「恐怖のアイス・クライミング(1)」
08:30 ベースキャンプから橋を渡ってバスに乗り込み、ラフロードを揺られること15分。5マイル先にオフィスがあった。そこで簡単な説明を受け書類にサインして出発!登山靴とアイゼンを持って3マイル先までハイキングをした。
なかなか氷河に近づかない・・・。おどけてみせるガイドのベニー!
ようやく氷河に辿り着いたときは汗ビッショリだった。ここで、登山靴とアイゼンに履き替えアイスウォーク。登山靴、アイゼン、ハーネス、グローブ、サングラスすべて無料レンタルできるようになっていた。
氷河が今にも動き出して迫ってきそうだ・・・。
いよいよアイス・クライミング・・・
ランチを食べて1回目のトライ。初回からスタスタと登っていく隊員さとし。カッコいいぞ!
「高所恐怖症、けど、そんなの関係ねえ!」くらいの気持ちで挑む。
左横には滝が勢いよく流れ落ちていた。なぜか滝を追って下を見てしまうオレ。高所恐怖症もだいぶ克服してきていると過信していた。下を見た途端、体に緊張が走りパニックになった。目の前には垂直の氷壁・・・
まずアイゼンの先端、4本のツメだけで体重を支えることが、頭で理解できなかったのだ。ノドはカラカラになり、足はプルプルと震えた。恐怖心から腰も退けて余計な体力を使ってしまう。怖いから思いっきりピッケルを氷壁に突き刺す。今度はそれが抜けない・・・焦れば焦るほど恐怖の深みにハマるオレ。
全身の体力が消耗していく・・・。早く登り切ろうとピッケルを遠くへ遠くへと突き刺し腕が伸びきる。ますます腕に力が入らない。それでも腕の力に頼ってしまう。もう体が動かない・・・。
思わず「Give up! Down please!Down please!」と必死に叫ぶオレ。カッコ悪すぎ!
ところが、下にいるガイドが「You can do it!」と下ろしてくれない。
自分で限界だと思った先に、いつも楽しいことが待っている・・・。今までの小さな成功体験を経験してきたオレの内なる声がきこえてきた。「やれる!まだまだ行ける!てっぺん目指してやるだけやってみろ!これで下りたら、きっと後悔する・・・」
仲間の声援が飛ぶ・・・「隊長、頑張ってぇ~!」
全身の力を振り絞って、一歩一歩小さく刻んで頂上へ!疲れ切って達成感すら感じない・・・。乾いたノドに何かがつかえて吐きそうな感覚だった。
2回目、「やるかやらないか・・・」自問自答する。
嫌なイメージを残したまま終われない。自分自身の納得するイメージに塗り替えたい。まだ腕も足もパンパンだったが、もうこれ以上はないという無様な姿、欠点をさらした後は、不思議と恐怖感が消えていた。命綱のハーネスもあるし、道具を信じて下でロープを支えるプロのガイドを信じるしかない。
「やれる!やり切る!」
自分自身に言い聞かせて自分の最速のスピードで駆け上がった。恐怖感がないと、ほとんど腕に力を入れずに神経を足に集中してリズム良く上がれた。
オレは頂上で雄叫び「おぉー、おぉー!やったー!」今度は達成感でいっぱいだった。仲間が笑顔で迎えてくれた。もうすぐ46歳になるオッサンの根性みせられたかな。下りるときは楽しささえ感じていた・・・。
私にとって最高の勝利は
ありのままで生きられるようになったこと、
自分と他人の欠点を受け入れられるようになったことです
― オードリー・ヘップバーン ―

