オートバイ乗りには皆それぞれの秋がある

 

ちがうかな?

 

もちろん冬にだって乗ろうと思えばオートバイに乗れるけど

 

そのほかの季節みたいに行きたいところへいつでも行ける訳じゃない

 

だから秋のオートバイ乗りはいつも迫る季節に追われている

 

冬を前にせっせとあっちへこっちへ

 

オートバイを走らせる

 

そんなボクにとっての秋はやはり少し感傷的だ

 

日々強まる寒さを感じながら

 

鮮やかに色付き、やがて枯れ落ちていく木々の姿を記憶に刻み

 

この一年の「走り」を噛みしめる季節だ

 

そしてなんと云っても一番の楽しみは

 

路面の凍結や積雪で通行が困難になる前

 

そのギリギリを攻めて山へ入ること

 

そのギリギリの秋を心に刻むこと

 

大谷君も若手へのアドバイスで口にする

 

「どれぐらいギリギリを攻められるかっていうのが大事なのかなとは思います」

 

KAT-TUNがかつてそのデビュー曲で伝えた

 

「ギリギリでいつも生きていたいから……リアルを手に入れろ!」

 

SPEEDはもっと突っ込めと挑発する

 

「痛いこととか怖がらないで、もっと奥まで行こうよ」

 

ちょっと違うか?まあ、そういうことだ

 

……知らんけど

 

 

個人的なチキンレースだ

 

もちろん山へ入れるかどうかなんて

 

このご時世いくらでもインターネットで情報を得ることができる

 

凍結情報を見たいなら路面凍結予報 | お天気ナビゲータ

 

なんてサイトもあるし

 

気象庁のサイトだけでも予想なら案外簡単にできるかもしれない

 

だからチキンレースとまでもいかないのだろう

 

いや、だから敢えてボクは(ネットは)見ない

 

天気予報くらいは見るけどネットの情報はこの際、邪道だ

 

あれに頼っていると案外簡単にその「ギリギリ」を演出できてしまう

 

もちろん年末の宗谷岬に集まるライダーを知っているから

 

客観的に「ギリギリ」とはあのレベルだと十分わかっているけど

 

ボクのいうギリギリはあくまで主観的な(生ぬるい)ギリギリだ

 

だから絶対値は相当低い(自覚あり)

 

けれど老体に鞭を打ってでもまだまだギリギリの境界を広げていこうとする

 

「未熟さ」と「人間臭さ」を自分自身に感じたいがためなのだ(カッコイー)

 

毎年そのつもりでチャレンジしている(きっぱり)

 

けど満足できたのは今までに正直2回くらいかな

 

去年なんかまだ紅葉の盛りで全く拍子抜けだった

 

とは云うもののマジで積雪してしまうとニッチモ&サッチモ

 

否、ニッチもサッチもいかなくなるし(漢字だと、二進も三進も、と書くらしい)

 

でもね

 

矛盾するようだけど実際はそう簡単でもないとは云っておきたい

 

道路の状況と云うものはピンポイントで変わるものだし

 

たまたま山から水が流れ出している場所だってある

 

そこにリーンした状態で乗ればタイヤは滑るということだ

 

凍結の滑り方は「すべる」なんて悠長なもんじゃない

 

「すべる」の「す」と「る」の間は無いに等しい

 

40km/hも出ていれば記憶にも残らない程の瞬間で路面に打ち付けられている

 

たまに砂や落ち葉でズッと滑ることがあってヒャッとするけど

 

あれは「ヒャッ」としたときにはもうグリップしてる

 

凍結路はそれがないままガチャンだ

 

オートバイが直立していれば

 

タイヤは案外グリップしてくれるのでそこそこ走れるが

 

逆に足を出すとその足がズルッといってこけるね

 

ブラックアイスバーンなんかは見分けがつかなくて最悪だ

 

とにかくこの季節の路面状況には注意がいる

 

いやだから、なんでそこまでして、とも思うけど

 

でも道路の凍結を気に掛けながら

 

凍るような冷たい空気を突っ切って

 

枯れた山の中を走る気持ち良さはなぜか癖になるのだよ

 

 

12月に入ってすぐだ

 

その週の中ごろから強い寒気が今季初めて太平洋側まで流れ込み

 

日本海側や内陸部だけでなく太平洋側の平地でも積雪の恐れがあると

 

ニュースでも警戒を呼び掛けていた

 

今年は11月中にきつい冷え込みがなく日中も穏やかな日が続いた

 

そのせいでいつもの年より気持ちがのんびりしているみたいだった

 

だから12月の声を聞いてもあまり冬を切実に考えていなかったな

 

例のギリギリを攻めにいくのは

 

大抵、奥琵琶湖か飛騨のせせらぎ街道と決まっているが

 

さすがに12月になると飛騨は高山あたりでもかなり怪しくなるし

 

奥琵琶湖のパークウェイは12月早々に冬季閉鎖になるのだ

 

さあどっちに行くべきかな?

 

気付けば短い周期で前線が列島を通過し

 

徐々に冷え込みが強くなってきていた

 

「この日しかない」と決めたその朝

 

実はそれほど寒くない日だった

 

一応冬のフル装備で準備し通勤ラッシュの東名に乗った

 

今日の相棒はクロ介(BMW エアヘッド 1000cc)

 

クロ介の完璧で完全なフロントカウルに潜り込んで高速を駆け抜ける

 

全然寒くない(あれ?)

 

当日の天候を見て決めようと思っていたから行き先がまだ決まってない

 

朝の予報ではどっちも同じような感じの天気だった

 

東名に乗った時点でもまだ飛騨か?奥琵琶湖か?決められていなかった

 

すぐに達する豊田JCTまでには決断しなくては……

 

飛騨なら分岐して東海環状道へ

 

奥琵琶湖ならこのまま東名だ

 

いやー、実にギリギリ、いいねー

 

矢作川の長い橋を渡りながら開けた視界を眺めやる

 

そうね、北の方に青空が見えるよ

 

なら、飛騨!決まり

 

スピードを落とさずランプウェイをコーナリングしていく86を追って

 

東海環状道へ分岐した

 

いつもなら見えそうな恵那山も御岳山も今日は姿が見えない

 

明るいが雲がやや多くて空気も霞んでいた

 

だからその分暖かいのだろう

 

 

東海環状道 富加関ICが我慢の限界

 

高速、おもんないねん!

 

岐阜県県道58号から64号へつないで金山へ向かう

 

飛騨へ行くときは大抵このルートだ

 

狭い谷筋の県道なので朝の空気はひんやりしていた

 

山の北側は一日中日当たりが悪いせいか路面がかなり怪しいが

 

周囲を見渡しても霜が降りている風でもなさそうなので

 

今日は凍結までは心配ないだろう

 

ただけっこう濡れているので橋の継ぎ目に気を使う

 

この辺りでは庭先の楓がまだ葉を落とさず枝に残っていた

 

途中の北条峠は頂上部でかなりウェット

 

けれどその先の県道64号線は全体的に開けていて明るい

 

川に沿ったワインディングが楽しいルートだ

 

 

金山でいったん国道に合流するがすぐに県道86号線へ折れる

 

しばらくの間、馬瀬川の明るい右岸を走るが

 

馬瀬第2ダムの切りから濃飛道路のきれいなトンネルをくぐり

 

国道256号線に入った

 

今度は和良川に沿って走る

 

南側に斜面が迫っている山かげは

 

冬になると一日中陽を遮られているところが多い

 

そのため日中でも空気が淀んだように冷たく

 

すぐ横の和良川からの水蒸気が路面を湿らせる

 

こういうところは乾きが悪いので冷え込むと凍結しやすいのだ

 

でも全体的に見れば今日は気温がかなり高い

 

途中に何度も出会った温度表示板は軒並み8℃くらいはあった

 

このまま行くと郡上に抜けるがその中ほど

 

和良川が開いた平地に和良の山里がある

 

江戸時代には幕府の直轄領で旗本の天領陣屋も残り

 

平安時代から人が住み着いていた記録もあるそうだ

 

とても雰囲気のいいところで好きな場所のひとつ

 

道の駅で休憩

 

なぜかここ、定休日にしか来たことがない

 

 

ここから「こもれびロード」(県道329号美並和良明宝線)に入る

 

南北に走るルートは概して日当たりが良く

 

路面もドライで安心して走れる道が多いものだ

 

明宝に近付くと峠へ向けて山を登るので

 

南も北もなくなるが標高の割にここは不安がない

 

くねくねっと道がワインディングしていて大好きだ

 

 

相谷トンネルで一気に明宝側へ抜ける

 

このトンネル西側にある川に山が沿って湾曲しているせいか

 

ずーっとトンネルもカーブしている

 

山の中のトンネルに有りがちな路面の湿潤もなく快適

 

このルートは相当重要なのか十分に整備されている

 

 

国道472号線へ出てせせらぎ街道を目指す

 

あたりの山は見事な枯れっぷりだ

 

おかげで交通量がほぼない

 

峠を貫く坂本トンネルがかつて有料だったなんて知らないか?

 

むかしはそこら中に有料のトンネルとか有料の橋があったのさ

 

それを旧道で回避して走るのが昔のオートバイ乗りだったんだぜ

 

坂本トンネルは逆にいつも濡れている

 

そして寒い

 

ここ嫌いだ

 

でもこのトンネルから先のワインディングはすごく好き

 

この日はちょっとウェットだったけどね

 

 

道の駅パスカル清見で買い物する

 

「パスカル」ってボクの好きなパスカルさんじゃなくて

 

造語らしいね

 

道の駅の名前って造語が多いよね

 

同じく岐阜にある「きりら坂下」なんてバーイトサイド

 

だったような、違うかな

 

パスカルは田園音楽のパストラルとカルチャーをイメージしてるみたい

 

なんでもいいけどね

 

今日は駐車場にオートバイ「0」

 

ワクワクするねー

 

 

県道73号線に変わっていよいよ峠に近付く

 

標高は1000mを越えてさすがに冷えてきた

 

路面は全面ハーフウェットからびっしょりウェット

 

過信はしてないけど凍結は大丈夫そうだ

 

86×2台,S2000、インプレッサのグループがアホみたいに飛ばす

 

岐阜ナンバーだったから地元かな

 

ビビってるのはロートルライダーだけか

 

西ウレ峠 1113m

 

なぜか、ぼんやり暖かい

 

気温計はなんと8℃

 

こりゃ今年もまたギリギリとは云えんな

 

 

とは云えせせらぎ街道はすでに丸裸

 

日影の空気はもう真冬

 

繁る葉っぱで見えずらかった渓流がやさしく音を立てて流れていく

 

何とか青空だ

 

でも「ギリギリ」ではなかったな

 

今年もよく走った

 

去年に引き続き10000kmを越えそうだ

 

クロ介で北海道を走られたし

 

秋には思う存分クネクネできた

 

さて来年はどこに行こうかな

 

 

ギリギリ感に乏しいと思って帰ってきたが

 

翌日から飛騨は雪に見舞われた

 

峠は通行止め

 

結果的には雪の季節のギリギリは攻められたかも

 

あんまり寒くなくてイマイチだったけどね

 

 

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