[ No-good person ] side K
「っジョンイナぁああ!!」
俺を呼ぶ叫び声にはっとして
ギョンスの元に走って戻った
空耳?
いや、でも、今の声は
間違いなくギョンスの声
でも、その声の主は俺ではなく
他の男に抱きしめられてその場を去って行った
遠くからでも見えてしまった
チャニョルの背中に腕を回してぎゅっとしがみついてるギョンスの手を
俺の頭は全然ついていかない
何があったのか
どうしてチャニョルがギョンスを連れて行くのか
わかっているのは
チャニョルに殴られたのであろう小太りの男が痛みに顔を歪ませて倒れていること
その男と眼が合い、俺は堪った怒りをこいつに向けて睨んだ
男は俺を見るなり震えあがり、逃げるように俺の前から消えた
ギョンス
どこにいる?
電話をしようとしても
なんだかしてはいけない気がして
とりあえず
ギョンスとチャニョルが行った方向に進んだ
やっと見つけたとき
ギョンスの眼は赤くて、泣いていたんだとわかった
でも、チャニョルに頭を撫でられて笑ってるギョンスを見て、なんとも言えない気持ちになる
チャニョルに言われて慌てて携帯を取り出したギョンスが掛けた先は
♪~♪~♪
俺だった
「……はい」
「あっ!ジョンイナ!」
電話に出れば、嬉しそうに俺に電話するギョンス
お願いだから
「ギョンス?」
その顔を他のやつに見せないで
「うん!僕!ごめんね、突然居なくなって。ちょっとトラブルがあって少しその場を離れたんだ!今どこにいる?今からそっちに行くね!」
トラブル………
俺を呼ぶ叫び声
倒れていた小太りの男
ギョンスを抱きしめていたチャニョル
泣き張らした顔のギョンス
……あぁ、そうか
「……ごめん、ヒョン」
俺ってほんとにバカだ
「ジョンイナ?」
プツン
「ぇ…?」
電話を切られて固まるギョンスに胸が痛むけど
今の俺は、ギョンスに会わせる顔がない
好きな人ひとり守れないなんて…………
そんなんじゃ、ギョンスの傍にいれない