知ってのとおり北海道は相当に広大な面積を持つ島だ

 

すぐ北にある樺太と比べてもひと回りは大きいし

 

アイルランド島とはほぼ同じ大きさで

 

世界20位と21位でランキングに並んでいる

 

何となく似た雰囲気のニュージーランド北島と比べても

 

それ程遜色のない面積なのだ

 

具体的に云うと83,424平方キロメートル

 

周囲を3つの大海に囲まれ

 

中心には雄大な大雪、日高山脈を張り上げる

 

北緯40度以上という緯度の高さも相まって

 

日本においては特別な雰囲気を醸し出している

 

 

北海道をオートバイで走っていて感じる気持ちの良さは

 

日本の他の地域ではけっして味わえないレベルのもので

 

その理由は

 

比べ物にならない規模の豊かな自然の存在が大きいのだろう

 

と先回書いた

 

それと少しかぶるけれど

 

ここが農業大国であることが

 

もうひとつの理由かもしれないと思うのだ

 

北海道の農地は現在114万haあり

 

その内訳として田んぼが22万ha、畑が42万ha

 

そして酪農地(牧草地)が50万haもある

 

つまり北海道の景色は一方で桁外れて牧歌的であるという訳だ

 

あんな寒いところに22万haも田んぼがある事に少し驚いてしまうのは

 

ボクのアタマが古いからなのだろう

 

それは米が夏の寒さに弱いというむかしの常識にまだ縛られているに過ぎない

 

けれど実際にコメ所として有名な新潟県の田んぼ面積は15万haというから

 

北海道にはその1.5倍もの田んぼがある事になる

 

以前見た新潟の田んぼの風景はそれはそれは印象的だった

 

見渡す限りの水田の中を新幹線と高速道路が一直線に伸びているのだ

 

「ああ、日本のコメはここで作られているんだな」

 

と妙に納得させられる景色だったが

 

なんのことはないそれより遥かに北海道の方が田んぼは広いのだ

 

 

収穫量でみても1位の新潟県(59万トン)についで全国2位の54万トン

 

云われてみれば「ゆめぴりか」「ななつぼし」「きらら397」など

 

北海道産の銘柄米はもう相当なじみ深い存在になっている

 

品種改良などの技術進歩なのか

 

はたまた昨今流行りの地球の温暖化なのか

 

日本人のコメ作に対する執念が垣間見えるような気がする

 

そもそも土地があるのだからコメ作りしたいというのは

 

農家から見れば当たり前のことでしかないのかもしれない

 

 

一方22万haの田んぼに対して42万haもある畑だ

 

じゃがいも、かぼちゃ、小豆、タマネギなど

 

全国シェアの高い作物が多くある

 

意外な作物としては

 

道外の人間には馴染みが薄い「甜菜(ビート)」がある

 

甜菜は国内では北海道だけで育てられる野菜で

 

5万haを越える作付面積があるのだ(ちなみに東京ドーム10,694個分)

 

テンサイは砂糖の原料で、北海道には大きな製糖工場もある

 

国内自給率の低い砂糖だけど国内産の8割を北海道で生産しているようだ

 

そして、やはり北海道と云えば「じゃがいも」だ

 

作付面積はテンサイと同規模の5万ha(収穫量全国シェア8割)

 

有名な小豆(全国シェア9割)は2万ha

 

全国シェア60%を越えるタマネギも1万5千haと

 

さすがの生産力だ

 

 

酪農は云うに及ばずだろう

 

2010年度から北海道産の生乳の国内シェアは50%を越え

 

いまも毎年そのシェアを伸ばし続けている現状だ

 

どこまでも広がる空と同じ規模で広がる緑の牧草地に

 

白い牛が点々と散らばる景色はまさに北海道を代表する風景ではないだろうか

 

 

そして忘れてはならないことは

 

これら見渡す限り広がるその畑や牧場が

 

明治以降ひとつずつ人の手によって切り開かれたということだ

 

無数に生える木々を1本ずつ切り倒し、根を掘り起こし

 

水を引き、柵を巡らし

 

厳しい冬をじっとやり過ごしてきた

 

そんな先人たちの想像を超えた辛苦を思う時

 

この北海道の景色はまた違った深みと重みを感じさせてくれる

 

 

こんなにも豊かな自然の中にあって

 

多くの場所で人の営みがちらちらと垣間見えるのだ

 

今は真っ平らに見える町もかつては深い森だったはずだ

 

強い意志とたゆまぬ努力がこの景色を形作っている

 

そういう目で改めて北海道を眺めてみると

 

偉そうなことばかり云う自分が

 

いままでこの社会のために何をしてきたのだろうかと

 

そんな自戒の念も湧いてくる

 

 

そしてそんな豊かな大地を生み出すために欠かせないのは

 

この広い大地を幾筋にも分かれて潤す川の存在だろう

 

それは北海道の中央に聳える大雪山の峰々に

 

たっぷりと蓄えられた大量の雪どけ水を源としている

 

その水は谷筋にジワリと染み出して

 

ひと雫、ひと雫と集めながら麓へ下るのだ

 

深い原生林を養い

 

平地へ向かい田畑を実らせ町を作らせる

 

日本の河川で100kmを越えるものは68本あるが

 

そのうち北海道の川は14本

 

どの川も想像を超えるスケールで

 

あらためて地図で確認して驚いてしまうようなレベルだ

 

 

例えば十勝から原生林へ分け入って三国峠を越えて進むと

 

大きなダム湖「大雪湖」を渡る

 

あのダム湖の水が層雲峡を経て旭川を辿りやがて空知の町々を潤しながら

 

札幌をかすめて日本海まで注いでいるのだ

 

これは鮭の遡上で有名な「石狩川」で延長268km

 

信濃川、利根川に次ぐ日本第3位の長さだ

 

層雲峡を穿つあの川が石狩川だと容易には結び付かない

 

単純な河川の長さだけでなく流域面積の広さで見ても

 

「石狩川」「十勝川」「天塩川」と3本の川がトップ10に入っている

 

去年滝川から芦別を抜けて十勝へ向かう折

 

たまたま石狩川の大きな支流である「空知川」をたどるルートを走ったが

 

山深い国道に沿って流れる空知川の豊かさにはかなり驚かされた

 

とても支流という規模ではないのだ

 

出来ればもう一度ゆっくり空知川をたどって走りたいな

 

と思っている程強い印象が残っている

 

 

足寄から池田へ向けて国道をたどると「利別川」の流れに沿う

 

利別川は十勝川の支流で池田で十勝川本流と合流している

 

池田の町で右折して行く国道を無視してそのまま直進すると道道882号線に入るが

 

西の十勝川と東の旧利別川に挟まれた広大な平地には延々と畑が続いている

 

おそらくは十勝川と利別川が何度も氾濫してできた沖積平野なのだろう

 

その痕跡なのか畑の中に妙な形の沼がいくつも散らばっているのが見える

 

さらに進んでいくと道道は豊頃の町へ出て十勝川を渡る

 

 

茂岩橋は1961年に竣工した古い橋だが

 

橋長が946mもある立派なトラス橋だ

 

水色のトラスが印象的だったので後で調べてみたら

 

はたして土木学会の土木遺産に指定されていた

 

なんでもあのカッコいいトラスが「変断面下路式ゲルバートトラス」という構造で

 

その構造の橋梁の中では最長ということだった

 

良く分からないが確かに土木建築のレガシー感は漂っている

 

橋から眺める十勝川はとても頼もしく穏やかな流れ

 

もう河口が近いのだ

 

時間があったので河口の集落「大津」へ行ってみた

 

ひっそりと静まり返った小さな漁村の集落を抜けると路地は高い堤防にぶつかった

 

脇にある細い小径を駆け上ると十勝川はまさにそこで海に注いでいた

 

 

十勝岳から集めた小さな雫が

 

こんなにも大きな流れとなって

 

いまボクの目の前で海に流れ込んでいる

 

太平洋から河口へ押し寄せる波は止めどなく

 

その砕ける音が断続的に響くだけで

 

川は静かに穏やかにその長い旅を終えていた

 

ふと喜納昌吉の「花」の歌詞が頭をよぎった

 

川は流れてどこどこ行くの……

 

人も流れてどこどこ行くの……

 

そこに花が咲いていると信じられるような風景だったよ

 

 

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