この話しは⑦話以降の事
Side D
目を覚ますと隣にいる人がいなくて、ビックリして飛び起きる
いつもならヨダレを垂らして幸せそうに夢の世界を堪能しているのに
リビングに行っても姿はなく、洗面所、風呂場や彼の部屋を探してもいなかった
「?こんな早くから出たのかな?」
それにしても早すぎる
時計は5時半を少し過ぎていて、それよりもはやく出かけたとしてもまだ始発は出ていないし
「あ、ジョンインは電車じゃなくて送迎車があるっけ」
ん〜それでも早すぎる。運転手もそんなにはやくは来れないだろうし
とりあえず着替えるために自室に行くと、勉強机の椅子に大きな白いテディベアがぽつんと座っていた
「え?」
くるりんとした目がなんとも可愛い印象のそのベアは、僕が来てやっと来たみたいな表情で出迎えてくれる(ような気がする)
「キミはだれ?」
頭を撫でるとふんわりとした手触りでふわふわモチモチとしていて、思わずぎゅっと抱きしめてしまった
「ふふ♡気持ちいい♡♡」
ぎゅむぎゅむと抱き心地を堪能してるとクマの手首がひんやりして金属製のものが付いてることに気づいた
「?何つけてるの?」
腕を持ち上げて見ると金色のシンプルなデザインのブレスレットをしていた
クマの腕から外して自分の腕にはめてみる
僕は普段アクセサリーは身につけないけどこのブレスレットならいいかなと思った
「・・・・・・いやいや!僕のじゃないし!だれのなの?」
「・・・気にいらなかった?」
「!ジョンイン!」
スポーツを頭にかけてタンクトップ姿のジョンインに思わず顔が熱くなる
「何その格好!」
「え?ああ。ちょっとスタジオで練習してた」
咄嗟に抱きしめていたテディベアに顔を埋める
なんでそんな格好してんの?!
年下なのにすごく色気があるジョンインになんだか胸がぎゅっとする
「コレ、俺からギョンスへのプレゼント」
「え?」
目の前で跪いて手を取るジョンインに戸惑う
「ギョンスが何が好きかわかんなかったからお店で目が合ったこのクマにしたんだ」
「こんなに大きなクマ高かったでしょ」
「?いや、それは全然。本命はこっちだから」
「・・・・あ!」
チャリ・・・と僕の腕にはめたブレスレットに触れるジョンインの腕にもお揃いのブレスレットがはめられていた
「・・・・・・お揃い?」
「・・・・・・嫌だった?」
不安が的中したかのようなジョンインの顔は焦りと心配と不安とでいっぱいいっぱいの顔で、それがなんだか可愛く思えた
「ギョンス、アクセサリーなんて普段しないから迷ったんだけど、お揃いの身につけていたくて。けど、心配だったからこのクマも買ったんだ!」
普段は口数の少ないジョンインが必死で説明するのが可笑しくて思わず吹き出してしまった
こういうときのキミは嫌いじゃないよ
「嫌じゃないよ。ただ、突然どうしてプレゼントくれたのかな〜って思って」
「今日はバレンタインだから、ギョンスに何か贈りたかったんだ」
僕の返事に安心してふんわり笑うジョンインにまた胸がぎゅっとする
なんでかな
すごく暖かい気持ちになる
「・・・・・ありがとう」
「どういたしまして」
バレンタインデーというものを忘れていた僕は何も用意してないけれど、ジョンインは要らないの一点張り
「日頃の感謝の気持ちを込めてだからギョンスはいいの!」
そうは言っても、僕も毎朝学校まで送ってくれるし帰りは僕の学校まで迎えに来てくれるし。
「そしたら僕もテミンくんとセフンくんに運転手の人にもお礼渡さなきゃ」
「渡さなくていいの!というかダメ!」
「なんで?」
「俺が嫌なの!」
ほっぺを膨らませてムクれるジョンインがなんだか可愛くもあり可笑しくもあり、笑うと怒って更に笑えた
僕はまだ気づかない
ジョンインの小さな嫉妬に
嬉しく思ってることを
ジョンインの言葉に行動に
ふわふわ暖かくなる気持ちの名前を
この時の僕はまだ気づかない
そして
ジョンインは気づかない
この日くれたあのテディベアが
ずっと僕の椅子に座ってることを
毎日僕がブレスレットをしていることを
ジョンインが気づくのは
ずっと
ずっと
あとの話し
end...