[ Tell me ] side X
「……どう、して?」
掠れた声はチャニョルと呼ばれる男の騒ぎ声で空気中に消えてく。
実際には聞こえていないはずなのに、ルハンは困ったように微笑む。
周りにはうるさく騒ぐメンバーが居るのに、俺たち以外はスローモーションで動いているように錯覚する。
俺はどうすればいいかわからなくて、ただ泣きそうになるのを堪えるだけだった。
先生が部屋に入ってきて、これからのことを話始めた。
話を聞いてるうちに、あの時の3人組のテストがデビューメンバーを決めるためのテストだったと知った。
なら、ルハンはどう選ばれたのだろうか。もしかしたら、いや、もしかしなくても、あの歌唱力にジョンインと並ぶ程ダンスが上手ければ、すでに選ばれていたに違いない。
そんなにスゴい人と一緒でいいのだろうか。
「ミンソクとジョンデは、シウミンとチェンで名前を代えてやっていく。ふたりは中国側で活動することになるから、これから語学の方も今までよりも頑張ってくれ。」
突然のことで頭がまわらない。
隣に座っているジョンデことチェンと顔を合わせる。
互いにいろんな不安が押し寄せる。ふたりとも同じ気持ちで眉をひそめる。
トントンと肩をつつかれて振り向くと、長身のパーフェクトそうな男が韓国語で「大丈夫。」とフォローしてくれた。
「俺とルハンで中国語教えるから。」
頼りになるその一言は、俺とチェンの不安を和らいだ。
その隣に座るルハンは頷くだけ。
…………なんだか、俺の知ってるルハンじゃないみたいだ。
そう思うのは俺だけ?
説明が済み、チャニョルから自己紹介タイムが始まり、自分の番になる。
少し緊張するな。
「え、と。リードヴォーカル、リードダンサーのシウミンです。こう見えて最年長ですが、気楽に話しかけてください。これからよろしくお願いします。」
「「「え?!」」」
セフン、ルハン、ギョンス、ジョンイン以外はものすごく驚いていた。
うん、まぁ、最初はそうだよね。俺よりも年下の人はみんな、同じ反応をする。
………あれ?でも、ルハンは違った、気がする。
何も、言わなかった、?
躊躇いがちに横でルハンを見るとすぐに視線がぶつかって、反射的に顔を反らした。
ああ、もう、まただ……。
ルハンと目が合うだけで心臓がバクバクして熱くなって、どうすればいいかわからなくなる。
みんなにも、ルハンにも、熱くなって潤みはじめた顔を見られたくなくて俯いたまま席に座った。
それから新リーダーの奢りで焼肉屋に行くことになって、ルハンからなるべく避けて他のメンバーと交流した。
ルハンもセフンやジョンイン、中国メンバーと話していた。
その間、ルハンがこっちを見ることは一度もなかった。
その日は何も話すことなく、翌日から新グループメンバーとしてやっていくことになった。
ほんとは君を見るだけで、
君のことを考えるだけで、
君のことを思い出すだけで、
ドキドキして、息が止まるんじゃないかってくらい、胸が苦しくなるんだ。
ねぇ、ルハン。
俺に教えて。
あの日のこと。
………君は、どう想ってるの?