前に本ブログの10月10日の記事2019年9月におけるドナー登録の状況で述べたように、島根県は、2019年9月末現在の時点で、都道府県において骨髄等の提供が可能な年齢が20歳~54歳の方の1000人当たりの登録者数が18.63人であり、第1位の沖縄県の37.67人、第2位の栃木県の22.28人に次ぐ、第3位の登録率となっています(日本骨髄バンクスペシャルサイト 数字で見る骨髄バンク)。その要因としては色々なものが考えられますが、島根県及び島根県内の多くの市町村が、一般的な移植医療を推進する観点から、多くの方の骨髄ドナー登録と骨髄等の移植を推進する政策をとってきたことが挙げられると思います。
まず、島根県は、全国で唯一、2013年4月から5年間適用される「島根県骨髄バンク登録推進指針」を策定し、様々な施策を講じて登録推進を図ってきました(この点を含めて、全国協議会ニュース第262号(2014年4月1日)「自治体のドナー給付制度が拡大 島根、埼玉でも4月から」、MONTHLY JMDP 2014年4月15日号3頁参照)。現在は、平成30年度から6年間の指針として策定された二番目の島根県骨髄バンク登録推進指針に基づいて、島根県が、移植医療一般を推進する立場から、骨髄バンクにおけるドナー登録の現状と課題を分析しつつ、登録推進のために一連の施策を実施しています(具体的な施策の内容は、島根県 移植医療について(移植医療とは)に書かれています。)。
加えて、島根県では、平成24年に移植医療の普及啓発を推進するために、島根県の外郭団体である公益財団法人ヘルスサイエンスセンター島根の中に「しまねまごころバンク」を設置し、島根県赤十字血液センター、しまねまごころバンク、ボランティア団体が連携をとりつつ、最近では1年間に50回を超える献血併行型ドナー登録会を実施しています(2019年度 骨髄登録会 予定と実績報告によると、2019年4月から10月末までの7か月間に55回の献血併行型(一部は単独型の)登録会を行い、保健所での登録と併せて合計426人の新規登録を実現しています。)。また、島根まごころバンクでは、若い方の登録をすすめることも一つの目的として、臓器移植や角膜移植を含めた移植医療一般に関する出前講座「やさしい移植のはなし」を行い、啓発活動につとめています(実際に写真入りで紹介されている例として、松江栄養調理製菓専門学校すくーるブログ2015年7月3日 骨髄バンクについて勉強しました)。それから、県の予算措置に基づいて、2014年から、しまねまごころバンクはドナー休暇制度導入促進助成金制度を設けて運用しており、従業員に対して骨髄バンク事業での入通院に必要なドナー休暇として、又はドナー休暇制度を定めて有給休暇を付与した事業主に対し、付与したドナー休暇の日数(7日が上限)×7,000円で計算した額の助成を行っています。これは、金額的には一日7,000円と多くありません(全国的には事業主には1日1万円とするところが多数派です)が、すべての島根県内の事業主に適用される制度であり、とりわけ中小の事業主にドナー休暇を設けるインセンティブを与えるものとして、一定の効果を持っているように思われます(Magokoro No.20 2頁 (2018))。
一方、島根県には、宮城県・福島県・山形県・茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・京都府・岡山県・広島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県のような県による助成事業の補助はないものの、島根県の市町村はドナー助成制度を設けることに積極的であり、以下に掲げるように、鋸南町と知夫村を除く全市町村において、比較的早くからドナー助成制度を設けており、登録したドナーの方が実際に骨髄等を提供することを後押ししてきました。この県内市町村のドナー助成制度も、島根県におけるドナー登録及び骨髄等の提供を促進する方向で相応の効果を持ったと考えられます。
西ノ島町 (広報西ノ島2019年4月号12-13頁) 骨髄移植ドナー支援事業助成
吉賀町(平成31年第1回定例吉賀町議会会議録39頁) 骨髄末梢血幹細胞移植ドナー等支援事業助成制度
以上に述べたように、島根県骨髄バンク登録推進指針に基づく登録推進の方針の下で、島根県赤十字血液センター、しまねまごこころバンク及びいくつかのボランティア団体(島根県立大学の全国唯一の学生献血サークル「あかえんぴつくん」を含む)の方が連携しての積極的な献血併行型登録会が実施されており、島根県内の市町村によるドナー助成制度による側面支援などもあって、島根県における新規のドナー登録数は、かつて横ばいないし減少の傾向がみられたものの、最近では増加傾向が顕著になっています。すなわち、島根県骨髄バンク登録推進指針1頁目の表に出ている新規登録者数と、平成29年度と平成30年度は全国骨髄バンク推進連絡協議会 骨髄バンクデータから求めた新規登録数を順に見ると、平成25年度以降、平成30年度まで、新規登録者数が大きく増加していることがわかります。
平成25年度-242人
平成26年度-339人
平成27年度-402人
平成28年度-442人
平成29年度-508人
平成30年度-608人
令和元年度(1月まで)-427人
もとより、これはドナー登録数であり、実際の骨髄等の提供数ではありませんが、このような右肩上がりの増加は、島根県及び島根県内市町村が協力しての積極的な施策が一因となっているものと考えられます。