Side K
信じられねぇ!
本人の意思は無視して婚約するなんて!
しかも、相手は男?!
昔から母親と姉さんの思考回路は理解できないけど、今回で余計わかんなくなってきた。
何のつもりか知らないけど、これはやり過ぎだ!
くっそぉ〜ムカつく!
明日会うとか、相手も来ないだろ?!
いや、もしかしたら断りに来るかもしれないし・・・・・・。
ド・ギョンスとかだれだよ・・・まぢで。
とりあえず、荷造りしとくか。
この家からでないと・・・・・・。
すぐに捕まるのはわかってるけど、何もしないよりはマシだ!
まずはセフンに連絡して・・・・・・。
デニムのポケットからiphoneを取り出しセフンにLINEでしばらく泊まると伝える。
「トランクってどこにあったっけ?」
数多くあるタンスのひとつを開けた瞬間、バンッと壊れるんじゃないかというくらいの勢いでドアが開いた。
吃驚して部屋のドアを見ると、ジュンミョニヒョンが涙目でどんどん近づいてきて、ガバッと抱きついてきた。
「おめでとうおおおお!ジョンイナああああ!お前が先に嫁を貰うのは兄ちゃんちょっと悔しいけど、嬉しいぞおおおお!」
「ちょ、っと!耳元で叫ばないで。離れて」
ヒョンは俺の肩を掴むと今度は真剣な表情で
「いいか!これからは自分よりも家庭を大事にするんだぞ!まずは嫁との仲が大切だ。子どもを授かれば大変になるのは奥さんの方だから大切にしなきゃだぞ!それから・・・」
と熱く語り始めたので軽く聞き流してべりっと引きはがす。
「ジュンミョニヒョンはしゃぎ過ぎだって。本人たちは明日が初めてのご対面なんだから、そんな緊張するようなこと言わないであげなよ」
やんわりとジュンミョニヒョンを止めるジョンデヒョン。けど、優しいようで実はただ楽しんでるだけ。
口元がにやにや笑ってる。
絶対ぜんぶ知っててそう言ってる!
「俺は会わない!なんで勝手に決められなきゃ行けないんだよ!」
「まぁまぁ落ち着きなよジョンイナ。姉さんと母さんのことだ。お前を思っての行動だよ」
「だけど、結婚はやり過ぎでしょ!一生のことじゃん!そしたら相手にも悪いだろ!」
母さんと姉さんを出せば俺がなんでも食い下がると思い楽しんでるジョンデヒョンを思いっきり睨む。
ヒョンはやり過ぎたと分かったらしく、謝りはしないけど苦笑いを向けて肩を落とした。
「・・・確かに、やり過ぎではある」
初っ端めちゃめちゃ騒いだジュンミョニヒョンが冷静にそう言い、驚いてジョンデヒョンと同時にジュンミョニヒョンを見る。
俺はヒョンに理解者である期待の眼差しでジョンデヒョンは何を言い出すかという怪訝な表情で。
「そして相手のことを思ってるのはジョンイナのいいところだ。けど、母さんと姉さんがそうまでした理由も考えるべきだと俺は思う。あのふたりは確かに僕たちには理解し難い点がいくつかあるけど、それは全部僕たちを思っての行動ばかりだ。結婚までさせたのはそれなりの意味があるはずだよ」
真剣な顔してそんなこと言われたら、何も言い返せない。
俺がムゥと黙ると今度は優しい笑顔になって頭を撫でてくれた。
ジュンミョニヒョンの小さい頃からの癖。
自分の真剣な話を俺が聞き入れるとあやすように頭を撫でる。
「そうだな。結婚したくないなら尚更明日本人と話し合って取り消すしかないだろ」
からかってはいたものの、最後にはジュンミョニヒョンのように優しく微笑むジョンデヒョン。
俺はふたりのそんなところに弱い。
なんでも強引に押しつけるけど、最後はちゃんと俺に選ばせてくれるんだ。
「・・・・・・わかったよ。明日ちゃんと会うよ」
満足気に笑うふたりのヒョンにプイっとそっぽ向いてベッドにダイブする。
あ〜あ。
俺って結局みんなに流されるんだ。
「ジョンイナの嫁ってどんな人何だろうなぁ〜ナイスバディの巨乳美人かな?!」
「それはジョンデヒョンの好みでしょ。ていうか、相手女じゃなくて男だし」
「「は?」」
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Side D
翌日、スマホの案内アプリに従ってようやくたどり着いたキム家の正門。
あまりにも広い塀が続くものだから何かと思えば、まさかのキム家の敷地だとは思わなかった。
門を通っても遠くにある白い家。
アメリカのホワイトハウスもここまで庭は広くはないと思う。
自然が広がる大きな庭。
歩いてる道の溝には水が流れ、季節の花や緑が広がり、家と門の間にはテレビでよく目にするような噴水があった。
住む世界が違いすぎる。
どうして僕なのだろう。
ごく普通にいる男の僕を、なぜ嫁になのだろう。
扉まで辿り着いてノックをしようと腕を上げると、扉が勝手に開き、中から背の高い男が出てきた。
「あ、どうもこんにちわ。お客様かな?」
「はい。ド・ギョンスといいます」
「ああ!あなたが!」
男はどうやら僕を知ってるらしく、親切に待合室まで案内してくれた。
その部屋は白い家具で揃えられて、所々金色に輝くデザインが入っていた。
これは一体だれの趣味なんだろうか。
大きな窓が並ぶ中でひとつだけ開いてる窓に近づくと、外は先ほど見た庭とは違う庭が広がっていた。
塀もアーチ状の門もぜんぶ薔薇でできた、どこか誘い込むような庭。
僕はなぜかはわからないけど、そこが迷路状になってることを知ってる。
「ねぇ、ギョンスさん。あの薔薇の庭を見て思い出すことない?」
「え?」
「あの庭の中も、、、俺のことも」
そう言葉を繋げた男の顔はなぜだか優しくて、でも儚げで。
そんな表情されるなんて思わなくて戸惑っているとバンッと勢いよく扉が開いた。
「おい!オ・セフン!どこまでほっつき歩いてんだよ、散々探したぞ」
これまた案内してくれた男と同じようにスラッと背の高い男が現れ、ムッとした様子で男の横に並ぶ。
「ちょうどジョンイナの嫁さんになるド・ギョンスさんをココに案内したとこだよ」
男は偉いでしょと言ってる様にエヘンと自慢気な男に冷たい視線を送り、僕に目線を移すと驚いたように目を見開いた。
「え?・・・・・・なんで、?」
明らかに戸惑ってる男に、僕を案内してくれた男も頷いて「僕も驚いたよ」と言葉を繋げる。
「まさかあの時のあの子があなただとは」
……To be continued