以下では、現在758の市町村と鳥取県1県において実施されている骨髄バンクのドナー助成制度について、それらの助成対象を概観します。
まず、助成の主な対象は、骨髄バンクに登録したドナー本人です。この点で、香川県直島町の制度は、唯一、ドナー本人に対する助成がなく、ドナー本人が勤務する事業所に対してのみ助成を行っています(広報なおしま2020年4月号5頁)。しかし、このような例外的なケースを除くと、ほとんどすべての市町村がドナー本人に対する助成を行っています。以下に、助成の内容がわからない自治体も相当数あるのですが、ドナー助成を行っている自治体へのリンクを順に挙げておきます。
骨髄バンクのドナー等助成制度を実施している自治体の一覧(1)
骨髄バンクのドナー等助成制度を実施している自治体の一覧(2)
骨髄バンクのドナー等助成制度を実施している自治体の一覧(3)
骨髄バンクのドナー等助成制度を実施している自治体の一覧(4)
骨髄バンクのドナー等助成制度を実施している自治体の一覧(5)
しかし、ドナーの方が勤務先から骨髄等の提供をする際の休暇をとり易くするために、その勤務先である事業所(国・地方公共団体等を除く)に対しても助成を行う自治体が増えており、ホームページなどで事業への助成を行っていることを確認できたものだけですが、以下の市町村がドナーの勤務先事業所にも助成を行っています。
青森県-青森市、板柳町、おいらせ町、大間町、大鰐町、五所川原市、外ヶ浜町、東北町、十和田市、中泊町、野辺地町、八戸市、平川市、平内町、弘前市、深浦町、藤崎町、三沢市、むつ市
岩手県-金ケ崎町
茨城県-潮来市、大洗町、神栖市、鹿嶋市、取手市、行方市、鉾田市
栃木県-足利市、市貝町、宇都宮市、大田原市、小山市、鹿沼市、上三川町、さくら市、佐野市、塩谷町、下野市、高根沢町、栃木市、那須町、那須烏山市(広報5頁)、那須塩原市、日光市、野木町、益子町、壬生町、真岡市、茂木町、矢板市
埼玉県-加須市、神川町、上里町、行田市、杉戸町、滑川町、本庄市、宮代町、美里町
千葉県-旭市、いすみ市、市川市、市原市、印西市、浦安市、大多喜町(広報24頁)、大網白里市、柏市、鎌ヶ谷市、鴨川市、木更津市、君津市、九十九里町、佐倉市、山武市、酒々井町、白子町、白井市、匝瑳市、袖ヶ浦市、館山市、千葉市、長生村、東金市、習志野市、成田市、流山市、野田市、富津市、船橋市、松戸市、南房総市、睦沢町、茂原市、八千代市、四街道市
東京都-昭島市、あきる野市、足立区、荒川区、板橋区、稲城市、江戸川区、青梅市、大田区、葛飾区、北区、清瀬市、国立市、江東区、小金井市、国分寺市、小平市、狛江市、品川区、渋谷区、新宿区、杉並区、墨田区、世田谷区、台東区、立川市、多摩市、中央区、調布市、千代田区、豊島区、中野区、西東京市、練馬区、八王子市、羽村市、東村山市、東大和市、日野市、日の出町、府中市、福生市、文京区、町田市、瑞穂町、三鷹市、港区、武蔵野市、武蔵村山市、目黒区
神奈川県-愛川町、厚木市、伊勢原市、大井町、大磯町、小田原市、鎌倉市、川崎市、相模原市、座間市、逗子市、茅ヶ崎市、中井町、秦野市、平塚市、松田町、大和市、横須賀市
福井県-福井市
岐阜県-安八町、恵那市、大垣市、笠松町、海津市、可児市、川辺町(広報かわべ11頁)、北方町、郡上(広報郡上9頁)、下呂市、岐南町、坂祝町、白川町、高山市、垂井町、土岐市、富加町、中津川市、羽島市、飛騨市、七宗町、瑞浪市、瑞穂市、御嵩町、美濃市、美濃加茂市、本巣市、八百津町、山県市、養老町、輪之内町(広報16頁)
長野県-上松町、飯田市、池田町、大町市、伊那市、岡谷市、木曽町、駒ケ根市、坂城町、佐久市、塩尻市、下諏訪町、須坂市、諏訪市、千曲市、茅野市、豊丘村、中野市、長野市、松本市、南アルプス市、南箕輪村、御代田町
愛知県-阿久比町、あま市、安城市、稲沢市、犬山市、岩倉市、大治町、大府市、岡崎市、春日井市、蒲郡市、刈谷市、北名古屋市、清須市、幸田町(広報こうた23頁)、江南市 、小牧市、設楽町、高浜市、武豊町、田原市、知多市、知立市、津島市、東海市、東郷町、常滑市、豊明市、豊川市、豊田市、豊根村、豊橋市、豊山町、長久手市、名古屋市、西尾市、日進市、半田市、東浦町、碧南市、みよし市
滋賀県-近江八幡市
奈良県-橿原市
島根県-吉賀町
岡山県-赤磐市、井原市、岡山市、鏡野町、吉備中央町、倉敷市、久米南町、笠岡市、勝央町、瀬戸内市、総社市、玉野市、津山市、奈義町、新見市、西粟倉村、早島町、備前市、真庭市、美咲町、美作市、矢掛町
徳島県-阿南市
香川県-宇多津町、観音寺市、琴平町、坂出市、さぬき市、善通寺市、高松市、多度津町、東かがわ市、丸亀市、まんのう町、三木町、三豊市
愛媛県-四国中央市、八幡浜市(広報やはたはま16頁)、西条市、新居浜市
高知県-大豊町(大豊町広報4頁)
大分県-宇佐市、臼杵市、大分市、杵築市、国東市、玖珠町、九重町(福祉7頁)、佐伯市、竹田市、津久見市、中津市、日田市、日出町、姫島村、豊後大野市、豊後高田市、別府市、由布市
宮崎県-えびの市、川南町、小林市、高原町(広報13頁)、三股町、都城市、宮崎市
また、県レベルでは、島根県の公益財団法人ヘルスサイエンスセンター島根の中のしまねまごころバンクが、骨髄等の提供のために有給のドナー休暇を与えた県内の事業所に対し、7日を上限とする有給の休暇日数×7,000円の額の助成を行いっているほか、鳥取県も、県内のドナーの方にドナー休暇を与えたその雇用主に対し、ドナーの方に1万円以上を支給することを条件に、骨髄等の提供のための休暇1日について2万円(上限は14万円)を支給する(雇用主がドナーに1万円以上を支給しない場合には1万円を支給する)ドナーの雇用主への助成制度を設けています。これらのドナーの勤務先事業所への助成は、登録者の方が骨髄等を提供し終わるまでに約8~9日の休暇をとる必要があるために、それによる勤務先の不利益を軽減して休暇をとりやすくし、骨髄等の提供をしやすくする環境を整えるものといえます。
次に、助成の要件をみると、ドナーの方については、ほとんどの市区町村では、骨髄等の提供をした日に当該市区町村に住所を有することが要件として定められています。
さらに、山形市、高崎市、前橋市、さいたま市、川崎市、甲府市、岐阜市、松江市、高松市など全部で232ほどの市町村が、ドナーの方がドナー休暇制度のある企業や団体等に属していない(又は勤務していない)ことを、助成要件としています。ただ、ドナー休暇制度のある会社の従業員や公務員の方も、仕事を休むことで様々なしわよせや負担が生ずるにもかかわらず、ドナー休暇があるというだけで全く助成を受けられないのは公平を欠き、移植の促進という点でも問題があります。そこで、ドナー休暇制度のある事業所等に勤務する方に対しても、提供へのインセンティブを与えるために、東京都、千葉県、愛知県の市町村のように、すべてのドナーの方を助成対象とするところや、加須市や上越市のように、勤務先にドナー休暇がある場合は1日1万円と半額の助成を受けられるとする制度、ひたちなか市のように2万円の給付を受けられるとする制度があります。これに対し、ドナー休暇制度のない事業所に「勤務する」方であることを助成の要件とする、郡山市、水戸市、宇都宮市、厚木市、小田原市、鎌倉市、相模原市、茅ヶ崎市、平塚市、横須賀市、土佐清水市、福岡市などでは、非正規の従業員やフリーランスの事業者も助成を受けられますが、専業主婦・学生など無職の者は助成されないために、登録や提供を促進する効果は弱く、大きな問題が残ります。
一方、ドナーの方が骨髄等を提供した日に市区町村内に住所を有することを助成要件とし、ドナー休暇制度のある事業所に属していないなどの要件を課さない自治体も、数としてはそれよりも多く存在します。すなわち、青森県の12市町、仙台市など宮城県の7市町、福島県石川町、いわき市、会津若松市、山形県金山町、茨城県稲敷市、大洗町、群馬県大泉町、栃木県の21市町、埼玉県伊奈町、入間市、加須市、千葉県の35市町(前掲。柏市、鎌ヶ谷市、大網白里市、九十九里町、野田市では公務員を除外)、東京都の23特別区(葛飾区・練馬区は公務員を除外)と27市町、神奈川県横浜市、長岡市など新潟市の15市町、津幡町など石川県の3町、静岡県の4市町(前掲)、岐阜県の大垣市、関市、関ケ原町、高山市、飛騨市、瑞浪市、長野県上松町、池田町、岡谷市、駒ケ根市、下諏訪町、御代田町、愛知県の41市町村、三重県の5市(前掲)、大阪府の6市、京都府の全26市町村、岡山県の25市町村、奈良県の3市、和歌山県の5市、広島県尾道市、徳島県阿南市、島根県益田市、江津市など5市町、香川県観音寺市、小豆島町、東かがわ市、松山市など愛媛県の8市、福岡県大木町、みやま市、柳川市、大分県宇佐市、大分市、国東市、日出町、熊本県宇土市、美里町、宮崎市など宮崎県の7市町等約350の市区町村が、上記の要件の下に、提供時に自治体に住所を有することを要件としてドナーの方に広く助成を行っています。