今日は、ちょっと思っていることなど。
今更言うまでもなく多肉植物の大部分は、我が国とは気候が大きく異なる場所に自生している。したがって、日本の庭先に放置しておいてもマトモに育つものは多くない。雨が当たらないようにしたり熱帯夜の影響を心配したり、場合によっては冬場の加温が必要にもなる(こうなるとほとんど熱帯植物だ)。その上、種類(科や属)が多岐にわたるおびただしい植物群が「多肉質である」という共通点で一ジャンルになっているだけであって、性質や栽培上の注意点は、同じ属ですら簡単にくくれるものではない。そういうことを考えると、多肉栽培は実に途方もない分野である。私などはこの年になってもまだまだ勉強不足なので、いくら専門書を読み込んでも未だに扱い方が分からないグループが数多くある始末だ。だからネットであれこれ調べてもいるのだが、あまりメジャーな種類でない限り情報自体がほとんど見当たらない。それでもなんとかと海外サイトを当たってもいるが、内容的には大したことが書いていなかったりするし、そもそも(当たり前のことだが)我が国とは気候が異なる場所での栽培方法だったりするから、あまり当てにならないことが多い。そんなわけで、まずは自生地の様子を調べてみることにしている。もちろん、それで全てがスッキリするわけではないのだが、ちょっとした栽培上の指針は得られることがある。今できるのは、せいぜいそんなところだ。そういう意味では、まだまだあちこちに高い壁がそびえている。
私は普段、あまり本屋に行くことはないのだが、時々立ち寄った時に園芸書のコーナーを覗いてみることがある。すると、最近またちょっとしたブームなのか、多肉植物の本がいくつかあったりする。で、手にとってパラパラと見てみるのだが、それらの多くは「いかにしてかわいいインテリアとして楽しむか」ということに主眼が置かれていて、性質が異なるものを強引に寄せ植えにするなどは朝飯前、ガラスのテラリウムに閉じ込めてみたり、ユニークな鉢を使っていかにオシャレに植え込むか、等々。あくまでもインテリア扱いで、時々は日に当ててやれだの、できれば明るい窓際に置いた方がいい、みたいなアドバイスがオマケ程度に添えられている。そのあとに多肉植物の紹介ページがあると思ったら、これまたよくある「単なるカタログ」である。葉先が赤いだの頂面が透き通っているのが魅力的だのといった特徴の説明に終始していて、栽培の手がかりといったら、せいぜい「日光」「水やり」「耐寒性」などがそれぞれ☆いくつとかで表示されているに過ぎない(これらの他に「栽培難易度」が☆いくつになっていることもあるが、一体これを見て次にどうしろというのか…)。そして、あとはやや詳しげな育て方の章を設けて「多肉植物には夏型種と冬型種があります(それぞれの管理方法を守れば大丈夫です)」という、例の困った解説(苦笑)が繰り広げられている始末。これでオシャレに(苦笑)メセンが育てられたら奇跡である。いやいや、セダムやエケベリアでさえ、徒長してメチャクチャなことになるだろう。多分これらの本は、マトモにじっくりと多肉植物を育てた経験などない、インテリアデザイナー的な人物が軽い気持ちで書いているものが大半なのだろう。実質的には多肉植物の「飾り方」と「カタログ」、そして、ほとんど役に立たない栽培指南。要するに、ダメになるまで鑑賞できればいい消耗品ということか…。こんな本があれこれ出回っている状態では、せっかくの初心者の方々も泥沼にはまり込んで多肉界から去ってしまうことだろう。しかし、だからといって全ての多肉植物の栽培法を細かく解説するような本を作ったら、それはそれでかなり分厚いものになってしまうわけで、初心者が手に取ってくれるはずもない。ジレンマだ。一方、ネット上の栽培指南も玉石混淆で、なかなか真実(と思われるもの)にはたどり着けない。やはり結局は、個人個人が試行錯誤しながら実践していくしかないのか。
ブログ開始のあたりでも書いたが、私ももう、いい年のおっさんだ。ディンテランタスはもちろん、プセウドリトスだのアズテキウムの花籠だのケイリドの翔鳳だのといったとんでもない種類にまで手を広げまくっていた若い頃ほどの情熱もエネルギーも余裕もない(そういえば一時期、無謀にもウェルウィッチアまで育てていた(←黒歴史))。それに、岩石栽培という一種の栽培実験まで抱え込んでいる。もはや、リトープスや魔玉とある程度地続きになっていることが見えてきたディンテランタス以外には、栽培困難種のあれこれに手を広げる時間は残されていないだろう。あとは、しっかり育てられそうなものをつまみ食いしながら(笑)地味に進んでいき、頂上が見えてきたらディンテランタスに挑戦する。このあたりが当ブログの行き着く先であり限界なのかな、と考えている。だが、日照条件の問題もあるし、ディンテランタス全6種はそもそも入手からして困難なので、長期栽培のノウハウが見えてきたとしてもコンプリート(←なんだか食玩やガシャポンみたいだな)することさえ難しい。そして、それで「結局ダメでした」となったら、「やっぱり壁は破れませんでした」と言ってブログをやめる潮時なのだろう。
今日は天気も悪いせいか、現状や先々のことをあれこれ考えてしまう。まだ先のことではあるが、私がいよいよとなっても、そんなものに興味はない我が子たちは多肉を満足に育てられまい(しかもほとんどが岩石鉢だし)。このことに関しては、母方の伯父のことを時々思い出す。好事家で、かつてはすさまじい数の盆栽を所有していたのだが、高齢になって管理しきれなくなり、次々と手放したり処分(要するに意図的に枯らしてしまうのだ。盆栽界のことなので、ここで是非をとやかく言うつもりはない)したりしていった。私だって、苦労してあれこれやっても受け継ぐ者はいない。それは分かっている。でも続けている。この先、どこに流れ着くのか岩石翁…。
以上、思っていることというか無駄話を延々と書いてしまった。今日はおっさんの戯れ言ということで、ご容赦願いたい。