人の思いほど醜いものは無い
思いがあるから穢れも広がる
彼らEXOはその穢れを祓うため集った
生まれもった能力を生かして、世界中を、時には時空・次元を超えていく
それぞれに能力をもち、それぞれに歩んできた道がある
ジョンインとギョンスは一度死をさまよった
彼らは死ぬ間際に"ある者"と契約した
それにより欠けた魂をその者たちに埋めてもらい共存することになった
心臓を貫かれても死ぬことの無いカラダ
致命傷を負えば、足らなくなった血を求めバケモノとなって妖魔、悪魔、動物そして人間など関係なく食らいつくす
それこそがふたりが生き返るための代償であった
"彼ら"と命も体も共有することにより、能力の増大も得たが、その際は"彼ら"に意識をとられてしまい、ギョンス、ジョンインの意識は深い眠りへと落とされてしまう
思いをもっているのはニンゲンだけではない
存在するすべてに共有してもっているものだ
目に見えて存在など確認できない神ですら
思いは穢れ
思いは力
思いは己をも支配する
ふたりが契約したものの存在を示す名はない
"彼ら"は表に出ることは殆どない
他者とコトバを交わすこともない
だれもが知っているのに存在を目にした事の無い神様と呼ばれる存在なのか
それともヒトを利用し貶める悪魔なのか
それですらないのかすらも知られていない
そんな"彼ら"にも思いはあるのだ
―――『はじまるよ』
―――『、、、、泣かないで』
ギョンスは小さな少年姿のディオが言っていた言葉を思い出していた
目の前には大きな穴が広がり、さほど深くはないが中心で虫の息となっているタオがいる
タオは笑っているようだったが、絶えることの無いであろう同じ存在のタオの命がもう消えるのは時間の問題であることは、聞かずともわかっていた
ギョンスは何が起こったのか理解できなくて、その場で崩れるしかなかった
嗚咽が襲い、吐き出すと視界に広がったのは赤黒い液体であった
自分が吐き出したものが血であることに気づくのは遅くはなかった
だが、ギョンスは状況処理が追いつかずどうすることもできなかった
タオに挑発され、ジョンインを吹き飛ばされ、怒りに支配されたのはわかっている
覚えている
なのに、今に至るまでの記憶が全くない
ジョンインを見ると苦しそうに自分の体を抑えて居るものの、唖然としており、ギョンスを見る顔色が青白く恐れていた
――なにが、おきてるの?
「はは、、まさかこれ程までとは、、さすがディオだね、、うぐっ、!」
タオの言葉に放心状態から解放され、ギョンスは体を跳ね上がらせタオに一目散に駆け寄る
「ディオ、、キミが自分の力をキライなのは、、わかっていたよ、、、それでも、、今のオレには、、キミの力が必要だったんだ、、」
「、、僕はディオじゃない、、」
「タオは、、いい子なんだ、、、いい子すぎて、、自分の方が小さく脆い命なのに、、、その力を使って、、何度も、、何度も、、、自殺しようとした母親を護っていたんだ、、」
タオの目は焦点が合うことはなく、語り始めた
「母親は、、お腹のなかの子が、、自分を死なせてくれないことに気づいてから、、、タオを産んで、、、すぐに死んだ、、、、あの女は母親になるよりも女としての、、道を選んだ、、だから父親である男の元へ行ったんだ」
タオの過去は、生まれながらに地獄のようで、僅かに灯る命を"タオ"によって繋ぎ止めていたようだ
だが、タオ自身もそれをわかっていながら、成長していくにつれ周りのニンゲンを救うようになっていったようだ
Timeの能力で対象者の過去に戻り、もう一度やり直せるように、と
そんな中である少女に出会った
可愛らしく笑うその女の子はなぜだかお人形のような印象を受け、タオは興味本位で近づいた
そして彼女の過去に触れた途端、少女のなかに閉じ込められてしまった
少女は誕生日にもらったドールハウスをいたく気に入り、よく遊んでいた
少女が6歳の誕生日を迎える頃、夫婦の中は険悪になっていった
父親は不倫を繰り返し知らない女を連れ込んで、母親は酒と宝石、金に溺れていった
思春期の少女の兄は崩壊した家庭環境から逃げるようにクスリに手を出すようになり、それぞれ快楽に溺れていった
少女は以前の仲のいい家族に戻れる日を待って、ドールハウスで遊んで過ごしていた
月日が経つにつれて、もう戻ることはない家族をドールハウスのなかに閉じ込めてしまったのだ
表向きは仲良し家族を装い、周囲からは羨ましがられていたが、真実を知らない人達に知らせたくても知られたくなかった少女
複雑な気持ちは増幅し、次第に少女を支配していったのだった
「そんな子を守るために、、、少女の願いを叶えようと、、、タオは自分の体も命も削れて無くなるのを承知で、、力を使い続けているんだ、、、俺にはもう止めることなどできない、、、、終わらせるには、、、、こうするしかなかったんだ」
タオが瞼を伏せ、またゆっくりと眼をギョンスに向けた時には瞳の色は赤くなく、吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳であった
「、、、タオ?」
「やあ、、はじめまして、、、僕の願いを叶えてくれたんだね、、ギョンス」
「どうして、僕の名前を知っているの?」
「ボクは、、もうひとりのタオと、、生まれながらに共存してきたから、、、魂が完全にひとつになってたんだ、、、、だからお互いの見たものも、、感じたものも、、共有してるんだ」
そんなことができるのかと驚くも、タオが咳き込んだ拍子に血を吹き出し、命の灯火が消えようとしており、慌てるギョンス
「タオはね、、、ディオを求めて彷徨っていたんだ、、、ディオに自分の命を捧げたがっていたんだよ、、、」
「、、どういうこと?」
「ディオの力に酔っていたんだよ、、、タオは痛みを快楽に死を待っていたんだ、、、そんな時にディオに出会った、、、、女の子の願いを叶えてあげればディオに会えると、、僕の力で知ってたから、、、だからボクは、、、ディオのために、、力を使い続けたんだよ」
「どうして、、、」
「、、、僕たちの命は、、、お互い半分ずつで存在する、、、、その命が、、、どちらも欠けてきたら、、、?、」
「、、魂は欠けたらこの世に居られない、、」
タオはギョンスの答えににんまりと笑った
「キミの、おかげで、、、ぼくが、、、死にたがりの、、タオへの、、最初で最後の、、願いを叶えて、、、あげられたよ」
ありがとうと唇が動き終わるとタオは力を抜けて二度と動かなくなってしまった
腕の中で消えてしまった命
自分が消してしまったのだとギョンスは泣き崩れた
「どういうことなの?なんで何も言ってくれないの?全部ぜんぶわかってたんじゃないの?!答えてよ!ディオ!!」
どんなに呼んでもディオが出てくる気配はなく、ギョンスはただただタオを抱きしめ、泣くことしかできなかった
ジョンインはギョンスを抱きしめたくてもできず、立ち尽くすしかなかった
しばらくして教会の扉が開き、顔を上げて扉へと向いたジョンインは驚きで言葉が出てこなった
絞り出した声はなんとも情けない声であった
「どうして、、、どうやってここに?」
「どうして、か」
「話すにはお互い時間が必要なようだな」
扉にいるのはよく見知った男ふたり
ルーハンとシウミンであった
「その前に手当をしよう」
ジョンインとギョンスの姿と教会内の惨状を見て怒った様子ではあるものの、落ち着いた声で話すルーハンとシウミンに、ジョンインは頷くしかなかった
シウミンがギョンスの傍に寄り、目線を合わせると開いた唇を再びぎゅっと閉じてギョンスの眼を手で覆う
「、、もう休め、、ギョンス」
その言葉に安堵したように、ギョンスから力が抜けてシウミンに倒れ込む
扉の方が騒がしくなり、スホを先頭に仲間が集まり、今回の仕事は終わったのだった
……To be continued