目を覚ますとカーテンから白い光が目に刺さり、眩しすぎて思わず目を細める。
布団のなかに入ったまま部屋を見渡すと、同僚のシウちゃんは顔に日の光がかかっていてもまだぐっすりと眠っていた。
猫のような丸い瞳を閉じて、幼い顔が更に幼く見える彼の寝顔。
練習生のとき、俺の部屋でサッカー観戦をした後そのまま疲れて寝てしまったときと変わらない君の寝顔。
「変わったのは俺かな。」
カーテンを閉めて彼の顔に日の光を遮ってから部屋を出た。
[ Loves again ] Side L
今まで遠くで君を見守ってきた。
昔みたいにふたりで笑い合うことが減った俺たち。
ときどき不安と孤独で揺れる瞳に、俺の本心を、俺の想いを打ち明けて守ってあげたくなる。
だけど、それをしないのは君の為。
チェン同様に忙しいなかで詰め込みで語学の勉強している君は、更に最年長での重圧とメンバー内の言葉の壁に押されている。
そんな君に俺の想いを伝えたところで追い込まれるだけだろう。
だから抑えていたのに。
なのに、君は思わせ振りなことばかりする。
彼に子どもだと思われたくなくて、本当は飲めない珈琲を無理矢理飲んでみた。
だけど、君にはお見通しで結局水を飲んで口直しをする。
それが余計に子どもっぽく見られてしまい、彼はお腹を抱えて笑いだした。
久しぶりに間近で見た君の笑顔。
お風呂あがりで湿った髪に指を絡めてくしゃくしゃに撫でる。
昔も俺が拗ねると機嫌を直すときによくこんな風に頭を撫でてくれた。
また、あの日の前の俺たちに戻ったみたいで嬉しかった。
現状にハッとした彼は手を引っ込めようとして、思わずその腕を掴んだ。
駄目。俺から離れないで。
抑えきれない君への想い。
「シウちゃん、シウちゃんは俺のこと、どう想ってるの?」
自分でもこんなこと聞くなんて思わなくて、自分に驚く。
彼は俺よりも更に驚いていた。
「お前こそ。どう思ってんだよ。」
少し間が空いてから彼から問われる。
その声は微かに震えていて、俯くその瞳は潤んでいた。
「あの日急に怒って、ごめんだけ言って勝手に離れて。なのに、また俺の前に現れてさ。俺に近づこうともしない。何がしたいんだよ?俺をどうしたいんだよ?」
だんだん強くなる口調。
俺を見る瞳は涙でいっぱいで。
「嫌いならなんであの日、キスなんかしたんだよ?謝ったときだってそうだ!」
矢継ぎ早に追い詰めてくる彼。
掴んだ手は拳が握られていて、強く握っているせいで微かに震えている。
「俺のこと嫌いなら放っておいてくれよ!」
その手を振り払い、キッチンから出て部屋に駆け込むシウミンを慌てて追い掛けた。
後ろから抱き締める形で彼を捕まえる。
「離せ!ばかルハン!」
「ごめん、シウちゃん。ごめん。」
暴れる彼を逃がさないように体全体で彼を俺の腕のなかに閉じ込める。
前に組まれた俺の腕に彼の涙がぽたぽたと落ちて、重力で下へと流れていく。
「嫌いなわけない。ずっと好きなんだから。俺の勘違いでセフンにシウちゃんを捕られると思ったから、捕られたくなくてキスしたんだ。
今まで近づかなかったのは、いろいろと抱え込んでるシウちゃんに負担を掛させない為!」
自分でも言ってることが無茶苦茶なのはわかってる。
だけど、これが本心。
近づきたいのに、君を守ろうと思って近づけなかった。
昔みたいに一緒にいたいけど、俺と君の想いは初めから違うから伝えられなかったんだ。
「………意味わかんない、」
大人しくなって啜り泣くシウミンに心が痛む。
「好きなら離れんなよ………お前がいない方が嫌なのに……。」
「シウ、」
「お前がいない間、ずっとお前のことばかり考えてて。ずっと寂しかったの、にッ、」
え?
シウちゃん、それって…………。
不意に言われた一言に思わず腕の力が弱まる。すると、シウミンはくるりと俺に向き合って背中に腕をまわしてぎゅっと抱きついた。
「俺から離れるな!俺の傍に居ろよ!ばか!」
「シウちゃん、、それって、つまり、俺のこと好きってこと?」
今のシウちゃんの言葉に期待が押し寄せる。
もしかして、俺にチャンスが有るってこと?
自惚れてもいいってこと?