[ Why ? ] side D
僕を置いて、売店へと消えていくジョンイナの後ろ姿を、ただ見つめることしかできなくて
ジョンイナが戻ってきたらどうすればいいんだろう?
なんて話を切り出せばいいのかな?
なんて声をかければいいのかな?
ぐるぐる、ぐるぐる
考えていたら………
僕の前に人影が写った
「あ……ジョンイナ?」
ドキッとしていつの間にか俯いていた顔をあげると
目の前にいたのはジョンイナではなく、小太りな知らない男だった
あれ?
でも
どっかで見たことあるような…………?
そう、思っていると
「ねぇ、ひとりなら僕と回らない?」
「いえ……連れを待っているので」
「あぁ、ジョンイナなら君を置いて帰ってしまったよ」
なんでこの人はジョンイナのことを知ってるの?
なんで今日僕がジョンイナと一緒に居ることを知ってるの?
ジョンイナが、僕を置いて帰った?
いろいろと疑問が浮かんで、知らないこの男の真相を探っていると
鼻息の荒いその男は僕の腕を引っ張って無理矢理連れて行こうとする
「ッ!はなし、て!」
なよっちい僕の力なんか、僕よりも横幅のあるこの男に叶うわけもなく、ずるずると引き連れられてしまいそうになる
やだ……
ヤダ
ヤダ
ヤダ!!
怖い
こわい!
コワイ!!
助けて………
「っジョンイナぁああ!!」
バキッ!
どさッ
ぎゅっと目を瞑って叫ぶと、鈍い音と、何かが倒れる音がした
そして、ふわりと後ろからだれかに包まれる
だけど、今の僕はそれさえも恐怖で恐くて
びくっと身体を震わせることしかできなかった
「ギョンス!大丈夫、俺だよ!」
「ぇ………?」
顔をあげると
そこには
「チャニョ、ル?」
「うん。もう大丈夫」
ぎゅうっとチャニョルに抱きしめられて、回された手であやすように頭や背中を撫でられて
「ッ………ふぅッ……」
僕はその温もりに安心して、緊張と恐怖が切れて泣き崩れた
ぎゅっとチャニョルにしがみついて、チャニョルに誘導されるままその場を後にした
その時の僕は、恐くて、こわくて、ジョンイナが見ていたことなんか全然知らなかった
「……落ち着いた?」
ひんやりと冷たい缶ジュースを、泣いて腫れた眼に充てられる
「ぅん………ありがとう、チャニョル」
「いえいえ」
チャニョルは僕が腰掛けてるベンチの隣に腰を卸して、僕の頭を撫でた
「ああーびっくりした!はぐれた友だち探してたらさっき会ってた奴が襲われてんだもん!」
あぁ、だから、あそこに居たのか……
「ごめんね。ほんとにありがとう。僕はもう平気だよ。それより、はぐれた友だちは?探さないと!」
「落ち着けって。さっき、見つかったって連絡きたから安心しろって」
「……ごめん」
「それより、ジョンインは?一緒じゃなかったのか?」
「それが………」
「なに?喧嘩でもした?」
「喧嘩………ではない、と思う、んだけど……なんか、気づかないうちにジョンイナに嫌な思いさせちゃったみたいで……………とりあえず、待ってるよう言われてあそこで待ってたら………」
説明してて、また先程の恐怖が蘇ってしまい、ぶるっと肩を震わせた
「……ああ、なるほどね。ごめんな、嫌なこと思い出させて」
「……ぅうん、チャニョルのおかげで助かったよ。ありがとう」
チャニョルはにっこり僕に笑いかけると、また頭を撫でた
今度は強くて、髪をぐしゃぐしゃにされた
「さ、落ち着いたんならジョンインに連絡しろよ。突然居なくなって心配してるぞ、きっと」
そうだ……あそこで待ってるように言われてたのに、戻ったら僕が居なかったら不審に思うよね
ましてや、気まずくなった矢先居なくなったら帰ったと思われちゃうよね
僕は急いでポケットからスマホを取り出してジョンイナに電話する
プルルル………
プルルル……
「……はい」
「あっ!ジョンイナ!」
「ギョンス?」
「うん!僕!ごめんね、突然居なくなって。ちょっとトラブルがあって少しその場を離れたんだ!今どこにいる?今からそっちに行くね!」
「……ごめん、ヒョン」
「ジョンイナ?」
プツン
「ぇ…?」
突然電話を切られてしまい、僕は固まってしまった
「ギョンス?どした?」
ねぇ、ジョンイナ
どうして?
ごめん、って………?
キミの行動がわかんなくて苦しいよ
どうして………?