Huddlestonの英文法が難しく感じられるのは、知識量の問題ではなく、私たちが慣れ親しんだ「一義的分類」の発想そのものを手放す必要があるからかもしれません。
量子力学にはSuperposition(重ね合わせ)という概念があります。Huddlestonの The Cambridge Grammar of the English Language は、その Superposition の概念と非常によく似ているように思われます。もちろん比喩としてですが。
CGELでは、動詞は最初から「自動詞」「他動詞」といった一つの型に固定されているとは考えない。たとえば fail や refuse はto 不定詞節と結びつく複数の構文的可能性を同時に持つ(重ね合わせの状態)動詞です。
The engine failed to start.
The door refused to open.
これらの文では、fail や refuse は「目的語を取る動詞」として扱われるのではなく、to 不定詞節を補部として連結する catenative verb として分析される。つまり、文を実際に観測し(構文を分析し)た結果として、その構造が確定します。CGELの英文法はこのように、分類を先に決めるのではなく、実際の文を観測することで構文が定まる体系であり、この点で量子力学の「重ね合わせから観測によって状態が確定する」という考え方によく似ているのです。