これまで一度も読んだことが無かったが、高い芸術性があると謳われることもある谷崎文学をこの機会に読んでみようと思った。

痴人が誰を意図しているか谷崎本人の真意は知らないが、主人公は容姿も思想も優れたところが無く、痴人であるように感じられた。

痴人の愛にどこか素晴らしいと思えるところは無く、ひたすら阿呆を淡々と晒し続けるのが、この痴人の愛という作品の本質であるように思えた。

このようなつまらない男の生態を緻密に書き上げる谷崎の精神構造は如何なるものなのか?

ナオミと主人公のレベルが悲しくも一致しており、人として生きることの虚しさを覚えた。

主人公の元に引き取られなければ、ナオミはもっと良い色香を纏った女になっていたのではないかと思えてならない。

主人公が36歳、ナオミ23歳で話が終わる。13歳差。

私と夫は16歳差だが、私の方がよっぽど夫を必要としているし、お互い愛し合っているような気がした。

この主人公より私の夫の方が容姿も性格も男前。その上で人格が破綻している。


え?惚気?





男女の仲を描いた作品で私が好きなのは、


おそらく何かの精神疾患の杳子とその性質に惚れる主人公を描いた古井由吉『杳子』



閉ざされた空間において究極の精神状態で人はどうなるのか?の事例

安倍工房『砂の女』

https://www.amazon.co.jp/%E7%A0%82%E3%81%AE%E5%A5%B3-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%AE%89%E9%83%A8-%E5%85%AC%E6%88%BF/dp/410112115X

ただ、この作品にエロティシズムを感じる人はあまりいないかもしれない。私は追い詰められる男に性的な興奮を覚えるので、エロティシズムを覚えたのだが。


今回は主人公の男がマゾだったので趣味が合わなかったのかもしれない。ナオミに翻弄されるのが早すぎるし、余り抵抗しないのは興奮しきれない。

次は一度挫折した濹東綺譚辺りを読む。