6年生のまゆみは、見知らぬ青年三郎の運転するトラックでいつのまにかクレヨン王国に入っていきます。そこで、まゆみは、三郎、ブタのストンストン、ニワトリのアラエッサとともに、「月のたまご」を救出することに─。それは、危険がいっぱいの未知への愛と冒険の旅だったのです。クレヨン王国シリーズ8作め。
私の人生には、一郎、次郎、三郎が揃っている。
いや、漢字こそ違うが、士郎もいる。
そのうちの三郎の話である。
三郎というのは、クレヨン王国の第三王子で、人の三分の一のスピードでしか年を取らない。
三郎は19歳の時に、12歳のまゆみに会う。
実際のところ、19×3=57歳の時に、12歳のまゆみに出会う。
中学受験に失敗したまゆみは、森を彷徨っているところで、三郎に出会う。
色々な異世界での出来事を三郎とともに経験し、一旦は三郎と離れ離れになるが、最後には結婚して子どもまでできてしまう。
このシリーズはまゆみの数年間を描いているのだ。
12歳にとって19歳はかなりの大人な上に、本当は57歳である。
光源氏もびっくりである。
自分の子どもだとしても、45歳の頃の子どもである。
現実の57歳にとって45歳なんて一昨日くらいの感覚だろう。
一昨日生まれた子どもと遂に結婚までしてしまうシリーズである。
ちなみにこのシリーズの初巻が発売された当時、作者の福永令三は58歳だったようだ。
しかし、色々な事を置いておくとしても、三郎は大変、魅力的なキャラクターで、私がこのシリーズを読んだのはまゆみと同じ12歳の頃だったが、未だに三郎の事が好きである。
何故かというとこのまゆみという女が結構、私とキャラが被っており、友達もいないし、現実に居場所が無さそうな女だからである。
そんな出来損ないの女を否定するでもなく、矯正しようとするでもなく、ただ、一緒に旅をする。
銀河鉄道999のメーテルが鉄郎とただ、旅をするような感覚に近いのかもしれない。
しかし、旅を続けているうちに、お互いが別れ難い特別な存在になって行く。
特別な存在になるのだが、年齢の壁だけでなく、まゆみはいつか自分の年齢を追い越してしまうという葛藤も三郎にはある。
その葛藤故に、安易に好きとは言えない。だが、まゆみのことがとにかく内心大好きという気持ちは溢れてしまう。
一方まゆみは、自分がいつか三郎の年齢を追い越してしまう事、そうなると三郎はもっと若い女性に気持ちを移してしまうのではないかという事に気づいてしまう。
こんなに親子以上、年が離れているのに、老化スピードが通常の1/3故に、普通の男女関係の悩みを抱いてしまう。
私の相手が老化スピード1/3でなくて良かった。
実際のところ、クレヨン王国の王妃になったまゆみは現実世界では、おそらく失踪者として処理されていると思う。
あの子、ちょっと変わってたし、周りにも馴染めてなかったから、こんな結果になってしまったことに、妙に納得しちゃった、とか言われているのだろう。
これは結局、死んでしまったまゆみみたいな女達に捧げるレクイエムな物語なのかもしれない。
20260330 10:50 一般公開
