぐに修正する」ためのコストを許容できる点にある。
アメリカでは1つの課題に対しアプローチ A, B, C の3チームを同時に立ち上げ、一番早かったものに集約させるような「資本の暴力」が可能。日本では予算が限られているため、まず「どれが正解か」を会議で詰め、1つのルートを慎重に進む。結果として、試作の回転数(イテレーション)で数倍の差がつき、ブレークスルーの速度で負けてしまう。
アメリカでは、スタートアップの無茶な試作を「高単価・短納期」で引き受けるプロトタイプ専門の業者や、社内のガレージ文化が確立されている。日本では、高度な技術を持つ町工場は多いが、それらは既存の大企業のサプライチェーンに組み込まれており、実績のないスタートアップが「明日までにこれを作ってくれ」と一気呵成に動くための柔軟なリソースが不足している。
「人を雇えない」の裏側には、単なる給与額だけでなく、「そのプロジェクトが失敗した後のキャリア」の保証の差がある。アメリカでは、100億円を調達し、一気に100人のトップエンジニアを集める。プロジェクトが解散しても、その経験は市場価値として評価され、次の「一気呵成」な現場へ流れる。日本では、終身雇用的なマインドが残り、優秀層がリスクを恐れて流動しない。結果として、一点突破したい時に「その分野のスペシャリスト」を即座に揃うことが困難。
日本は銀行融資や慎重なVCが多く「確実に利益が出るか」「無駄がないか」を問う。これは「効率的」ではあるが、ブレークスルーに必要な「狂気的な投資」を阻害する。アメリカは「勝者総取り(Winner Takes All)」を狙うため、「他が追いつけない速度で市場を焼き尽くす」ための資金を投下する。