何と、あの旅行業界のガリバー企業であるJTBが中小企業になるのだと。

JTBは現在の資本金23億4000万円から1億円に減資するとありました。

税制上、中小企業の恩典を受ける条件が資本金1億円以下であることによります。

 

以前、シャープが業績悪化で台湾企業の傘下に入り経営再建する際に

資本金を1億円に減資するとの方針が出されたことがありましたが、

さすがに上場企業でそれはないでしょうと、取りやめになったことがありました。

 

今回のJTBはガリバーとは言え、未公開企業である点に違いはあります。

さらに、今回のコロナ禍で旅行業界へのインパクトは甚大であるだけに

キャシュアウトを減らすためには可能な限りの策をとる必要があると言えます。

 

減資するといっても資本金の減少額が資本剰余金に振り替えられるだけです。

その後、欠損てん補に充てられるのでしょうが、「純資産の部」内部での振替だけなので

実質的には何も変わっていません。

 

しかしながら、形式上とはいえ中小企業であることで税制上の扱いが異なります。

 

中小企業税制で大きな主なメリットは、まずは税率の差(23.2%⇒15%)にあります。

また、過年度の赤字額(欠損金)の繰越控除の差(50%控除⇒100%控除)もあります。

さらには、赤字会社でも適用される事業税の外形標準課税が適用対象外になる点は大きいです。

 

大企業が形式的な中小企業となることには直感的に違和感はありますが、

企業存続のためにはそんな体面は二の次、三の次とするぐらい

危機的な状況だとの判断からなのでしょう。

 

未公開企業の場合、オーナー企業であることも多いだけに

トップの危機感は相当なものだと思われます。

そして、いざとなった時には思い切った策が取れることが強みでもあります。

 

コロナ影響が一日も早く収束、終息することを祈るのみです。