季節の進みというものはもうアナログそのものだ

 

熱い湯と冷たい水を混ぜるとき

 

最初は相当に斑ができていて

 

熱い、冷たいが部分部分に存在していても

 

撹拌を続け時間をおけばちょうどよい塩梅になっているように

 

夏の間長く居座った太平洋の暖気が勢力を弱めると

 

大陸の冷たい空気が一気に南下してくる

 

そうすると昨日までの陽気がウソのような寒さになり

 

雨が上がって風が吹けばそれは一層強くなる

 

けれどそのうちにまた移動性の高気圧に覆われれば

 

なんとものんびりとした日差しに包まれるのだ

 

これを繰り返すうちに本格的な秋が訪れ

 

北の国からは雪の便りも聞こえてくる頃となる

 

 

緯度を上げるのと同じように

 

高度を上げることでも季節の進みはグッと早くなる

 

昨日近所をぐるりと散歩に出たときは

 

半袖の出で立ちだったが

 

今日は2000mあたりまで上がろうと考えている

 

翌朝オートバイで出掛ける段になってしっかりと冬の装いとなった

 

天気予報ではこの秋一番の冷え込みで11月上旬並みだと話す

 

山は相当に冷えただろう

 

薄いダウンのベストは着込んだが

 

さすがにまだねー、とダウンのジャケットはバッグに押し込んだが

 

これは大袈裟ではなく結局すぐに着込むことになったのだ

 

 

高速道路はあまり好きじゃないが

 

平日の朝の市街地を走るくらいなら高速の方がマシなので

 

とりあえず高速に乗った

 

日本列島の南岸にほど近く秋雨前線が停滞しているせいで

 

イマイチすっきりとは晴れていない

 

とは云え秋の雲はおよそ高度が高いものだ

 

たとえ3000m級の山でも雲底には届かない

 

はたして豊田ジャンクションから遠く御嶽の峰々がはっきりと見えた

 

愛岐トンネルを越えると薄日が差した

 

内陸に行くほど(沿岸部から離れるほど)雲は減るようだ

 

今日はトンネルが暖かいね

 

 

今日の相棒はSR400

 

SRの高速道路との相性は経験のない人には意外だろうが案外良い

 

トップギアで4000rpmがベストだけど

 

ここからギアダウンなしに追い越し加速に入れる

 

振動も今ではことさら思うこともなく

 

むしろ大きなピストンがクランクを捻り上げるようなトルク感が気持ちいい

 

直進性も問題なく、かと云って進路変更もコーナリングも造作ない

 

勾配もそれなりにあってカーブも続く中央道でも

 

トップギアのままスロットル操作だけでのんびりと巡行する

 

ライトの上に小ぶりなウィンドシールドを付けているが

 

こいつがなんともいい仕事をしてくれる

 

あんなに小さいのに体に当たる風はほぼ遮って弱めてくれるのだ

 

 

中央道を中津川で下へ降りる

 

国道19号=現代の木曽街道は木曽川の激しい流れとは対照的に

 

車列がゆったりと流れている

 

時折登坂車線もあるけどほぼ延々と1車線だ

 

トラックやトレーラーも多いが信号が少ないのでまあそこそこ走る

 

SRにとってはいちばん気持ちの良い速度レンジなので全く不満はない

 

上松まで約1時間

 

連続するトンネルの向こうで左に折れて元橋で木曽川を渡った

 

 

このひとつ先、木曽福島から開田へ入る木曽大橋が完成し

 

地蔵峠にバイパスが整備されるまで

 

この元橋を渡って開田へ向かっていた

 

もう30年も前のことか

 

県道20号線は昔ながらの地形に沿う作りでくねくねだが

 

オートバイで走るにはこの方がむしろおもしろいし

 

SR400もそれにピッタリなオートバイだ

 

三岳の道の駅で小休止する

 

空は雲に覆われるがやはり山並みを隠すことはない

 

印象的な朱色の常盤橋を越え

 

三岳の町の追分を右に取ればもう御嶽の山並みは近い

 

その追分を左に折れると王滝を経て御岳スカイラインへと続くが

 

今日は久しぶりに霊峰ラインを走る

 

すぐに開田へ向かう20号を離れて(というか道なり)

 

そのまま霊峰ラインへ入ると御嶽の峰々が美しく眼前に聳えた

 

この山は信仰の山だ

 

御嶽講の人たちの魂の拠り所なのだ

 

山全体が礼拝場所なのでボクのような部外者でも礼を尽くすべき場所

 

印象的なのは宗教施設や宿泊所が並ぶ合間合間に並ぶ無数の石碑群だ

 

この石碑は霊神碑と云って墓というより霊を祭るシンボルか

 

霊神碑は山全体に約3万基もあるといわれる

 

御嶽講の人たちは死後の魂が御嶽に還るよう願ってこの石碑を建てるのだそうだ

 

写真を撮るのはちょっと憚られるかなと思って撮らなかったけど

 

この霊的な風景は一見の価値がある日本文化だと思う

 

クネクネと御嶽を登り詰めるこの細い道に人々の願いがこもる

 

そして時折開ける視界には神々しい御嶽の峰だ

 

 

むかしの哲学者の命題にふれると

 

そこには常に「神」の存在があることを思わせる

 

自然科学を常識ととらえる現代人にはいささかの古臭さと胡散臭さを感じさせるが

 

実を云うと旧約聖書に毒された、否、染まった西欧人であっても

 

さすがに哲学者ともなるとその「神」の概念は多様化していた

 

「神即自然(神すなわち自然)」のスピノザは汎神論と云われるが

 

単なる自然信仰とは真逆の発想で

 

神がこの宇宙のすべてにその力を発揮している

 

あらゆる属性があらゆる様態で現出しているという意味だ

 

つまり神とは宇宙の法則(物理法則のような)なのだと思わせるような言い分なのだ

 

それなら現代人にも何となく「わかってるじゃん」と感じさせてくれるものがあると思う

 

八百万の神を信仰してきた日本人も

 

仏の智慧を知っていた仏教も

 

物理法則で成り立つこの世界とその精巧で緻密な宇宙を見ていたのかと感じさせるものはある

 

京都の東寺講堂に広がる立体曼荼羅を見るとき

 

当時の人々がこの宇宙をあのように感じていたと思うと

 

神こそ自然という哲学なのだと確信する

 

それと同じくこの御嶽に広がる世界は

 

形而上学としての哲学的世界を感じる(決して宗教的ではない)

 

 

なんて語っているけど

 

ほんとうは「クマ」がこわい

 

いくら、出るわけないじゃん、と思っても

 

それを許さないような昨今のクマ事情だ

 

もう猟友会レベルでなく国防レベルだ

 

国民の安全を守るべく自衛隊に部隊展開してもらいたい

 

(と書いたとたんに秋田県知事は災害派遣を自衛隊に要請)

 

玄関を出たらクマに襲われるなんて北朝鮮のミサイル威嚇より怖い

 

停まるときはなるべく周囲が開けたところを選んで

 

エンジンを切る前にホーンを鳴らして存在を知らしめる

 

休憩中も時折辺りを見渡して警戒を怠らないことが大切だよ(大袈裟)

 

 

ロープウエイの駅を過ぎてブルーラインで麓へ下る

 

王滝から入るスカイラインに比べると中央アルプス方面の眺望はあまりない

 

霊峰ラインが信仰者のルートだとすれば

 

ブルーラインはロープウエイ目当ての観光のルートだ

 

バスも走るのでそこそこの幅員がある

 

あと2週間もすれば紅葉も進むんだろうが

 

ボクが行ったときはまだぼんやりと黄味掛かっているくらいだった

 

気温も下とさほど変わらず高速を飛ばしてた時の方が寒かったくらいだ

 

でも県道20号へ出て日和田へ向かうとにわかに冷たい風が強まった

 

長峰峠はかなり寒くて

 

高根辺りの温度計には「9℃」っていうのもあった

 

さすがに寒くて万が一のネックウォーマーまで使ったよ

 

 

朝日の道の駅で昼食をとった後

 

そのすぐ先にある農道みたいなやつに入った

 

表示板もないし地図にも記載がないんだけど

 

向こう側の取り付きにある青看板(案内標識)には「飛騨農園街道」とある

 

2020年版の道路地図には未舗装林道と記載があったけど

 

実際は完全に対向2車線でほとんど消えてるけどセンターラインがある

 

峠部のアップダウンがきついくらいで滅茶苦茶快走路なのよ

 

「農園街道」と云うけど農園もなにも深い森の中ばかりで

 

ほとんど何もなかったね

 

牛乳の工場と飛騨牛の農場があったかな

 

全線で13kmくらいあるけど対向車には1台も合わなかった

 

高山をパスするにはありがたくて楽しいルートだ

 

そのまま41号線で南下し下呂から257号へ回る

 

のんびりしすぎてちょっと時間も遅くなったので

 

ルート選びも雑になる

 

19号へ出るところに栗きんとんの「川上屋」

 

ご機嫌取りにお土産だけ仕入れて家路を急ぐ

 

 

それにしても行きの高速からずーっとなんだか寒くて

 

走り出すたびにしばらくブルブルと震えたりしていた

 

おまけにそんなに距離も走ってないのに全身の関節がギシギシとして

 

こりゃ風邪引いたかな、と思ったら

 

そのうち鼻が出て喉が痛み出した

 

家人には「トシだね」と云われたが

 

断じて「そんなことはない」と云い張る

 

今年の秋のおっさんであった

 

 

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