慢性骨髄性白血病(CML)については、昨年11月2日に、木村晋也先生の2016年8月に収録された動画による講義-慢性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病”どんどん進化する白血病の治療”-によって、フィラデルフィア染色体によるその発症のメカニズム、分子標的薬であるTKIがCML細胞の増殖を阻止できる理由、TKIにはどんな薬があり、それぞれにどんな副作用があるのか、断薬の可能性などについてわかりやすく説明されていました。今日は、患者さん向けに慢性リンパ性白血病に対するTKI(グリペック、タシグナ、スプリセル等)による治療の実際に関して非常に詳しく説明した近畿大学医学部教授の松村到先生の講演の記録「慢性骨髄性白血病のより深い理解のために」が、血液情報広場つばさのNewsletter ひろば2016年12月号12頁~24頁に記されているので、Newsletterひろばにリンクをします。
TKIは、CMLの治療方法と予後を一変させた画期的な新薬であることは間違いありません。しかし、いずれも薬価が非常に高く、患者さんにとってTKIを飲み続けることによる経済的な負担が大きいこと、及びTKIによるつらい副作用のための生活の質の低下という問題があります。そこで、、いつ、どのようにして再発せずにTKIを断薬できるのかということが、医療者からみても患者さんからみてもCML治療における最大の課題となっています。この点については、上記の二つの資料は2016年8月に収録された動画と2016年9月の講演記録とやや古くなっているので、その後に出された断薬の可能性に関する臨床試験の結果にも参考までにリンクします。もっとも、この点に関する最新のデータは知らないのですが、2017年2月23日の朝日新聞の記事(白血病治療薬、やめられる? 中断でも「2年再発なし」)、同年2月22日の朝日新聞生活面の記事(白血病の薬 やめる選択)、同年9月27日のYomi Dr.の記事(白血病治療薬「グリペック」投薬中止しても再発せず…患者の6割以上、3年間)によれば、秋田大学、東京医科歯科大学などが参加した臨床試験(治験)において、グリペックを3年以上飲み続け、遺伝子検査によっても2年以上BCL-ABL遺伝子が検出されていない分子遺伝学的完全寛解の状態を維持している68人(詳しい参加条件については、http://www7b.biglobe.ne.jp/~izumi-cml/stim213.html参照)がグリペックの服用を中止した結果、1年目で約70%、2年目で65%以上、3年目でも63%(43人)の方が再発しなかったこと、再発した方も再び薬を飲むことで全員が同遺伝子が見つからないか、ごくわずかしか検出されない状態に戻ったとされています。この臨床試験の結果は、2年以上分子遺伝学的完全寛解の状態を維持している場合にはTKIの断薬ができる可能性を示す(上記朝日新聞の記事における高橋直人秋田大学医学部教授の指摘参照)点で注目されます。ただ、どの資料においても強調されているように、患者が自己判断で薬を止めることは極めて危険であり、断薬する際には主治医と相談することが必要です。