"stop smoking" は必ずしも「永久的に禁煙」という意味ではなく、文脈によって「その場で吸うのをやめた」という意味にもなるからです。
日本の学校英文法では、He stopped smoking. の "smoking" は動名詞(名詞的用法)であり、"stop" の目的語になっている。というふうに教えられるのが一般的です。そして、「動名詞=名詞」という前提から「名詞 'smoking' をやめた ⇒ 禁煙した」という解釈がされ、「彼は禁煙した」と訳すように教えられます。
しかしCGEL(Huddleston & Pullum)の現代言語学的記述文法では、この見方は不完全・誤解を招くものとされます。即ち、"smoking" は名詞ではなく、non-finite clause(非限定節)の一部であル、すなわち"stop" は catenative verb(連鎖動詞) であり"stop smoking" 全体で「〜するのをやめる」という意味の 動詞句を構成する、と考えます。このときの "smoking" は「動名詞(gerund)だからと言って「名詞だから目的語である」とは考えません。
1)喫煙習慣をやめた(Generic reference - 永続的な禁煙)
文脈と例文:
健康診断での会話:
Doctor: "How's your health recently?"
Patient: "Much better! He stopped smoking six months ago and feels great now."
(彼は6ヶ月前に禁煙して、今はとても調子がいいです)
家族の話:
"My father stopped smoking when I was born. He didn't want to harm the family."
(父は私が生まれた時に禁煙しました。家族に害を与えたくなかったのです)
健康上の理由:
"After his heart attack, he stopped smoking completely and started exercising."
(心臓発作の後、彼は完全に禁煙して運動を始めました)
意志による決断:
"John stopped smoking on New Year's Day and hasn't touched a cigarette since."
(ジョンは元日に禁煙して、それ以来タバコに手をつけていません)
→ これらの例では全て「喫煙という習慣全体」をやめたことを表しています
意味2:その場の喫煙行為を中断した(Specific reference - 一時的な中断)
文脈と例文:
突然の雨:
"It started raining heavily. He stopped smoking and ran under the roof."
(激しい雨が降り始めました。彼はタバコをやめて屋根の下に駆け込みました)
電話がかかってきた:
"When his wife called, he stopped smoking and answered the phone immediately."
(妻から電話がかかってきた時、彼はタバコをやめてすぐに電話に出ました)
禁煙標識を見て:
"He saw the 'No Smoking' sign and stopped smoking right away."
(禁煙の標識を見て、彼はすぐにタバコをやめました)
火災警報:
"The fire alarm went off. He stopped smoking and evacuated the building."
(火災警報が鳴りました。彼はタバコをやめて建物から避難しました)
上司が来た:
"When the boss appeared, he stopped smoking and quickly hid the cigarette."
(上司が現れた時、彼はタバコをやめて急いでタバコを隠しました)
→ これらの例では全て「その瞬間の具体的な喫煙行為」を中断したことを表しています