[ Listen to my heart ] side X
「好きなら離れんなよ………ルハンがいない方が嫌なのに……。」
口が勝手に言葉を続ける。
ずっと近くにいるのに、ひとりな気がして寂しかった。
ルハンが離れてく気がして怖かった。
いつからこんな風に思うようになったんだろう。
「俺から離れるな!俺の傍に居ろよ!ばか!」
命令っぽい言葉に、孤独だった俺が本音を溢す。
「シウちゃん、それって、つまり、俺のこと、好きってこと?」
期待に目をまん丸くして見つめるルハン。
ルハンは言ってくれた。
俺が好きって。
だから、伝えずに見守ってたって。
だけど、俺はそんなの望んでない。
前みたいにふざけ合って、笑い合って、ときには喧嘩してすぐに仲直りして。
俺は昔みたいにルハンと居たいんだ。
ルハンがいいんだ。
ぎゅっと背中の布を握り締めて、薄い胸に顔を埋める。
トクン、トクン、
布越しで伝わるルハンの熱に鼓動が少しずつはやくなっていく。
ルハンの腕のなかに自分が居る幸福感に、彼がここに居る安心感に包まれる。
トクン、トクン、トクン、
………ああ、そうか。
君が部屋を移動したあのとき、どうして泣いたのか。
今までどうしてこんなに悩んでいたのか。
「……うん。すき。ルハンがすき。」
いつも君のことばかり考えていたのも、
いつも君が居ないだけで寂しかったのも、
いつも君を求めていたのも、
ぜんぶ、ルハンがすきだから。
「すき。」
「ほんと?」
微かに震えているルハンの声。
「うん。」
額に胸を擦り付けて頷くと、
「ほんとに?」
更に真実か探る君。
「ルハンこそ?」
俺も疑って聞くと、
「好きだよ、好き!大好き!」
嬉しそうな明るいトーンで喜んでぎゅうっと抱き締めてくれる。
「あー、ヤバい。嬉しすぎる。」
「……俺も。」
ルハンの本心が知れて嬉しい。
俺をすきって言ってくれる君がすき。
「………ねぇ、ほんと?」
何度も聞いてくるルハンが可笑しくて、彼の手を取って自分の胸に彼の手を充てた。
更に驚くルハンを真っ直ぐ見つめる。
トクン、トクン、トクン、
「聞こえる?俺の心臓の音。」
ルハンは俺の胸にある自分の手を凝視したまま何度も頷く。
彼の胸に自分の掌をあわせる。
「お前と同じ。」
トクン、トクン、トクン、
重なる俺たちの心拍数は同じリズムで互いに反応している。
不意に身体全身に痛みが走るほど抱き締められて、後頭部を押さえられて唇が押しつけられる。
「んん、ふぅッ、」
「ん、はぁ、すき。すっげーすき。」
「ル、ハ、、んぁ」
いつの間にか壁に追い込まれて逃げ場がなくなり、何度も角度を変えて唇が重なる。
触れるだけだけど、深くなるキスを受け入れていく。
ときどき擦れる鼻先、
息継ぎの度に熱く漏れる吐息、
やわらかくて、あたたかい唇、
ぜんぶに全神経が集中して、ルハンを感じた。
今まで擦れ違ってきた俺たち。
でも、もうそんなことはないよね。
だって、今は、君はここに居るんだもん。
「一生、離れてやるもんか。」
真剣な言葉には似使わない幼い笑顔。
そんな君が少しだけカッコよく見える。
「一生、離してやるもんか。」
俺も自然と笑顔になって、彼の首に腕をまわして抱きついた。
これからもずっと、君の傍で。