同種移植の前処置など成人とは異なる考慮が必要な小児急性骨髄性白血病の治療について、2015年の第57回日本小児血液・がん学会での発表をもとにとりまとめられた、国立成育医療研究センター小児がんセンターの医師である冨澤大輔先生の総括的な論文がPDF形式で公表されています。内容はやや専門的で、難しいところがかなりありますが、それでも参考になるところもあると思うので、以下にリンクします。

 冨澤大輔「小児急性骨髄性白血病治療の現状と未来」(2016)

 なお、最後の方の小児急性骨髄性白血病治療の未来のところで、成人と同様に予後がよくないFLT3-ITCの遺伝子異常を持つ小児AMLに対する分子標的薬の新薬として、成人に対する薬として開発されたものですが、ソラフェニブ、キザルチニブ、クレノラニブ、ミドスタウリンが出てきます。このうち、キザルチニブ、クレノラニブ、ミドスタウリンは、我が国の薬事法上まだ承認されていないものです。また、キザルチニブについては、世界の第3相臨床試験での有効性の検証により、アメリカのFDAがブレークスルーの新薬として、承認手続を早めることを決定したことが報道されていますが、それでも現在未だ承認されておらず、いつ承認されるのかも必ずしも明らかではありません。ミドスタウリンは、米国の連邦薬品局により2017年3月にFLT3の変異を有するAMLに対する分子標的薬として承認されています(FDAがFLT3遺伝子変異白血病(AML)にミドスタウリンを承認)。唯一、現在、切除不能の肝細胞がん、腎細胞がんに対する薬として薬事法の承認がなされているソラフェニブ(ネクサバール)については、特に小児について、病院の倫理委員会等でFLT3の異常を持つAMLに対する投与を承認した事例がいくつかあります(東京都立小児総合医療センター 平成29年度第6回研究倫理審査委員会議事録山形大学医学部付属病院第80回研究倫理審査委員会議事録140平成27年度 岐阜市民病院 倫理審査委員会審査結果260)。投与の結果については公表されておりませんが、一つのありうる選択肢(承認された場合でも、保険外適用となり、多額の医療費がかかります)として参考になると思います。