「なんでこんなところに来ちゃったんだろ・・・」 | 「地球探検隊」中村隊長の公式ブログ【ビタミンT】

「なんでこんなところに来ちゃったんだろ・・・」

   型にとらわれるよりも、
   「伝える」という目的を達成することのほうが遙かに重要。 
       メルマガ「平成進化論」鮒谷周史

「あなたの体験談を本にしたい!」

「真剣勝負は経験を資産にする…」

隊員たちから続々本の原稿が届き始めた。

このmomoの原稿に涙した・・・。オレが求めていた五感を刺激する匂うような文章・・・
こんな原稿をたくさん集めたい!

「なんでこんなところに来ちゃったんだろ・・・」

デリーの空港から一歩出た瞬間、周りの景色と匂いに圧倒され、立ちすくんでしまった。息をするのが嫌になるほど空気は汚く、噂どおり目つきの怪しい物乞いや野良犬が私の目の前をうろうろしている。痩せた女性が着ているサリーはもう何年も洗っていないのかと思うほどに薄汚れているし、髭の生えたインド人男性の顔はインチキくさい。インド人の話す英語は訛っていてまったく聞き取れない。2週間こんな場所を旅するのか・・・来るべきじゃなかった・・・。想像していたよりも凄まじい光景は、安全で清潔で当たり前のように言葉が通じる日本から来た私には受入れられないものだった。そして、不安と心細さから、おもわず母へ国際電話をしてしまいそうになった。誰かの声が聞きたくって。

私が参加をしたのは、インド東部のチェンナイ(旧マドラス)から海沿いにぐるっと半周し、インド西部のゴアまで行く多国籍ツアー「Jewels of South India」。初インド旅のクセに日本人が思い浮かべるインドの風景「タージマハール」も「ガンジス川」にも行かない。「ガンジー」も「マザーテレサ」も関係ない。そもそも、インドに興味があったわけでも、ない。日常からおもいっきり離れた場所で、日本語がまったく通じない環境に数週間、身をおきたいだけだった。どうしようか考えあぐねて行き着いた結論は「自力ではいけない場所を外国人と旅をする」多国籍ツアーへ参加すること。行き先はどこでもよかった。暖かい国で楽しそうなツアーはないかと地球探検隊で貰ったパンフレットをパラパラとめくると、色鮮やかなサリーの写真に目が留まり、「Jewels of South India(南インドの宝石たち)」というワクワクするようなツアー名がついた南インドへの旅を選んだ。

学生の頃から海外旅行が好きで、今では一人旅にも慣れてきたし、旅行英会話ぐらいなんとかなる自信もあった。最近は「旅慣れた女」風に颯爽と海外の街を闊歩できるようにもなった。だというのに、デリーからチェンナイへひとりで移動する私は「鴨が葱を背負っている」様な姿だったと思う。重いバックパックを猫背で担ぎ、オドオド、キョロキョロ。海外で詐欺にあうような典型的な気弱な日本人ツーリストの姿。

旅の序盤から嫌になるくらい小さなトラブル続き。旅の開始地点チェンナイでは日本で手配したタクシードライバーが来ず、真夜中の空港で呆然としてしまった。この日、空港で呆然とするのはこれで2度目だ。地球探検隊に電話をして確認しようと思いついたが、深夜の日本に電話をしたところで、誰も電話口に出るわけがない。仕方ない・・・と、なるべく人の居る場所に座り込み、これからどうしようかとぼんやり考えていると、わらわらとインド人が寄ってきて、あっという間に囲まれてしまった。南インド人は黒人のように肌が黒く、夜の闇のなかでは真っ白な目と歯がギラギラと宙に浮いているように見える。恐怖を通り越して、なんだかこの状況が可笑しくなり始めた私はニヤニヤ笑いながら「Get away」と小声で言ってだーっと、その場から走り去った。

でも結局、誰も追いかけて来なかった。

彼らは、夜の空港でポツンと座り込んでいた女性が心配で集まってきただけだった。安全で清潔な国から異次元の国へ来てしまった私の神経は最高潮に張り詰め、目の前の光景も状況もすべて悪い方向に考えていた。やっぱり、こんな旅に申し込むんじゃなかった。2週間も神経が張り詰めた状態じゃ身が持たないよ・・・。泣きそうになるのを必死でこらえて、タクシーが来るのを待った。

1時間ほど待つと「家で仮眠していたら遅れちゃったよ~」と白い制服を着たインド人が笑いながら現れた。もう、怒る気にもならず、すぐさま、長距離の移動で疲れた体と、極度の緊張で疲れた頭をタクシーに乗せ、シートにすっぽり体を沈めて、真っ暗なチェンナイの町を眺めながら「これが、インドなんだろうな」。そう、思った。

つづく・・・