アコースティックな響きには、不思議な力があると思う。
オーケストラの音や、ピアノやギターの音は、不思議と心にしみてくる。電子的な加工を施さない、人の力のみで出すアコースティックな響きである。そして、奏でる音楽は、基本的に楽譜通りではない。そんなことを言うと、オーケストラやソリストの方に誤解を招くかもしれないが、譜面通りに演奏できる人なんてコンピュータ以外に居るはず無い。そして、もし本当に譜面通りに演奏出来たら、なんて無機質な詰まらない音楽だと思うだろう。
人間が奏でる音楽は、人それぞれの美妙な揺らぎがあり、それがえもいわれぬ美しい音楽を紡ぎ出す。譜面より微妙に遅れたり、微妙にテンポが変わっていたり、微妙に短かったり、強かったり、弱かったり、人それぞれ、その時の演奏毎に、表現は異なっており、同じものは一つとしてない。つまり、コンサートの一つ一つ、演奏の一つ一つが、その時しか聴けない、二度と聴けない貴重なものなのである。そして、その演奏に我々は感動し、ゾクゾクしたり、時には涙を流したりするのである。
もし、CDやDVDの様に、毎回全く同じ演奏をしていたら、直ぐに飽きてしまうだろうし、毎回の感動は無いだろう。もちろん、亡くなってしまったアーチストの演奏が、まるで目の前にいるかの様に聴けるCDの功績は大きい。そのような場合、聴いた後の感動も大きいだろう。
しかし、現実に居る人であれば、可能なかぎり実際に演奏している生の物を聴きたい。直接で無くても、テレビやラジオ等でも良いから、その時、その時点で演奏されている生の演奏を聴きたい。
中には、例えプロといえども、調子が悪い日もあるだろうし、間違えることもあるだろう。でも、そんな事は関係ない。演奏者と同じ時間を共有し、同じ演奏を、聴かせて頂ける幸福感が素晴らしい。それが、演奏者の力だけで発せられるアコースティックな響きであれば、何も言う事は無い。
だから、私はアコースティックなコンサートは大好きである。
可能な限り、コンサートに足を運びたい。