急性リンパ性白血病(特にフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病)や慢性骨髄性白血病に比べると、相対的に遅れていた急性骨髄性白血病に対する分子標的治療ですが、最近では多くの分子標的薬の登場により急速に進歩しつつあります(たとえば、6月18日には、日本で再発又は難治性のFLT3-ITDの変異を持つ急性骨髄性白血病に対する効能についてキザルチニブ(商品名ヴァンフリタ)が薬事法上の承認を得ています-がん+プラス2019年7月1日「ヴァンフリタ、FLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病で承認」)。そのような現時点における急性骨髄性白血病に対する分子標的治療の状況について、急性骨髄性白血病の遺伝子変異を専門とする先生によって一般の内科医向けに書かれた論文が公表されています。内容的には難解で、素人にはよくわからない部分が多いのですが、今日はこれにリンクします。この論文は、私を含めて様々な遺伝子変異を伴う急性骨髄性白血病の患者さんにとって、将来に向けての明るい展望を示してくれていると思います。
清井仁「急性骨髄性白血病の分子標的治療」日本内科学会雑誌107巻7号1294頁
なお、本ブログ2018年11月22日の記事骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病の新薬に関する動向において紹介した、がんサポートの取材記事である、矢野真吾監修「新薬登場で骨髄移植が不要な患者が増加する可能性 急性骨髄性白血病(AML)に対する新しい分子標的薬が次々登場予定」でも、急性骨髄性白血病に対する新しい分子標的薬が取り上げられており、こちらの方が7か月ほど前のものですが、一般向けに非常にわかりやすく書かれているので、より参考になるかもしれません。
それから、上の論文で取り上げられている分子標的薬の一部については、外国だけでなく、日本でも薬事法上承認されています。すなわち、チロシンキナーゼ阻害薬の第4番目に出てくるギルテリチニブ(gilteritinib)は、アステラス製薬と寿製薬が共同研究で開発した薬ですが、2018年11月に再発又は難治性のFLT-3変異陽性の急性骨髄性白血病に対する効能を持つ薬(商品名ゾスパタ)として薬事法上の承認がなされました(薬価は1錠19,409円と定められており、非常に高額です)。そして、ゾスパタは、2018年12月3日から販売されて日本で実際に使用されており(ツイッター上でも、「私にはゾスパタがある」として言及されています。)、再発又は難治性のFLT-3変異陽性の急性骨髄性白血病に対するゾスパタの治験において、他の救援療法と比べて有意に全生存期間を延長していることが米国がん学会での報告において示されています(オンコロ2019年4月3日「FLT3遺伝子変異急性骨髄性白血病に対するゾスパタ、全生存期間を有意に延長」、このオンコロの記事のもとになった米国がん学会での報告に関する同学会のプレスリリースとして、AACR, 4/1/2019 "Gilteritinib improved Survival for Patients with Acute Myeloid Leukemia"参照)。
それから、上に述べたように、2019年6月には今度は2番目に出てくるキザルチニブ(quizartinib)も、再発又は難治性のFLT3-ITDの遺伝子変異のある急性骨髄性白血病に対する効能を有する薬(商品名ヴァンフリタ、第一三共が製造販売)として承認されるに至っています。このヴァンフリタに関して、薬価はまだ決まっておらず、実際の臨床ではまだ一部を除いて使われていないようにみえますが、ゾスパタと比較した記事が公表されています(木元貴祥「ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序:ゾスパタとの違い・比較 【AML】」新薬情報オンライン2019年7月9日)。