春になると思い出す本があります。
それは「クレヨン王国 月のたまご」です。
この話は13歳のまゆみが中学受験に失敗して落ち込んでいるところに19歳の青年、三郎が現れ、まゆみを車に乗せて、いつのまにか異世界へ行き着き、そこで冒険を繰り広げるうちに二人は恋に落ちるというものです。
この三郎、その正体が、実はクレヨン王国の第三王子で、人の1/3ずつしか年を取らないという人物です。要するに本当は19×3=57歳。
私がこの本を読んだのは12歳の頃でしたが、13歳と57歳の恋に特に違和感は覚えませんでした。
精神的に成熟していて、尚且つ気持ちが若ければ、それって成立するのでは?
それと12歳は57歳がどういう歳か把握していないので、受け入れるのに何も抵抗が無いという事もありえます。
しかし、この物語、もう一人、50代の男性が出てきます。それがまゆみの父です。
この二人の50代男性の描かれ方は極めて対称的です。
三郎がキラキラした青年である一方、まゆみの父は禿げて、お腹が出ていて、年頃の娘にちょっと距離を感じている。
この対比構造は何なのだろう?と今でも思い出す度に思います。
この本の対象読者である10代前半の普通の女の子は、これを見て、どう思うんでしょうね。
私が普通かは分かりませんが、私は断然、三郎派です。ってか、恋人候補と父親だとそれは恋人を選ぶのは当たり前なんですかね?
関係が深まるとまゆみが三郎をリードしていく感じ。三郎がまゆみに引っ張られて情けない素を出してしまう感じ。
なんとも言えないくすぐったさ。あどけない少女にしか見せられない油断した顔。
これは父親との間に距離を感じて来た少女にとっても甘美といえる時間でしょう。
この月のたまごシリーズ、元々は一巻で完結の予定が、続編がかなり出ています。
最終的にまゆみは三郎と結婚して数年後、子どもをもうけます。その辺りのまゆみの心理描写は憂鬱です。
また、途中、三郎の昔の彼女で、今は憎しみに心を奪われてしまったダマーニナという魔女が出てきます。12歳の私は何だこの邪悪な魔女は!と思ったのですが、きっと実際はダマーニナとしては色々あったんでしょう。寿命が3倍あれば、親密になる女性も普通の人の3倍はいるのかいないのか。
まゆみは19歳で子供を産みますが、その時、三郎は21歳の外見。それからどんどん、まゆみだけが歳を取り、やがて…という事を考えざるを得ない設定です。
まあ、私は自分の夫が先に死ぬと思うと嫌な気分にしかならないので、夫の寿命が3倍あるとラッキーとしか思わないです。自分が60歳くらいになった時に、夫が肉体的にはまだ30代前半とかラッキーでしょ?超大事にする!