オリバー・カウドリーは、1838年4月11日にミズーリ州ファーウェストでモルモン教会から破門された。しかし、その場には本人も、預言者ジョセフ・スミスも出席していなかった。破門の決断は高騰評議員会が下した。このわずか2年前、オリバーは預言者ジョセフと共に、カートランド神殿でエリヤ・エライジャ・モーセから訪れを受けたというのに。
 オリバーが破門された理由として、高騰評議員会は
「信者たちの所有物について教会が口を出すのはおかしいと預言者にたてついた」
「神からの啓示に逆らい、ジャクソン群の自分の土地を売ったこと」
「兄弟たちを相手に訴えを起こし、ストレスを与えた。」
「預言者ジョセフ・スミスが姦淫の罪を犯した、とほのめかし、彼の人徳を破壊しようとした」
等を挙げています。
(History of the Church「教会歴史」, vol III, p. 16-7)より

現役モルモン歴史家リチャード・ブッシュマンは、その著書「Joseph Smith・Rough Stone Rolling p 324~325」の中でこう述べています。
「この破門裁判にファニー・アルガーの名前は全く出てこないが、ファニーがジョセフの不倫相手だとオリバーが訴えているのは明らかだ。、、高騰評議員たちは、ジョセフとファニーの浮気のうわさを耳にしていたにも関わらず、オリバーの主張はウソだと結論づけた。デビッド・パッテン、トーマス・マーシュ、ジョージ・ハリス等の12使徒たちもオリバーの言葉を信じなかった。
 1838年1月、自分がウソつきの嫌疑をかけられていると知ったオリバーは、ジョセフに次の様に手紙を書いている。
『、、、あなたは、私があなたについて故意にウソを言ったと告白した、と言いふらしたそうですね。取り消していただきたい!』
 オリバーは、兄のウォーレンにも手紙を書き、『私はウソをついて自分の家族の名声を傷つけるようなことは決してしない。特に、いつも擁護してきたスミス家の人間については!、、、私が彼について言ったことは、全て真実だ!』
 つまり、オリバーはジョセフが不倫したと信じていたのだ。
1837年11月のミーティングで、オリバーとジョセフの意見は食い違っていた。ジョセフは自分がファニーと肉体的関係を持っていたことは認めたが、この関係は「姦淫」ではないと主張したのである。
オリバーがそれを認めなかったのは明らかだが、この時は引き下がった。
 預言者ジョセフが姦淫の罪を犯したと認めたかどうか尋ねられた時、オリバーは「いいえ」と答えた。
そして、ジョセフにとっては、それで十分だったのだ。自分とファニーとの関係は姦淫ではない、と主張出来る許可証がほしかったのだから。(Elder’s Journal 1838年7月)参照
 ジョセフを姦淫の罪で訴えようとする者はいなかった。オリバーは破門され、ファニーは教会を去った。」

 さて、ファニー・アルガーとは誰でしょう?ファニー・アルガーに関しては、「ファニー・アルガー・スミス・カスター 」https://ameblo.jp/exmormon/entry-12313831690.html参照

熱心なモルモン信者のほとんどが、ファニーについて知りません。教会は、決してファニーのことを教えません。私も約40年間活発な信者でしたが、一度もファニーの名前を聞いたことがありませんでした。インターネットで元信者たちが彼女について書いていますが、「ネットの情報はウソだらけだから信用するな。」と教会は教えるので、まじめな信者ほど無知なのです。しかし、教会の歴史家たちがファニーについて本に書いています。それによると、

 ファニーはジョセフの家で住み込みのメイドとして働いていた16歳位の少女です。エマが実の娘の様にかわいがっていたのですが、ジョセフはファニーと密かに結婚し、肉体関係を持ちました。妊娠していた可能性もあるそうです。しかし、これを知ったエマが逆上し、ファニーを家から追い出しました。怒り狂うエマをなだめる為に、ジョセフはオリバーを呼びました。オリバーはエマからジョセフとファニーの不倫について聞かされ、ひどいショックを受けましたが、それでもエマをなだめ、不倫疑惑のうわさをもみ消そうと、走り回りました。

 さて、ジョセフとファニーの関係は神から命じられた多妻結婚なのか、それともジョセフが勝手にやったことなのか、今でも答えは二つに割れています。
 
まず、「神から命じられた神聖な結婚」説。ジョセフとファニーの結婚式の記録がファニーの叔父モザイヤ・ハンコックによって記録されていること、反モルモンのアン・エライザ・ウェブ・ヤングまでもがそう認める供述をしていることなどが理由として挙げられます。歴史家リチャード・ブッシュマンやトッド・コンプトンは自分たちの本の中で、そう結論づけています。
「Joseph Smith・Rough Stone Rolling p325」、「聖なる寂しさの中で」
「ジョセフ・スミスの最初の多妻婚妻 ファニー・アルガー・スミス・カスター」
https://ameblo.jp/exmormon/entry-12313831690.html参照

次に、「ジョセフが不倫した結果」説。モザイヤ・ハンコックの記録によると、ファニーの両親は預言者ジョセフが自分たちの娘を彼の妻にしたいと望んでいると知った時、全く動揺せず、あっさりと受け入れたと書いてあります。ファニー本人も同様です。ジョセフにはエマという妻がいたのですから、普通に考えればとんでもないことです。実際、後にジョセフからプロポーズされた妻たちのほとんどが、始めは拒絶します。そして受け入れるまでに悩み、苦しみもだえるのです。それなのに、前例のないファニーのケースで何一つ問題が生じなかったというのは、どう考えてもおかしい。
 つまり、モザイヤの証言は、作り話の可能性がある、ということです。

ファニーはスミス家から追い出された後、アンの両親の家にしばらく引き取られました。アンの両親はユタへ渡った忠実な信者だった。だからジョセフが不倫をしたとは思いたくなかったのでしょう。アンの供述はそんな両親の影響を受けた結果のものだと思われます。

 オリバーとエマはアンやモザイヤよりもはるかに預言者ジョセフと親しかった。その二人がジョセフが姦淫の罪を犯したと言っている、つまり結婚について知らなかったのです。こんなこと、あり得ない!
 
 住み込みの女中に恋をして、妻にバレたから「あれは神からの命令だ」と話をでっちあげた、という方が筋が通っています。もし、同じことを他の宗教の教祖が行ったら、モルモンの人は同じように思うでしょう。自分の教祖がやると「神の命令」と信じるのですが。

 更に、スミス家から追い出されたファニーは、完全にモルモン教会とは縁を切りました。彼女の両親はユタへ行きましたが、彼女は残り、自分と同年代の非モルモン男性と結婚しました。もし、彼女が神が選んだ預言者の最初の多妻婚妻なら、こんな結末にはならなかったはずです。

実は、モルモン信者の中にも、最近ジョセフの多妻婚は神からきたものではない、とか、ジョセフはやり方を間違えまくった、とか言って、自分たちの預言者をおおっぴらに批判する人たちが現れています。実は私の父親も、「天使が多妻婚をしろ、などと命じるもんか!ジョセフはウソつきで、女ったらしだったんだよ。男なんて、みんなそんなもんさ。」と言ってました。それでもジョセフは預言者なんですって。私にとっては、こんな人を預言者だと信じるのは頭がおかしいと思いますが。
https://ameblo.jp/exmormon/entry-12578703081.html?frm=theme参照

 それくらい、モルモン教祖ジョセフ・スミスの行った多妻婚はあまりにもおぞましく、汚らわしく、恥ずかしいものでした。

 だから、教会はジョセフの妻たちについて日曜学校や総大会、セミナリー等で教えないのです。尋ねる人がいると、「そんなことは聞くべきでない」とか「そんなに大昔の話、なんで蒸し返すの?」とか言って信者に罪悪感を植え付け、不信仰呼ばわりして苦しめるのです。教会は、ジョセフが多妻婚を嫌がっていただの、何かの目的があって神が命じただの、妻たちは結婚を強制されなかっただの、真実でないことばかり教えています。
 多くの妻たちは強制的に結婚させられ、ものすごく苦しみました。エマの悲しみと怒りは頂点に達し、夫ジョセフを毒殺しようとしたほどです。

1866年の10月、半年に一回ある総大会で、ブリガム・ヤングは次の様に言いました。
「私が知る限り、エマ・スミスはこの世で最も悪質なウソつきだ、、、ジョセフが死ぬ6か月前に彼はエマを呼んで悔い改める様に言った。さもないと、神の裁きが下ると。エマはジョセフに毒を盛ろうとしたのだ。ジョセフはエマがこの世で最も悪い女、地獄の子だ、と言った。僕はエマが毒を入れたコーヒーを飲んだが、吐き出して命は助かった、とジョセフは言った。ジョセフはエマに、非常に厳しい態度で話したが、エマは一言も言い返さなかった。私の言っていることは真実だ。2度もエマは夫を毒殺しようとした。」
 ( 6-8 Oct 1866, 36th Semi-Annual Conference, Bowery, G. S. L. City. [Deseret News Weekly 15:364, 10/10/66, p 4-5 and 15:372, 10/17/66, p 4-5; MS 28:764, 774]) 

オリバー・カウドリーは、ジョセフが始めた「カートランド安全協会」という銀行に融資し、銀行がつぶれた時、窮地に立たされました。その後、オリバーは自分の財産を教会に奉献するのをやめ、自分の事業を始めました。彼には6人子供が生まれましたが、5人が子供の時に死んでしまったのです。5人の子供を葬るってどれだけ辛いか、私は想像もつきません。たった一人残った娘を守るためには、無責任なジョセフに自分の残りの財産を預けるより、自分で働いたほうが娘が生き延びるチャンスが高いと思ったのかもしれません。
ジョセフは「銀行を建てよという主の声を聴いた」と言って多くの信者から融資を募りました。しかし、銀行は破綻し、200人の信者が全財産を失いました。オリバーは、教会指導者たちが基金の管理を誤ったとして彼らを訴えました。
教会公式サイトhttps://www.churchofjesuschrist.org/study/history/topics/oliver-cowdery?lang=jpn参照
 
オリバーのしたことは、悪いことでしょうか?
ジョセフのしたことのほうが、詐欺罪に当たるのではないでしょうか?イエス・キリストの名を使って「必ずもうかる」と言って融資を募ったのに、1年もしないうちに倒産。そりゃ、財産をこれ以上ジョセフ・スミスに捧げようとは思わないと決めたのは賢いことだと思います。お金がなければ、一体どうやって家族を養っていけばよいのでしょう?医療が進んでいないこの時代、栄養失調になる子供たちは疫病で次々と死んでいきました。ジョセフのしたことは、ただの倒産ではなかった。多くの子供たちを死に追いやったかもしれないのです。

オリバーは、ジョセフの起こした女性問題と借金問題に悩まされた、被害者だったのです。
教会は、上のサイトの中で「オリバーはジョセフ・スミスが不貞の罪を犯しているといううわさを広めた」と主張していますが、ファニーとジョセフがエマに内緒で肉体関係を持ったというのは、誰がどう見ても不貞ですよね?
ジョセフがどんなひどいことをしても、神が命じたことで、彼は悪くない、とモルモン教会は教えるのです。

私は、オリバーの破門は正しい決断ではなかったと思います。彼の苦悩を考えもしようとせず、一方的に彼を悪者扱いし、ジョセフには罪がない、と結論を下した高騰評議員会のメンバーたちは、思いやりのない人たちでした。神に召された人たちとは思えません。

オリバー・カウドリーを始め、多くの信者たちがジョセフに反対して破門されました。

 教会は、ジョセフはいつも悪くない、逆らった者が悪いんだ、と言って破門された人たちをウソつき呼ばわりします。私も、教会で、破門された人たちの言うことは信用ならない、と教わりました。しかし、真実はそうではなかった。
是非、この事実を少しでも多くの人に知ってほしいです。