
銀月の仔たち
銀月の脇芽がだいぶギッシリしてきた。親株が成長するための栄養分を奪ってしまっているかのような勢いである。元気で結構なのだが、この鉢でこの状態ではさすがにそろそろ無理がありそうだ。なので植え替えをしたいところなのだが、実はここで、ある重大な疑念が首をもたげてきた。
この銀月、購入時(今年3月)はこんな感じ↓だったのだが、

6月に脇芽が芽吹いてきて↓

9月にはこんなにまで↓なった。

以上の経過を踏まえた上で、皆さんにちょっと考えていただきたい。ご存じのように銀月は、一般に「冬型植物」であるとされている。夏は暑いから成長を止め、涼しくなってから育つのだ、と。しかしながらはたして、夏に成長を止めてしまうはずの植物が、6月に芽吹き始めて9月にここまでの状態に達するものだろうか?(疑) しかも植物体がここまで真っ白にコーティングされているということは、当ブログの基本理念に基づいて考えれば、強烈な日差しの下でこそマトモに生育する植物であることを意味してはいないか? 思えば、恥ずかしながら私は銀月も数多く手がけ、ことごとく枯らしてきた。冬型種で夏の暑さに特に弱いというからせっせと遮光や断水をしたのに、なぜか次々に萎れていった。セネキオは極端な水切れはダメらしいと分かってからは遮光下での微量灌水もしてみたのだが、それでも衰弱していった。なので今回の導入に当たっては腹をくくり、真夏でも普通に灌水(ザブザブと頭上灌水(※ただし夕方や夜に)した日も多々あった)して、白い植物なのだからセオリー通りに直射光下で…要するにリトープスなどと同じような栽培方法に切り替えてみた。その結果がこれなのである。暑さ対策としては二重鉢にしてある程度であり、初夏の頃はまだメセン置き場(水上栽培システム導入済)への移動すらしていなかったのだが、このように子吹きして元気に育っていて、萎れる気配は微塵もない。
気になってきたので、例によって自生地(と推定される)周辺の気候パターンを入手してみたところ、こんな感じであった。

これは銀月の自生地そのものの気候と同一ではないだろうが、ここからはある傾向が読み取れる。場所柄、年間を通じて降水量はとんでもなく少ないわけだが、それでも「温暖期に降水量が多めになる」のである。場所が南半球なのでグラフを半分ずらしてみれば、これはまさにうちの銀月が芽吹いて育った季節とかぶっているではないか。そして、補足情報としては、このあたりでは霧の発生が多いともいう。そこへ持ってきてあのフェルト状の(霧がくっつきやすそうな)白い表皮である。もしかしたら銀月は、過度な根の乾燥に気をつける以外にも、シリンジをしてやることがプラスに働くのではないだろうか。私は期せずして夏場に平気で頭上灌水しまくっていたので、ある意味それがシリンジ代わりになっていた可能性があるかもしれないが(笑)。
以上から導いた(例によって)勝手な仮説ではあるが、次のような指摘をさせていただきたい。①銀月は、定説に反して冬型植物ではない可能性が極めて高い。②なので、リトープスと同様に夏季休眠的措置(遮光や断水)は悪影響をもたらす可能性がある。③特に日光に関しては、絶対に遮光すべき種類の植物ではないと思う。④極端な高温に弱いという面は確かにあるだろうが、失敗している人の多くは(遮光・断水の上)通風不十分な環境で蒸らすことでダメにしているような気がする。⑤頭上灌水やシリンジを避け、腫れ物を扱うように育てるのは逆効果かもしれない。
以上である。今後しばらく銀月は、メセンたちと一緒に育ててみることにする。それで上記の仮説の正否がハッキリすることだろう。ちなみに、鉢が手狭な件は放っておくことにした。冬型種でないとすれば今の時期に植え替えるのはいかがなものかとも思うし、元々二重鉢になっているから、伸びすぎた根は外側の砂部分に伸びる余地がある(そうなった前例もある)。植え替えは春に延期する。