今年の北海道ツーリングにはクロ介で行った
いまさら説明不要かもしれないが
「クロ介」と云うのはボクの所有するオートバイで
真っ黒なネコやカラスのことではない
ドイツのBMWが1990年に製造したオートバイで
フレームには「made in W.GERMANY」と
歴史を感じさせる刻印がある
4年前にRS(BMW R100RS)への断ち難い思いから
たまたま出会った「R100トラッド」を購入したわけだが
その時もうひとつの思いとして
もう一度ロングウェイツーリングに出たいな、というものがあった
そしてそれはできれば北海道がいいなと
けれど購入してから実際に北海道へ連れていくまでに4年もかかってしまった
それは乗り手であるボク自身の問題と
クロ介のある事情によるものだったのだが
ではその全てがクリアできたのかと云えばそうでもない
結局最後は「エイ、ヤー!」的な勢いが必要なのだ
これも何度も書いてきたことだが
このクロ介はオートバイ屋の店先で20年以上店番させられていた機体で
走行距離こそ12000kmと少なかったのだけれど
動かしていなかったことによる劣化の状況が不明で
出てきたらその都度そこを潰していくという方法でしか
現実的に対処が出来ないモノだった
実際にいわゆる「定番」箇所からの劣化によるオイル漏れが順番に出た
前後のサスペンションのオイルシールやシフトレバーのシャフト
オイルプレッシャースイッチ、ニュートラルスイッチ
プッシュロッドチューブのシール等々
まあ実際これくらいで済んでいてメカ的な故障はいまのところ出てない
2、3年はかかるかなと当初考えていたので実際そのとおりだった
かと云っていつ走行が難しくなるようなトラブルが
起こってもおかしくないことにいまも変わりはなく
現に去年の年末ごろに電気系統のトラブルが出て焦った
オルタネーターのローターコイルが断線したことと
イグニッションコントローラーがパンクしたこと
どちらも出先が遠ければレッカーになるような故障だ
電気系は故障が突然出ることが多く走行不能になりやすい
正直このまま北海道へ連れて行って大丈夫なモノなのか
そんな不安はどこまで行っても払拭できないだろう
一方ボク自身の問題だ
それは加齢
そこまで老いているわけではないが
50代に入るころ明らかに反射神経が衰えていると自覚した
それは無意識に車間距離が伸びていることで気付いた
その時、このままオートバイに乗り続けることへの不安を感じたのだ
それで一度大型オートバイから離れることにした
もちろん鈍くなったと云っても長年鍛えてきた感覚は
オートバイ乗りでない人たちよりはレベルが上だという自負はある
けれど
この問題に対する解決方法は実に簡単だ
走行スピードを1割か2割落とせばよいのだ
そもそも法規にそったスピードで走るなら
どんなに老いていても正常なら(ボケていなければ)
反射神経の問題で事故を起こすことなどありえないだろう
だからクロ介に乗り始めた時から意識を変える努力をした
絶対に熱くならない
イライラしたり先へ先へと焦らない
法規を遵守する(当たり前か)
こんなくらいかな
スピードレンジを落とせたことで逆に運転が楽しくなったようにも感じている
けれど結果的に去年北海道へSR400で行ったのは
いちばんの理由はフェリーの航送運賃の問題だ
太平洋フェリーの運賃は
400ccと750ccそしてそれ以上という3段階の設定で
SR400とR100の運賃には9000円もの差がある
これはホテル1泊分に相当する金額
実際には往復なのでなかなか判断に迷う要素だった
しかし実際にSR400での北海道ツーリングを終えてみると
逆にクロ介で北海道を走りたいという思いがますます強くなったのだ
長い時間、長い距離を走ってもまったく問題なかった
雨や寒さへも対応できるメンタルも変わっていなかった
だから
予期せぬ故障を心配し過ぎるのはもう止めようと
どこまで整備を繰り返しても
壊れない時は壊れないし
壊れる時は壊れるのだ
(この云い回し実は千鳥の大悟のボケなんだけど、妙に納得してしまって以来気に入っている、でもホントなんでもそうだよ、分かる時は分かるし分からない時は分からない、起こる時は起こるし起こらない時は起こらない、全部それだ)
だから今年はクロ介で行くことにまったく迷いがなかった
そしてそれは間違っていなかったし、思いが叶ったという充実感に満たされた
クロ介で走る北海道の道は本当に最高だった
その理由はそりゃあもうたくさん有るけど
エンジンのトルク感とかストロークの長いサスペンションとか
フラットツインの低重心とかね
BMW空冷OHVボクサーのメリットを褒めることはいくらでもできる
でも本当の理由はクロ介が持つ「官能性能」だとしか云いようがない
いちばん嫌いな抽象的な表現で申し訳ないが
それは単に数値で表されるスペックではなく
作り手の哲学と確信をもって開発された性能とも云えるかもしれない
企業の利益という手段とは完全に別次元で
彼らがこの機械に込める存在理由(レゾンデトール)
そしてそれが「刺さる」人との間に生まれる価値を「官能性能」と呼ぶ
だからそれはむしろ乗り手側に委ねられる性能かもしれない
難しく書いたけど実際はもっとシンプルだ
走らせているとうっとりする、とか
気付けば唇の端に笑みが浮かんでいる、とかそんな感じ
クロ介はただただずっとずっとボクに刺さりまくってくるのだ
走りながら語り掛け、何度も会話を繰り返す
まさに「相棒」と呼べるオートバイだ
そんなクロ介くん
北海道3日目の朝
岩内から小樽をパスするために乗った高速道路を走行中にトラブルが起きた
視界の端に入っていたETCのインジケーターが点滅(起動チェック)していた
すぐにスタンバイの緑になったがおそらく瞬間的に電源が落ちたのだ
その時は「うん?」という感じだったが
間もなくもう一度ETCは再起動した
電圧計の針も一瞬引っかかったように降下しすぐに元に戻った
もうこうなると冷や汗もんだが
出口のETCゲートでなんの問題もなく
その日はそれ以降一度も同じ症状が出なかった
とりあえずETCカードの抜き差しとケーブルの取り回しを確認してみたが
まったく何も変わりはなかったので気にしないことにした
翌日、早朝宿を出て路地から国道へ出るときに減速したらストールした
エンジンがまだ冷えているのかなと思ったが
電圧計の針が起点に戻っていたような気がした
がすぐに再始動
でももう頭の中では「コイル」かな、交換したばかりの「イグナイター」かなと
悪いことばかりが浮かんでいた
電気系統のトラブルなら部品交換が必要になるがもちろん手持ちなどない
正直いまの状況でボクに対応できる感じはしなかった
救いは北海道に出発する直前に
ズットライドクラブの距離無制限ロードサービスに入ってきたこと
ZuttoRide Club(ずっとライド クラブ)| バイク盗難保険・ロードサービス
宗谷岬を後にして(よりによって日本の最北にいるわけね)
宗谷丘陵を駆け上る長い坂の途中でまたエンジンがストールした
クラッチを切ってそのままセルを回すと再始動
「これはもう認めなければいけない」レベルのトラブルだ
祈るような気持ちでとにかく走れるところまでは走ろうと
「クロ介、頼む」と何度も声をかける
ところがその後しばらく症状は出ない
そして忘れた頃にもう一回
国道の接続が悪い比布の町を高速道路でパスしようと
旭川紋別道に入った後だった
トンネルに向かう長い急坂を上っている時
エンジンがストールし電圧計が落ちた
今度はもうセルも回らない
と思った次の刹那電源が回復
路側帯に入りながらクラッチを切ってセルを回すと今度も再始動に成功した
その時はもうただただパニックだった
なぜなら目前のトンネルは対面通行で狭く長いトンネルだったからだ
層雲峡のコンビニで休憩しながら探ってみるがよく分からない
冷静にこれを書いている今ならなんとなくピンと来るけど
この先は北海道の中でもかなりやばいエリア
原生林を越えて士幌へ抜けなくてはいけない
ただ救いは何度止めても始動にてこずる様なことは一切なかったことか
結果的には然別湖を経由して士幌の町までたどり着くことが来た
が、宿に向かう前にオイルの補給をしておこうと道の駅に向かっていた時
今度も少し急な上り坂でエンジンが止まり
惰力も尽きてついに路肩に停止してしまった
メインスイッチを何度かグリグリし
キルスイッチもカリカリと何度か動かしているうちに電源が入った
エンジンも何事もなく始動(たすかった!)
道の駅からテックモーターサイクルに電話して気を紛らわせる
何となく想像していたとおりイグニッションスイッチかその配線
あとヒューズかその配線あたりの接続や捩れをチェックしてみたらと
アドバイスを頂いた
けどね
こういうのって不思議だけど「確信」をもって触ると当たるね
ビンゴ!だよ
イグニッションの4本ある端子の内ひとつがぐらぐらしてた
北海道って知ってるかもしれないけどものすごく道路が悪いのね
もうそこら中でオートバイがガタガタ揺すられまくる
多分それで緩んだんだろうね
端子をグイっと挿して応急的にテープを巻いておいた
今回の全走行距離は約2000km
燃費も随分良くて22km/ℓも走ってくれた
オイル消費はそれなりで2リットル持っていたけど
帰りのフェリーに乗る前までに1リットル強補充したかな
「とにかく1回はクロ介で北海道を」という思いだったけど
「北海道はやっぱクロ介」だなと今は考えている
来年もう一回行けるかな
行きたいねー











